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2022年度兵庫医科大学医学部の数学過去問対策・分析

2022年度兵庫医科大学医学部の数学過去問対策・分析

京都医塾数学科です。

このページでは「兵庫医科大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“兵庫医科大学医学部”の受験を考えている方
・“兵庫医科大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方

にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より) 
形式:記述式
※第2問の(2)のみ「答えのみ」で解答。
制限時間:90分
配点: 150/500点

出題の傾向と特徴   

【出題内容と問題の難易度】

 第1問の小問集合の多くは標準的な問題で構成されています。しかし、第2問、第3問では難解なテーマからの出題もしばしば見られ、数学を得意とする受験生であっても得点することは至難な場合があります。

【頻出の出題単元】

 どの単元からも幅広く出題されますが、図形に関連した問題からの出題が多い傾向にあります。
また、煩雑な計算を含む微分法や積分法の問題も多く出題されるため、数学Ⅲを含めて対策が必要です。

【制限時間に対する問題量】

 第2問や第3問の難解な問題まで解き切ることを想定した場合、非常に厳しい時間設定となっています。そのため、手をつける問題を取捨選択し、効率的に得点する必要があります。場合によっては大問単位で「捨てる」という選択も考えなくてはなりません。

2022年度(最新の過去問)の分析

 さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問】(難易度:易) 

 第1問は小問集合です。途中式や考え方も書く必要があるため、ちょっとした計算であっても正しい形で解答を書くことができるかが問われます。
 (1) 基本的な対数の計算問題。底を揃える方針で進めましょう。
 (2) 条件付き確率の問題。公式通り計算するだけです。
 (3) メネラウスの定理から辺の比を求める問題。定理に当てはめるだけです。
 (4) 式の値の最大値を求める問題。直線 \(x+y=k \) が楕円の接線になる条件を見つけましょう。
 (5) \(19\) で割ると \(2\) 余り、\(21\) で割ると \(5\) 余る \(4\) 桁の自然数のうち、最小のものを求める問題。これも基本レベルの問題です。
 基礎~標準レベルの問題ばかりですので、素早く確実に解き切りたいところです。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 10割
他教科を得点源にしたい受験生… 10割

【第2問】(難易度:やや難) 

 (1) 実数 \(a, b\) に関する不等式 \(|a|+|b|≧|a-b|\) を証明せよ。また、等号が成立するのはどのようなときか。
 三角不等式 \(|x+y|≦|x|+|y|\) を証明し、\(x=a\), \(y=-b\) とおけば証明終了です。有名な不等式ですので、証明に取り組んだことがある受験生も多いでしょう。
 以下は、証明の一例です。
 \(-|x|≦x≦|x|\), \(-|y|≦y≦|y|\) より、\(-(|x|+|y|)≦x+y≦|x|+|y|\)…① 。
 さらに、①の辺々に \((-1)\) をかけて、\(-(|x|+|y|)≦-(x+y)≦|x|+|y|\)…②
 ①,②より、\((x+y)≦|x|+|y|\) または \(-(x+y)≦|x|+|y|\)…③
 \(|x+y|\) は\({x+y, -(x+y)}\)のうち、小さくない方であるから、いずれにせよ \(|x+y|≦|x|+|y|\)…④ が成り立つ。
 ④ の不等式において \(x=a, y=-b\) のとき、\(|a-b|≦|a|+|-b|=|a|+|b|\) (証明終了)

 なお、等号が成立するのは \(|a-b|=a+b\) または \(|a-b|=-(a+b)\) となるときですから、\(a≧0, b≦0\) または \(a≦0, b≧0\) のとき、すなわち \(ab≦0\) のときです。
 他にも、この不等式から導ける重要な不等式として \(|a|-|b|≦|a+b|\) があります。余裕のある受験生は、ぜひ一度証明に挑戦してみてください。

 (2) \(f(x)=2x-1\) について、\(f_{1}(x)=f(x), f_{2}(x)=f(f_{1}(x)), f_{3}(x)=f(f_{2}(x))\) としたとき、関数 \(f_{3}(x)\) のグラフをかけ。
 合成関数のグラフをかく問題ですが、絶対値付きの関数が入れ子状になるため、場合分けが多岐にわたります。計算を進める中で、最終的には8つの式が出てくることに気付くでしょう。また、\(f_{1}(x)\)→\(f_{2}(x)\)→\(f_{3}(x)\) と計算を進めていく中で、前の関数の定義域を細分化していく要領で、次の関数の定義域を取ることができる、ということも分かってきます。基本通り式変形を行い、正確に解答を導きましょう。

 (3) 関数 \(f(x)=|x-1|+|x-2|+|x-t|\) は、任意の実数 \(t\) について \(f(x)≧1\) を満たすことを示せ。
 前問 (1), (2) が誘導になっています。(1) で証明した不等式に当てはめてもいいですし、(2) のようにグラフをかいて考えてもいいです。
 (1) の不等式を用いると、\(|a-b|≦|a|+|b|\) ですから、\(|(x-1)-(x-2)|≦|x-1|+|x-2|\) となり、\(1≦|x-1|+|x-2|\) であることが分かります。
 \(|x-t|≧0\) は常に成り立つので、\(1≦|x-1|+|x-2|+|x-t|\) も常に成り立ちます。

