医学部の受験では正規合格の他にも、繰り上げ合格や補欠合格の判定を受けます。
3種類の判定のうち受験生の悩みのもととなるのが、補欠合格です。
本当に繰り上げ合格に昇格できるのか、不安な日々を送っている人もいるでしょう。
そこで今回は医学部の受験生に向けて、補欠合格など3種類の合格の判定について基礎から解説するとともに、補欠合格の制度の説明、そして補欠合格者が抱えがちな悩みへの対処方法についても解説していきましょう。
目次
医学部受験の補欠合格とは
医学部の受験では正規合格の他にも、繰り上げ合格で入学の資格を得ることがあります。
正規合格は知っていても、繰り上げ合格や補欠合格についてはあまり詳しくないという人もいるでしょう。
こちらの項では、正規合格と繰り上げ合格、そして補欠合格について解説します。
正規合格
最初に正規合格について説明しましょう。
正規合格とは読んで字のごとく一般入試や推薦入試で上位に入り、入学資格を得ることを指します
正規合格を果たした人の多くは入学手続きに進みますが、併願受験で複数の大学を受験した人は入学を辞退することもあります。
辞退者が出てしまうと大学側は定員に空きが出来てしまうため、大学側は人員を補充しなければなりません。
繰り上げ合格や補欠合格が存在するのはこのためです。
繰り上げ合格
繰り上げ合格とは補欠合格者の中から選抜され、大学から入学資格を付与される合格を言います。
一般的に補欠合格者の中でも特に成績が優秀だった人が選ばれ、医学部の門をくぐることになります。
合格最低点1点から2点ほど及ばなかった人が対象となりやすいので、目安として覚えておいてください。
詳しくは記事の後半でお話ししますが、通知については郵送や電話などで行われます。
補欠合格
補欠合格とは入学の辞退者が出ることを見込んで正規合格者以外の受験者も合格認定するものです。
医学部に定員割れが生じた場合、こちらの補欠合格者の中から繰り上げ合格者が選抜されます。
補欠合格で必ず押さえておきたいポイントは、補欠合格の通知が来た時点では正式な入学資格を得ていないということです。
補欠合格の後、繰り上げ合格へ昇格して初めて入学資格を得られます。
ぬか喜びにならないためにも、こちらの点はぜひ押さえておいてください。
繰り上げ合格は本当にあるのか
補欠合格と繰り上げ合格の解説に続き、こちらの項では繰り上げ合格の実態について深掘りして見ていきます。
大学のごとの繰り上げ合格者の人数を一覧表にして掲載しておりますので、こちらも併せて参考にしてください。
どれくらいの人数が繰り上げ合格となっているのか
ここでは私立大学の医学部を取り上げ、繰り上げ合格者の人数を表でまとめました。
合格者数に関する解説も後述しますので、そちらも一緒にお読みください。
▼私立大学医学部の補欠繰り上げ合格状況一覧
※表の見方
・〇人:大学が正式に公表したもの。
・不明:大学が公表していないため不明となっているもの。
・〇人程度:大学からの正式な公表はされていないものの、おおよその人数が予想出来るもの。
・〇群:国際医療福祉大学のみの表記。
補欠人数がA~D群で分類されている。
大学名 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
慶応義塾大学医学部 | 41人 | 27人 | 49人 | 53人 | 43人 |
東京慈恵会医科大学 | 150人 | 142人 | 103人程度 | 102人 | 151人 |
順天堂大学医学部 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
昭和大学医学部 | 157人 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
東京医科大学 | 一般:70人 程度 セ:60人程度 | 不明 | 一般:68人程度 セ:26人程度 | 一般:56人 セ:33人 | 一般:79人 セ:33人程度 |
東邦大学医学部 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
