京都医塾化学科です。
このページでは「国際医療福祉大学医学部の化学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“国際医療福祉大学医学部”の受験を考えている方
・“国際医療福祉大学医学部の化学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式: 全問マーク式
制限時間:60分(理科2科目で120分)
配点:100点
出題の傾向と特徴
【毎年恒例の出題単元】
理論化学、無機化学、有機化学(高分子含む)の全単元から満遍なく出題されています。知識に偏りがあると合格は難しくなるため、どの分野も満遍なく学習しておく必要があります。
【制限時間に対する問題量】
制限時間は60分と一般的な入試問題と同じですが、選択肢は細部まで読まなければ正答できないものが多く、また計算問題は複雑で思考力を要する問題が多く出題されます。さらに高分子の内容は一般的な問題集には載っていないテーマのものが出題されることもあり、全体的に制限時間はかなり厳しいと言えます。解答する際には、時間がかかりそうな問題をいったん後回しにするなどの判断が必要となります。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】
小問集合(8題)で、2022年度と全く同じスタイル。内容はイオン半径、反応熱の定義、塩素の実験室的製法、実在気体、炭酸ナトリウムの二段階滴定、物質の保存方法、油脂(トリグリセリド)の構造異性体、機能性高分子(陽イオン交換樹脂)でした。理論化学、無機化学、有機化学の全範囲からピックアップしての出題です。正誤問題を中心に選択肢が細部まで作り込まれていて、細かい所まで確認しなければ正答できない問題も少なからず存在しますが、逆に消去法などを駆使しながら素早く解くことが可能です。また、知識を問う問題が中心で、計算問題が少ないので「速く正確に」を心がけてここは満点を確保しておきたい部分です。
補足.計算問題と呼べる代物は問5と問7のみですが、どちらも医学部志望者ならば過去に一度は経験している問題で、内容を理解していれば一瞬で解けます。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…9割
【第2問】
理論化学より、酢酸エチルの加水分解反応を題材として、反応速度と化学平衡について問う問題でした。問1、問2を通じて加えた塩酸が、活性化エネルギーを引き下げて反応速度を高める触媒としてのみはたらいていて、実験を通じてその量が変化しないことに気づく点が重要です。与えられた表の水酸化ナトリウムの滴下量が、「一定量の塩酸の中和に要する量」+「加水分解によって生じた酢酸の中和に要する量」であることにより、問3の塩酸の物質量、問4の酢酸エチルの分解速度、問5の平衡定数までが一気呵成に解けます。ただ、マーク式とは言え、計算結果を指数形式で数値、桁数とマークさせる形式ですので、きちんと計算する必要があり、難易度は決して低いとは言えません。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生…8割
他教科を得点源にしたい受験生…6割
【第3問】
無機化学金属元素より、遷移元素の鉄に関して、安定同位体の中性子数、+2、+3の酸化数を取る鉄原子の化合物の性質、鉄鉱石中の酸化鉄(Ⅲ)と四酸化三鉄の割合、硫酸鉄(Ⅱ)水和物の結晶について水和水の数の決定、合金の組成(ステンレス鋼)、トタン、ブリキのめっき層の厚みが出題されました。問1~問5まで、小問を含めて計6題の出題のうち、モル計算や整数の引き算と言った極めて平易なものが含まれているとは言え、実に4題が計算問題ですので、無機化学の知識を土台としての実質、理論化学分野の出題と言えなくもありません。特に問5の(ⅱ)は金属の析出→めっきの形成と読み替えて電気分解の問題を解く事になります。(純粋に問題文に与えられた条件のみから有効数字2桁で計算すると、トタンとみなして④、ブリキとみなして①と、適切な解が2通りあるのは愛嬌でしょうか?)問1は始めから整数値ですし、問3、問4ともに綺麗に割り切れるように数値が工夫されていますから難易度は高くありません。立式をきちんと行い、分数を利用して約分により係数を簡単にして、とセオリー通りに計算すれば「速く正確に」計算できます。計算ミスにはくれぐれもご注意下さい。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生…8割
他教科を得点源にしたい受験生…6割
【第4問】
有機化学芳香族化合物の単元から、医薬品の一種であるスルファニルアミド(抗菌作用を持つサルファ剤(化学療法薬の一種))を合成する過程を通じて、元素分析、芳香族の分離、アセチル化、ジアゾ化、カップリング反応等々、有機化学の出題ではお馴染みの基礎的内容について問う問題でした。アニリンの分子式が始めから与えられており、元素分析も知識のみで、計算がありませんから、構造解析の問題と呼ぶのは大袈裟というものでしょう。問われている内容自体は芳香族化合物の入試問題では頻出のありふれたものばかりなので、単元の内容についてしっかりと演習して臨めば悠々解き進められます。難易度は低いので、本問もしっかり満点を確保しておきましょう。なお、医薬品の合成は2020年度にもアセトアミノフェンの合成が出題されており、問4の選択肢に登場する医薬品については、アスピリン、ペニシリン、ストレプトマイシン等、個々の医薬品の名称、特徴だけでなく、対症療法薬、化学療法薬、副作用、耐性菌等々、入試で良く聞かれる用語についても整理して暗記しておくと、医学部志望者としては小論文や面接の対策も兼ねられるので、心強いかと思われます。
≪2023年度の目標値≫
化学を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…9割
【総評】
知識問題、計算問題共に高い思考力を要する問題が数多く出題されています。日頃の学習では基礎知識をただ丸暗記して終了とするのではなく、それが他の単元のどのような内容とつながっているかを深く掘り下げて学習しておく必要があります。教科書レベルの知識や頻出問題の解法の暗記だけでは対応できないことが多いので、発展的な問題にも積極的にチャレンジして思考力、応用力を鍛えておきましょう。尚、以前の入試では、甲状腺ホルモンの構造決定(2018)、アルガトロバン(抗凝固薬)の製造(2019)、テオフィリン(プリン塩基の一種)の誘導体の構造決定(最後の問4は解答不能)(2020)、フラグメントイオンのマススペクトルによる化合物の構造決定(2021)等々、制限時間内に解くのは至難の業と言える難易度の高い問題が毎年一題は出題されていたのですが、2022、2023年度の出題では、このレベルの問題は一題も無く、かなり解きやすくなった印象です。時間配分の練習を兼ねて全問制限時間内で解くのであれば、2022、2023年度の問題に限定して繰り返して演習すれば十分でしょう。もし、過去問演習で年度の古い問題に当たる際には、これらの問題は解けなくても合否には影響が無いと言って過言ではありません。あからさまに難易度の高い問題は極力避けて演習するか、時間配分の感覚を狂わされてしまう恐れがあるため、全問通しでは解かず、例えば小問集合の第1問のみを15分で解く、あくまで過去の出題例として標準レベルの問題のみを1題15分で解く、等々工夫して利用しましょう。
まとめ
というわけで、今回は国際医療福祉大学医学部の化学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
京都医塾ではご相談・体験授業を随時募集しています。下記リンクからお気軽にお問い合わせください。