 (4) 関数 \(f(x)=\displaystyle\sum_{k=1}^{N}\ |x-k|\) の最小値を求めよ。
 \(N\) と \(x\) の両方が変動し得るため、同時に動かして考えてしまうと、かなり複雑になってしまいます。まずは \(N\) を固定した状態で \(x\) を動かし、関数の最大・最小を捉えるところから始めましょう。
 ① \(x≧N\) のときと \(x<1\) のときは、すべての絶対値記号を簡単に外すことができます。
 ② \(1≦x<N\) のときは、\(x\) の値によって絶対値記号の外れ方が変化します。
②のパターンでは、\(k≦x<k+1\) とおきましょう。\(f(x)\) の絶対値記号を外した式を、\(k\) で表すことができます。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割

【第3問】(難易度:難) 

 \(x,y\) 平面上の原点Oを中心とする、半径 \(\alpha\ \) の円について考える問題。

 (1) 三倍角の公式の穴埋め問題です。
 もちろん、途中経過を示す必要がありますから、実質的には証明問題といえます。加法定理またはド・モアブルの定理から導きましょう。

 (2) 円Oと円Cの接点をBとする。このとき、∠BCPの大きさを求めよ。
 円Cにおける弧BPの長さは、円Oにおける弧ABの長さと等しくなります。∠BOA=\(\theta\ \) ですから、弧AB\(=a\theta\ \)です。さらに、円Cの半径は \(b\) なので、∠BOP\(=\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ \) となります。

 (3) \(x\) と \(y\) を、それぞれ、\(a, b, \theta\ \) を用いて表せ。
 ベクトルを用いて考えると、
 \(\overrightarrow{\textrm{OP}}\ =(x, y)\), \(\overrightarrow{\textrm{OB}}\ =(a\cos{\theta\ }, a\sin{\theta\ })\), \(\overrightarrow{\textrm{OC}}\ =((a-b)\cos{\theta\ }, (a-b)\sin{\theta\ })\)
とおけます。このとき、
 \(\overrightarrow{\textrm{CP}}\ \) は \(\overrightarrow{\textrm {CB}}\ \) を、点Cを中心に \(-\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ \) だけ回転させたものなので、
 \(\overrightarrow{\textrm{CP}}\ =\left(b\cos{\left(\theta\ -\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ \right)}, b\sin{\left(\theta\ -\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ \right)}\right)\)
 \(\overrightarrow{\textrm{OP}}\ =\overrightarrow{\textrm{OC}}\ +\overrightarrow{\textrm{CP}}\ \) より、
 \((x, y)=\left((a-b)\cos{\theta\ }\ +b\cos{\left(\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ -\theta\ \right)}\ , (a-b)\sin{\theta\ }\ -b\sin{\left(\displaystyle\frac{a}{b}\ \theta\ -\theta\ \right)}\ \right)\)
が導かれます。

 (4) \(a:b=4:1\) のとき、\(x, y\) の関係式を \(\theta\ \) を消去して表せ。また、点Pのえがく曲線の長さを \(a\) で表せ。ただし、\(0≦\theta\ ≦2\pi\ \) とする。
 (3)で出した式に \(b=\displaystyle\frac{a}{4}\ \) を代入し、3倍角の公式を使って整理します。
 最終的には、\((x, y)=(a\cos^3{\theta\ }, a\sin^3{\theta\ })\) となり、\(\cos{\theta\ }\ =\left(\displaystyle\frac{x}{a}\ \right)^\frac{1}{3}\ , \sin{\theta\ }\ =\left(\displaystyle\frac{y}{a}\ \right)^\frac{1}{3}\ \) が導かれます。
 これを相互関係の公式 \(\sin^2{\theta\ }+\cos^2{\theta\ }=1\) に代入すれば、\(x, y\) の関係式は完成です。
 曲線の長さは、公式から出しましょう。問題となるのは積分区間です。半径 \(a\) の円Oの内部を、半径 \(\displaystyle\frac{a}{4}\ \) の円Cが転がるため、点Pは合計4ヶ所で円Oの円周と接します。当然、その4ヶ所で区切られた点Pの軌跡は、いずれも同じ形(長さ)であるため、\(0≦\theta\ ≦\displaystyle\frac{\pi\ }{2}\ \) で積分区間をとり、それを4倍することで長さが求まります。

 (5) \(a:b=3:1\)のとき、\(0≦\theta\ ≦2\pi\ \) における、点Pのえがく曲線の長さと、この曲線で囲まれた部分の面積を求めよ。
 まずは\(b=\displaystyle\frac{a}{3}\ \) を代入して、\((x, y)\) を媒介変数 \(\theta\ \) で表しましょう。(4) と同じ要領で、点Pが円Oと3ヶ所で接することを考えると、\(0≦\theta\ ≦\displaystyle\frac{2\pi\ }{3}\ \) の範囲における曲線の長さを求め、それを3倍すればよいことが分かります。
 上記の区間における曲線と \(x\) 軸で囲まれた部分の面積から、点O,\(\theta\ =\displaystyle\frac{2\pi\ }{3}\ \) における点P,\((-\displaystyle\frac{a }{2}, 0)\) を結んだ直角三角形の面積を引けば、求めたい図形の三等分された面積が求められます。
 図形的なイメージが湧かない場合は、増減表を書いてグラフの動きを調べるとよいでしょう。

≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 8割
他教科を得点源にしたい受験生… 6割

【総評】

 第1問は確実にすべて解かなくてはなりません。また、第3問 (1)~(3) についても解けてほしい問題です。第2問は、(1) の証明ができなかった場合でも、(2) 以降の問題を解くことはできますので、諦めず最後まで問題に目を通しましょう。

まとめ

というわけで、今回は兵庫医科大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

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