京都医塾数学科です。
このページでは「近畿大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“近畿大学医学部”の受験を考えている方
・“近畿大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式:穴埋め+記述式
制限時間:60分
配点:100点(筆記試験全体の配点は4科目400点)
近畿大学医学部の数学は2016年度以降「60分・全3問:大問1(穴埋め)、大問2(答えのみ記述)、大問3(論述)」という形式が続いています。
出題の傾向と特徴
【出題単元の特徴】
近畿大学医学部は、医学部としては珍しく「数学Ⅲの単元からの出題がない」大学です。そのため、試験範囲は数学ⅠAⅡBのみとなりますが、これらの単元からは幅広く出題されており、難易度も教科書レベルから入試標準、難関レベルまで、様々です。最低限、標準レベルの問題を解き切ることのできる力は求められますので、数学Ⅲの知識は問われないとはいえ、決して簡単な試験とはいえません。
【頻出の出題単元】
ここ5年間では、場合の数・確率、図形、微分積分(数学Ⅱ)などの単元が頻出です。場合の数・確率では、典型パターンから外れた問題が出題されることが多いため、普段から数え上げなどに慣れておく必要があります。図形分野では、平面図形・空間図形ともに、難易度の高い問題が多く、相応の実力が要求されます。また、ベクトル等の問題であっても、幾何の定理を上手く利用した方が解きやすい問題なども出題されていますので、図形の扱いには十分に習熟しておかなくてはなりません。微分積分は、典型的な、極値や最大最小を求める問題、面積計算、微分係数の定義式など、基礎~標準レベルの問題が多く出題されています。微分積分の計算だけでなく、多項式関数については、グラフの概形や方程式の解とグラフの交点との関係など、基本的な知識は確実に押さえておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
60分3問ということで、時間に余裕がありそうに見えますが、実際に解いてみると、かなりの作業量が要求されます。内容から考えると、60分の時間設定はかなり厳しいものであり、日頃の学習の質と量が問われる試験となっています。解法の定着、正確かつ素早い計算の技術は当然身につけているものとして、図形処理の能力や、行き詰まったときに試行錯誤して答えを導き出す粘り強さも求められます。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:標準)
さいころを使ったゲームに関する確率の問題です。
(1)Aさんが、黒色さいころが2つ、赤色さいころが2つ、黄色さいころが1つの計5つのさいころが入った袋の中から2つのさいころを取り出して投げたときの得られる点数についての問題です。さいころの色によって得点の決まり方が変わってきますから、まずはさいころの取り出し方が何通りあるか考えます。この際、同じ色のさいころであっても、区別して考えることが重要です。これは、同様に確からしい根元事象に分けて考えるためです。すると、\({}_5 \mathrm{C}_2 = 10\)通りの取り出し方があります。ここからさらに取り出した2つのさいころを投げ、さいころの色と出た目によって得点が決まります。さいころの色の組み合わせ(カッコ内は同じ色のさいころを区別した場合の組み合わせ数)は、黒・黒(1通り)、黒・赤(2×2=4通り)、黒・黄(2×1=2通り)、赤・赤(1通り)、赤・黄(2×1=2通り)が考えられ、取り出した2つのさいころを(たとえ同じ色でも)区別した場合の出た目の組は6×6=36通りなので、全部で10×36通りの同様に確からしい根元事象に分けられます。(1)では得点が0,1,4である確率を求めますが、赤・赤、赤・黄の場合は負の得点しか得られないので、考える必要がありません。残る黒・黒、黒・赤、黒・黄の場合についてそれぞれ6×6サイズの得点表を書くと36×3=108通りありますが、この程度なら丁寧に書きだして数えたほうが確実です。確率の問題に苦手意識を持つ人ほど「一発で答えを出せる公式」を探してしまいがちですが、確率の問題の基本は書き出して考えることです。
