京都医塾物理科です。
このページでは「国際医療福祉大学医学部の物理」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“国際医療福祉大学医学部”の受験を考えている方
・“国際医療福祉大学医学部の物理がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式:マーク式(択一式)
時間:2科目120分
大問数:5題(小問集合1題)
配点:100点(1次試験全体の配点は550点)
出題の傾向と特徴
新設された2017年度以降の7年分について、分野別の傾向をまとめます。
【力学】
毎年、1題は出題されています。出題テーマは
・「(小)剛体棒のつりあい、ばねにつながった小球の単振動(2023)」
・「(小)3物体の完全非弾性衝突、水平面内における小物体の等速円運動(2022)」
・「(小)単振り子の周期、台とその上で衝突を繰り返す小物体の運動(2021)」
・「(小)糸でつないだ3物体の運動、2か所を固定した糸に通したリングの運動(2020)」
・「(小)三角形物体の重心、針金に通した小球の運動(2019)」
・「(小)ばねでつながれた2球の分離、円筒面内における小球の等速円運動(2018)」
・「回転円盤上における剛体棒の単振動(2017)」
です。
これらから分かるように、幅広い単元から出題されています(強いて言えば、万有引力からの出題は見られません)。新設初年度の2017年度はなかなかに凝ったつくりの問題でしたが、近年になるにつれて、設定は基本的なものへと変化してきています(ただし、考察が平易になったわけではありません)。物体系としての考察もしばしば要求されるため、運動量が保存される条件(力積と運動量の関係)、力学的エネルギーが保存される条件(仕事とエネルギーの関係)などは、確実に押さえておきましょう。
【電磁気】
毎年、1題は出題されています。出題テーマは
・「(小)帯電した金属球のつりあい、時間変化する磁場中における小球の円運動(2023)」
・「(小)手回し発電機、非一様磁場中を運動するコイル(2022)」
・「(小)電流計や電圧計の内部抵抗を踏まえた抵抗値の測定、(小)電磁場中における荷電粒子の運動、極板間をばねでつないだコンデンサー(2021)」
・「(小)抵抗の消費電力、電磁場中における荷電粒子の運動(2020)」
・「(小)3つの点電荷のつくる電場、コンデンサーを含む直流回路(2019)」
・「(小)コンデンサーの過渡現象、コンデンサーとコイルを含む直流回路(2018)」
・「コイルを含む回路に組み込んだ磁場中を動く導体棒(2017)」
です。
単元としては、コンデンサーやコイルを含む直流回路、荷電粒子の運動、電磁誘導といった内容が多く出題されています。いずれの題材も公式のパッチワークでは解き進められないように工夫されているため、普段の学習から基礎理論を丁寧に理解していく学習ができているどうかが大きく試されます。
【波動】
毎年、1題は出題されています。出題テーマは
・「(小)気柱の共鳴、透明板や凸レンズを通した点光源がつくる像(2023)」
・「(小)凸レンズのつくる像、2~4つのスリットによるヤングの実験(2022)」
・「(小)屈折による浮き上がり、回転音源によるドップラー効果(2021)」
・「(小)ドップラー効果による観測時間のずれ、角柱レンズと平面ガラスの間の空気層における光波の干渉(2020)」
・「(小)プリズムを通る光の進路、波の式で考える定常波(2019)」
・「(小)凸レンズのつくる像、ドップラー効果における波面の位置(2018)」
・「回折格子による光波の干渉(2017)」
です。
光波の干渉とドップラー効果が、大問で多く取り上げられています。こちらもやはり、典型題材に一工夫加えられた問題が多いため、単なる公式暗記では太刀打ちできません。丁寧な基礎理解が重要になります。
【熱力学】
毎年、1題は出題されています。出題テーマは
・「(小)熱に関する基礎知識、シリンダー内に閉じ込めた気体の状態変化(2023)」
・「(小)位置エネルギーから熱エネルギーへの変換、水中に沈めた容器内の気体の状態変化(2022)」
・「シリンダー内の2室の気体の状態変化(2021)」
・「ピストンどうしがばねでつながれた2室の気体の状態変化(2020)」
・「(小)p–Vグラフ、回転するシリンダー内に閉じ込めた気体の状態変化(2019)」
・「(小)断熱自由膨張における気体分子の平均運動エネルギー、ブレイトンサイクル(断熱・定圧変化からなる熱サイクル)(2018)」
・「円筒容器内における気体の分子運動論(2017)」
です。
題材は様々ですが、定番の気体の状態変化がほとんどの出題を占めます。熱力学もやはり通り一遍では解けないように様々な工夫がなされているため、普段からワンランク上の問題で思考訓練を積み重ねることが効果的です。
【原子物理】
2017、2021年度を除き、小問集合で1題出題されています。出題テーマは
・「(小)原子や電子および放射線などに関する基礎知識(2023)」
・「(小)光電効果(2022)」
・「(小)ブラッグ反射(2020)」
・「(小)He+から放出される光のエネルギー(2019)」
・「(小)光電効果(2018)」
です。
光電効果が2回被っていますが、意図したものではないと思われます。また、いずれも基本的な理解のみを試す問題でした。対策としては、教科書と教科書傍用問題集で十分なので、幅広く基礎を押さえておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
2023年度は2科目120分で大問5題を解答する必要がありました。1科目60分と考えると、大問1題あたりの時間は12分となります。したがって、思考に使える時間はほとんどありません。小問集合は基本的で与しやすいですが、大問は歯ごたえのある問題も多く出題されます。解きやすい問題から手際よく処理していくことが、重要となります。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】