日本医科大学 | 前期:150人程度 | 前期:130 人程度 後期:60人程度 | 前期:160人程度 後期:40人程度 | 前期:180人 後期:10人 | 前期:200人程度 |
国際医療福祉大学医学部 | D群まで | D群まで | D群まで | D群まで | D群まで |
日本大学医学部 | A方式:67人 N方式:7人 | A方式:120人程度 N方式:5人程度 | A方式:78人程度 N方式:2人程度 | A方式:92人 N方式:1人 | A方式:116人 |
東京女子医科大学 | 91人 | 94人 | 39人程度 | 55人 | 62人 |
聖マリアンナ医科大学 | 80人程度 | 130人程度 | 57人程度 | 55人 | 135人 |
杏林大学医学部 | 110人程度 | 119人程度 | 一般:127人程度 セ:20人程度 | 一般:160人 セ:53人 | 一般:133人 セ:55人 |
東海大学医学部 | 一般:47人 セ前期:25人 神奈川枠:8人 静岡枠:5人 | 一般:62人 セ前期:14人 神奈川枠:4人 静岡県枠:5人 | 一般:40人程度 セ:20人程度 | 一般:7人 神奈川枠:4人 静岡枠:3人 | 一般:70人 神奈川枠:5人 |
帝京大学医学部 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
埼玉医科大学 | 前期:110人程度 後期:30人程度 セ:数人程度 | 前期:61人 後期:17人 セ前期:8人 セ後期:2人 | 不明 | 不明 | 不明 |
北里大学医学部 | 一般:104人 相模原枠:2人 | 161人 | 55人 | 51人 | 89人 |
獨協医科大学 | 一般:104人 相模原枠:2人 | 161人 | 55人 | 51人 | 89人 |
自治医科大学 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
岩手医科大学 | 一般:150人程度 地域枠:3人 | 106人 | 不明 | 69人 | 110人 |
東北医科薬科大学 | 225人 | 181人 | 不明 | 156人 | 197人 |
愛知医科大学 | 一般:59人 セ前期:26人 セ地域枠B:10人 セ後期:5人 | 一般:137人 セ前期:54人 セ地域枠B:8人 セ後期:6人 | 一般:58人程度 セ:11人程度 地域枠B:5人程度 | 一般:66人 セ:21人 地域枠:3人 | 一般:175人 セ:25人 地域枠:9人 |
金沢医科大学 | 前期:116人 後期:6人 | 前期:86人 後期:3人 | 前期:96人 後期:4人 | 86人 | 108人 |
藤田医科大学 | 前期:11人 後期:14人 セ前期:12人 | 前期:50人 後期:14人 セ前期:23人 | 前期:30人程度 後期:6人程度 地域:23人程度 セ前期:10人程度 セ後期:4人程度 | 前期:31人 | 前期:96人 セ:5人 |
大阪医科大学 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
関西医科大学 | 前期:不明 後期:10人程度 | 70人程度 | 40人程度 | 前期:60人程度 | 前期:200人程度 |
近畿大学医学部 | 前期:60人程度 後期地域枠:数名程度 | 不明 | 20人程度 | 不明 | 前期:50人程度 |
川崎医科大学 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 | 不明 |
久留米大学医学部 | 前期:38人 | 前期:33人 後期:3人 | 52人程度 | 63人 | 53人 |
産業医科大学 | 17人 | 21人 | 不明 | 25人 | 13人 |
福岡大学医学部 | 系統別:86人 セ:65人 | 系統別:80人 セ:58人 | 一般:19人程度 セ:54人程度 | 一般:62人 セ:48人 | 一般:29人 セ:37人 |
繰り上げ合格の基準は?
繰り上げ合格の基準として最も多いのが、一般入試の成績順です。
試験の点数が高い人から補欠合格と認定されていくのが一般的です。
繰り上げ合格の人数は?
