京都医塾化学科です。
このページでは「聖マリアンナ医科大学の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“聖マリアンナ医科大学”の受験を考えている方
・“聖マリアンナ医科大学の化学がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式: 記述・論述式(一部選択式)
制限時間: 理科2科目で150分
配点: 100点
出題の傾向と特徴
2021年度以降、大問2題の出題が続いています。1行から数行程度の論述問題が毎年出題されているのが特徴で、しっかりと対策を行う必要があります。計算問題も毎年出題されているため、理論化学の典型問題は抑えておくと良いでしょう。難易度としては基本から標準レベルの出題が多く、難問はほとんどないため、高得点勝負となることが予想されます。
【頻出の出題単元】
理論化学と有機化学からの出題割合が多く、無機化学からの出題は控えめであることが特徴です。理論化学からは気体や溶液、熱化学、滴定や反応速度・化学平衡など、入試頻出の出題であることが多いです。理由の論述や、描図問題などが出題されることもあります。有機化学からは、脂肪族化合物や芳香族化合物、糖やアミノ酸などを中心に、それらの関連問題がまとめて出題される形式が続いています。無機化学からの出題は少ないですが、理論化学や有機化学の問題の小問に一部含まれていることがあるため、各種化合物の性質や特徴、製法などは確認しておくと良いでしょう。
【制限時間に対する問題量】
大問2題を75分かけて解く事になり、難易度的にもかなり抑えられていますから、時間的な余裕は十分にあるものと思われます。逆に言うと、時間が足りなかったとの言い訳がまず通用しませんから、全問解いて満点を取るくらいの意気込みで試験に臨みましょう。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】 熱化学
(1):P2G(Power to Gasの略)に関して、理由の論述や熱化学の計算などの問題でした。
1):窒素と水素の単体からアンモニアを合成する方法の名称を答える問題でした。非常に有名な製法のため、必ず正答しておきましょう。
2):アンモニアの燃焼を利用する方法が温室効果を低減する理由を説明する問題でした。「温室効果ガス」が二酸化炭素であることは多くの受験生が知っている知識かと思うので、このこととアンモニアの燃焼では二酸化炭素が発生しないことを結び付けることができれば、適切な説明を答えることができました。
3):3つの反応の熱化学方程式を書く問題でした。エネルギー図が予め与えられていたため、図から反応熱を求めれば、容易に正答できました。生成熱や燃焼熱は、1molあたりの熱量であるため、図から求めた値そのままにならないことに注意しましょう。
4):アンモニアに関して、エネルギー回収率を求める問題でした。3)で求めた値を用いてすぐに計算できたため、3)が正答できた人は必ず正答しておきましょう。
5):アンモニアと水素で比べると、水素の方が凝縮しにくい理由を説明する問題でした。「水素結合に言及して」というヒントも与えられていたため、水素は水素結合を形成しておらず、アンモニアは水素結合を形成していることを思い出すことができれば、難なく理由の記述もできたかと思います。
(2):水素と窒素、アンモニアに関する問題でした。
1):2つの反応におけるエネルギー変化の様子を、エネルギー図に表す問題でした。エネルギー図を普段から扱いなれている受験生には、容易に正答できる問題でした。
2):水素分子と窒素分子の電子式を書き、さらに窒素が酸化されにくい理由を説明する問題でした。電子式は基本問題のため必ず正答しておきましょう。理由の記述に関しては、ヒントとして与えられていた図と式から、窒素分子の酸化反応が吸熱であることを見抜くことができれば正答できる問題でした。
3)一酸化窒素から酸性雨の原因物質に変わるまでの反応式と、原因物質の名称を答える問題でした。一酸化窒素は空気中の酸素と容易に反応して二酸化窒素に変わること、二酸化窒素と水の反応で硝酸ができることは、硝酸の工業的製法であるオストワルト法にも含まれる反応なので、正答しておきたい問題でした。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 8割
他教科を得点源にしたい受験生… 6割
【第2問】 アミノ酸とタンパク質
(1)1)、2):グリシンとアラニンが縮行反応して生成したグリシルアラニンについての構造式と分子量を答える問題でした。どちらも基本問題のため、必ず正答しておきましょう。
3):アラニン1分子とグリシン2分子でできたトリペプチドの異性体の数を答える問題でした。鏡像異性体を含めて、とあるため、アラニンに不斉炭素原子があり、鏡像異性体が存在することに注意しましょう。
(2):等電点を持つ分子をすべて選ぶ問題でした。アミノ酸は酸性の官能基であるカルボキシ基と、塩基性の官能基であるアミノ基を併せ持つため、液性によってイオンの状態が変化し、等電点が存在します。アミノ酸を全て選択すればよい問題のため、正答しなければならない問題でした。
(3):ニンヒドリン反応で検出できる分子をすべて選ぶ問題でした。アミノ酸のアミノ基の検出反応のため、(2)と同様に、アミノ酸を全て選択すればよい問題でした。
「アミノ基の検出」と覚えてしまっていた受験生は、アニリンも選択するか迷ったかもしれませんが、芳香族アミンはニンヒドリン反応で呈色しないため、今回は答えには当てはまりませんでした。(※ 脂肪族の第一級アミンR-NH2であれば、ニンヒドリン反応で検出できます。)
(4):タンパク質の高次構造に関する問題でした。1)で一次構造について、2)で三次構造について問われていましたが、どちらも基本問題のため、必ず正答しておきましょう。
(5):選択肢から油脂を選び、そのけん化価と付加する水素の物質量を求める問題でした。油脂の構造式が暗記できていれば、1)は容易に選択できますし、けん化価に関しても定義を初めに示してくれていたため、その定義から2)のけん化価も求めることができました。最後に3)についても、炭素と水素の数から二重結合の数が推測できるため、二重結合の数から付加する水素の物質量も求めることができました。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生… 9割
他教科を得点源にしたい受験生… 7割
【総評】
全体を通して、難問が少なく、基本から標準レベルの問題が並びました。2023年度は論述問題が3題と、描図問題が1題出題されていたため、次年度に向けても対策は入念に行っておいた方が良いでしょう。それ以外の基本問題に関しては取りこぼさないようにする必要があります。
基本問題での取りこぼしを減らすためにも、各単元の基本知識は入念に確認しておき、頻出問題は解法も確認して、確実に得点できるような状態に仕上げておきましょう。
まとめ
というわけで、今回は聖マリアンナ医科大学の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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