全5問からなる小問集合です。例年、各5分野から1題ずつ出題されています。題材は、問1が剛体棒のつりあい、問2が帯電した金属球のつりあい、問3が気柱の共鳴、問4が熱に関する基礎知識、問5が原子や電子および放射線などに関する基礎知識です。いずれも基本的であり、難易度は共通テストの小問集合と同程度です。
ただし、問1は6つの図をよく見比べて定性判断する必要があります。また、問4と5は基本的ではありますが、正確な知識に基づく正誤判定が求められています。そのため、これらは特に丁寧に読み解く必要があります。
≪2023年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…8~10割
他教科を得点源にしたい受験生…6~8割
【第2問】
ばねにつながった小球の単振動を考察する問題です。前半の[A]は、ばねの一端が固定されているため、比較的平易です。問2以降からは単振動としての分析が要求されていますが、単振動やばね振り子の基本が押さえられていれば、特に問題なく解き進められるはずです。
後半の[B]はばねの両端に小球をつなげているため、連成振動となります。この場合、重心から見て単振動を行いますが、そのこと自体は問4に明記されています。ただし、分析そのものが誘導で示されていないため、結局は類題の経験の有無が点差を分けたものと思われます。平易に考えるためには、1本のばねを、敢えて重心に対して2本のばねに区切るとよいでしょう。すると、区切った各ばねのばね定数は、ばねの自然長とばね定数が反比例することから求められます。このばね定数と、つながった小球の質量を参照して、ばね振り子の周期公式に代入しましょう。
≪2023年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…8~10割
他教科を得点源にしたい受験生…6割
【第3問】
時間変化する磁場中における小球の円運動を考察する問題です。問1は時間変化しない静磁場のため平易ですが、問2以降は時間変化する磁場中で運動を考えます(磁場は、時刻の1次関数となっています)。この場合、円周に沿った誘導電場が生じるため、この電場から受ける力を、円運動の接線方向について考えていく必要があります。円周に沿った電場が生じること自体は問2の問題文中にも明記されていますが、発生条件も含めた誘導電場についての理解が得られていない受験生の多くは、戸惑ったものと思われます。
誘導電場を踏まえて考察する典型的な類題としては、ベータトロンが挙げられます。そのため、問2以降を解き進めるのが難しい場合は、そちらにあたってみるとよいでしょう。逆に、理解が十分であれば、完答も狙えます。
≪2023年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…8~10割
他教科を得点源にしたい受験生…2.5~5割
【第4問】
透明板や凸レンズを通した点光源がつくる像を考察する問題です。教科書的な典型題材とは異なるため、問題を丁寧に読み取り、分析の方向性を自分で決めていかなければなりません。本質的には凸レンズを通した光の進路を考える問題であり、写像公式や屈折の法則などから考察を進めていきます。そのため、何となく図の見た目から光波の干渉であると考えた受験生は、解答の方針が立たず戸惑ったものと思われます。
また、途中で「遮蔽板をわずかに移動させる」、「透明板をわずかに回転させる」といった操作が行われます。このような操作によって光の進路がどのように変わるのか、定性的かつ定量的な設問に答えるためには、正確な作図が必要となります。難易度の高い問題ですが、深く解き進めるためには、丁寧な分析が欠かせません。
≪2023年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…6~8割
他教科を得点源にしたい受験生…4~6割
【第5問】
シリンダー内に閉じ込めた気体の状態変化を考察する問題です。前半の問3までは、1室のみの気体の状態変化を考えればよく、また設問も典型的なので、完答が望まれます。一方で、後半は2室の気体の状態変化を考える必要があるため、やや難易度は上がります。とは言え、問4と5は、各部屋の気体についての状態方程式とピストンのつりあいから得られる式を連立すれば解けるため、考察自体は平易です。最後の問6は、ピストンが質量を持つため、各部屋の気体の仕事の差分がピストンに対する仕事(=ピストンの重力による位置エネルギー変化)として現れることに注意しましょう。
≪2023年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…7~10割
他教科を得点源にしたい受験生…6割
【総評】
例年、難易度は基本~やや難と幅広く、難しいものを中心に、公式一辺倒では正答に至らないような工夫が随所になされています。また、非典型的な状況へと発展する設問も多く、物理現象の正確な理解力が試されます。加えて、設問数が非常に多いので、与えられた情報を素早く統合して迅速に計算を実行していく必要もあります。2023年度も、この通りの出題になりました。相当に高い状況判断力と計算処理能力が必要となるため、基礎固めはもちろんのこと、普段から難問演習にも積極的に取り組み、高い学力への到達を目指していきましょう。
まとめ
というわけで、今回は国際医療福祉大学医学部の物理についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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