ここでは繰り上げ合格者の人数を解説していきます。
具体例として、2017年の東京慈恵会医科大学を引き合いに出して説明してみましょう。
同大学の医学部の定員は110人ですが、正規合格者は50人以上多い165人でした。
医学部側としても辞退者がでることを予測して、定員より50人以上多くの人を正規合格者としています。
そして、補欠合格者の人数は218人でした。
この補欠合格者のうち繰り上げ合格となった人は102名。
つまり補欠合格者のうち約半数の人が、めでたく合格したのです。
大学によってはさらに多くの繰り上げ合格者を出しています。
合格最低点に僅差の人は、希望を持ってなるべく前向きな気持ちで通知を待ちましょう。
医学部の補欠合格は大学によって対応が違う
医学部の補欠合格の取り扱いは大学によって異なります。
補欠合格者の順位を発表してくれる医学部もあれば、順位は伏せたまま合格を通知する医学部もあるなど、それぞれ対応が違っています。
まずは、補欠合格者の中で自身の順位が分かる大学の説明をします。
こちらは、国際医療福祉大学や杏林大学、日本医科大学などが該当します。
順位については各大学のホームページに掲載されていますので、チェックしてみるとよいでしょう。
一方、川崎医科大学などは補欠合格者を発表していません。
川崎医科大学は補欠合格に関する問い合わせなどは一切取り合わない方針ですので押さえておいてください。
繰り上げ合格の通知はどのようにしてくるのか
繰り上げ合格の通知方法には、いったいどのようなものがあるのでしょうか。
こちらの項では、繰り上げ合格の通知方法について解説していきます。
書面での通知
書面での通知では、合格通知書類や入学手続きの書類が送られてきます。
郵送に時間を要するため通知が届くまでの期間が遅いのが難点です。
電話での通知
電話で通知の報せが来る場合もあります。
非通知でかかってくることもあるので、着信拒否設定を解除しておきましょう。
電話に出られず連絡がつかない期間が長いと、合格が取り消しになってしまうこともありますので気をつけてください。
ホームページでの通知
ホームページ上で合格を確認する方法も、最近では増えてきました。
こちらは通知が来るというよりも、大学が発行するパスワードとIDを利用して合否を確認するものとなります。
掲示での通知
昔はポピュラーな方法ではありましたが、今ではあまり見られなくなったのが、掲示での通知方法です。
遠方に住む受験者は確認が大変ですが、大学側も複数の方法で通知をするなどして配慮していますので、安心してください。
メールなどオンラインでの通知
感染症対策の一環として実施されているのが、メールなどを利用したオンラインでの通知です。
こちらの方式の場合、学校の公式メールアドレスや連絡アプリなどで合否の通知が来ます。
繰り上げ合格に期待しすぎてはいけない?
補欠合格の通知が来たものの、繰り上げ合格ができるのか毎日、不安に思っている人もいることでしょう。
ここでは、果たして繰り上げ合格に期待してもよいのか解説していきます。
自分が何番目に繰り上がるか分からない大学がほとんど
上でも書きましたが、補欠合格者の順位の発表の有無は大学によって対応が違ってきます。
順位を発表してくれる大学もありますが、多くの大学では発表していません。
そのため補欠合格者の中には、順位がわからずストレスがかかってしまう人もいるはずです。
ただ、合否判定は他人がするものですから、自分の力ではコントロールできません。
つまり、いくら考えても解決しない問題なのです。
一切、期待をするなと言う方が無理でしょうから、ほどほどに期待しつつ次のステップの準備を進めるとよいでしょう。
先に結果が出る私立大学医学部の入学手続きをする必要がある
補欠合格の場合、他の私立大学医学部の入学の手続きをしておく必要もあります。
納めた入学金は返却してもらえませんので、大きな負担となるでしょう。
来年に向けた準備がしづらい
補欠合格者の心中は、必ずしも穏やかとは限りません。
いつ通知が来るのか、本当に繰り上げ合格できるのかなど多くの悩みの種を抱えているでしょう。
「よい報せを待ちわびていた分、落ちた時の辛さは大きいだろうな」と感じている人もいるはずです。
また、合否がわからないうちに来年の準備をするのも気が引けるという人もいるかもしれません。
しかし、スッパリ諦めて気持ちを切り替えている人は、すぐに予備校に通い来年度の準備を始めています。
なるべく早く次のステップに進むのが得策でしょう。
まとめ
医学部の受験では正規合格者が入学を辞退するケースがあるため、補充要員として補欠合格者が選ばれます。
この補欠合格者は繰り上げ合格に昇格するまでは、正式な入学資格を付与されません。
そのため合格の通知が来るまで色々な悩みにさらされることになります。
補欠合格者が多い医学部では、少々の期待をしつつ過ごすのもよいですが、合否判定は自分の力でコントロールできる問題ではありません。
予備校に通い始めるなど、次のステップに進んだ方が得策です。
いずれにせよ大切なことは、夢を諦めないということです。
繰り上げ合格が叶わなかったとしても、次回は必ず受かってやるという強い気持ちでいればきっと合格できるはず。
この記事が、補欠合格者が持つ悩みや不安を少しでも解消する一助になれば幸いです。