(2)AさんにつづいてBさんも、袋に残った3つのさいころから2つのさいころ取り出して投げ、Aさんと同様に得点を決めます。AさんとBさん両方のさいころの取り出し方を考える必要がありますが、(1)で書いた6×6の得点表は使いまわせます。(エ)、(オ)で問われているのは積事象の確率、最後の(カ)で問われているのは条件つき確率です。最後の(カ)は、Aさんの得点が0になるのは黒・赤の組み合わせで取り出した時しかありえないので、求めるものは、「Bさんが黒色さいころ、赤色さいころ、黄色さいころが1つずつ入った袋の中から2つ取り出して振り、得点が0より大きくなる確率」です。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 8割
他教科を得点源にしたい受験生… 6割
【第2問】(難易度:やや難)
数列、データの分析、整数の性質の融合問題です。
(1)問題の条件から、等差数列の和の公式を用いることによって、\(n(2a+n-1)=2\times7\times17^2\)(ただし\(a\)は整数、\(n\)は\(2\)以上の整数)を得ます。(i)ではこのような組(\(a\),\(n\))の個数を、(ii)ではその中でも\(a\)、\(n\)がともに奇数となるものの個数を求めますが、\(n\)は2以上の整数であり、\(n=1\)の場合は不適であることに注意が必要です。剰余に着目して絞り込むこともできますが、条件を満たす組(\(a\),\(n\))を丹念に書き出す方がよいでしょう。
(2)(i)では平均値を、(ii)では分散を計算します。いずれも定義に従って計算するだけなので確実に得点したい問題です。(ii)は\(y=x-a+1\)の変数変換や「(分散)=(2乗の平均)-(平均の2乗)」を使って計算を工夫するとよいでしょう。(iii)、(iv)は整数問題です。(ii)までが合っていないと解答不能なので要注意です。(1)とは違い、書き出して解くのは厳しい問題です。剰余に着目して(2や3で割った余りで分類して)絞り込む方針が現実的ですが、整数問題に慣れていないと難しいでしょう。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 4割
【第3問】(難易度:やや難)
平面図形の問題です。四角形ABCDの4辺の長さが与えられています。
(1)では、∠ABCの大きさも与えられています。すると、三角形ABCに余弦定理を適用することによって対角線ACの長さも求められ、四角形ABCDの形状が決定します。(i)∠ADCの大きさ(ii)∠BADの大きさ(iii)対角線BDの長さ(iv)四角形ABCDの面積を求めますが、やや難しいのは(ii)∠BADの大きさです。三角形ABCと三角形ACDに余弦定理や正弦定理を適用して∠CAB、∠DACの余弦と正弦を求め、それをもとに∠BAD(=∠CAB+∠DAC)の余弦を加法定理によって求めれば解決しますが、対角線ACの長さの2重根号が外せない形で、入試本番だと「どこかで計算ミスしているのではないか」と疑心暗鬼になりそうです。ここさえ乗り切れば(iii)は易しい。(iv)はたとえ(ii)ができていなくても計算できるので、取り損ねてはいけません。
(2)は、四角形ABCDの面積の最大値とそのときの対角線ACの長さを求める問題です。(1)と違って∠ABCの大きさは与えられていませんから、∠ABC=\(\theta\)あるいはAC=\(x\)などと角や辺の大きさを文字で表し、四角形ABCDの面積をその文字の関数として表します。たとえば、\(\theta\)を用いて四角形ABCDの面積を表現すると\(\sqrt{1-\cos^2\theta}+\frac{\sqrt{2}}{2}\sqrt{3-2\cos^2\theta}\)となりますが、微分などせずとも\(\cos\theta=0\)すなわち\(\theta\)=90°のときに面積が最大になることに気づきたいところです(この関数の微分には数学Ⅲの知識が要求されますが、そもそも数学Ⅲは範囲外です)。(2)の方が易しく感じる受験生も多いでしょう。
≪2023年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 4割
【総評】
極端な難問はないものの、60分という制限時間を考えると、すべての問題に正解するのは厳しいセットです。問題の取捨選択をし、易しい問題で取りこぼさないことがまずは最優先です。最後の方の小問でも易しいことはありますから、あきらめてはいけません。
まとめ
今回は近畿大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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