京都医塾数学科です。
このページでは「北里大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“北里大学医学部”の受験を考えている方
・“北里大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
にオススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2023年度
形式: 【1】は空所補充、【2】【3】は記述
制限時間: 80分
配点: 150点 / 500点
北里大学医学部の数学は2010年度以降「80分・全3問:【1】(小問集合、空所補充)、【2】【3】(記述)」という形式が続いています。
出題の傾向と特徴(過去5年分)
【毎年恒例の出題単元】
証明問題が毎年出題されています。2022年と2020年は不等式の証明が出題されており、2019年の証明は一見すると極限の問題ですが、極限が収束することを示すために不等式を証明する必要があります。いずれも解き慣れた受験生から見れば典型的な出題ですが、初見で解くのは難しいため、きちんと対策を立てる必要があります。
また、数学Ⅰ「データの分析」は出題されないことが募集要項に明記されています。
【頻出の出題単元】
小問集合では複素数平面が毎年出題されており、その他には微分法・積分法、ベクトル、整数が頻出です。微分法・積分法は接線や面積・体積に関する問題が多く出題されています。
大問では場合の数・確率、微分法・積分法、極限が頻出です。これらは前述のとおり証明問題が絡んでくることもあり、難易度は軒並み高めとなっています。全体として「数学Ⅲ」からの出題が非常に多く、結果として計算量も多い傾向にあります。
また、場合の数・確率は漸化式と融合されて出題されることが増えてきています。
【制限時間に対する問題量】
80分で3問と、一見余裕のある時間設定ですが、小問集合の計算量が多く、大問では証明問題をはじめとして記述すべき量が多いため、全問きちんと解こうとするとかなりの処理能力が問われます。問題を見たらすぐに解法が浮かぶ程度に基礎知識を定着させておく必要があります。
2023年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 小問集合】(難易度:やや難)
(1)「8の6乗根」と「複素数平面における図形」の問題です。
終盤には「格子点」に関する設問もあり、盛り沢山の内容と言えます。
一見すると「初めて解く問題の連続」に見える可能性もあるため、複素数平面の典型問題を最短経路で解ける状態でなければ完答は難しいでしょう。
(2)領域内の点における2変数関数の最大値を求める問題です。
(オ)は \(\displaystyle \frac{x-y-1}{x+y-3}=k \)とおくことで「直線と円が共有点をもつ条件」に帰着できる標準的な問題です。
しかし後半の設問で同様の解法を選んだとき、(カ)では直角双曲線と円の共有点、(キ)では楕円と円の共有点を考える必要があり、難易度が急激に上昇します(特に(カ)では図形の考察が難しいため、円の媒介変数の考え方を活用する、といった考え方の転換が必要です)。
(3) \(A_{n}=(3+\sqrt{10})^{n}+(3-\sqrt{10})^{n} \) で定まる数列 \( \left\{ A_{n} \right\} \) に関する問題です。
前半2問の \(A_{2}\) , \(A_{3}\) を求める設問は簡単に求められます。
しかし、後半の \( \left\{ A_{n} \right\} \) の漸化式を作る設問は主に国公立大学の論証が絡んだ問題で出題されることもあり、経験の差が大きく影響すると言えるでしょう。
また最後の設問の「 \((3+\sqrt{10})^{111}\) の整数部分を10で割った余り」を求める問題では、\(A_{111}\) の整数部分の話に持ちこめるか、合同式を用いるなどして \( \left\{ A_{n} \right\} \) の漸化式から10で割った余りの規則性に気づけるかどうかなど「自力で解法をひねり出す」ことが必要で、完答は至難の業です。
(4)正の約数の個数に関する問題です。
(ⅰ)の具体例の計算を確実に得点するのはもちろん、(ⅱ)(ⅲ)は具体例を考えることで解法の糸口がつかみやすい問題であるため、少しでも多く正解したいところです。
(ⅳ)では互いに素な自然数 \(m,n\) について \(mn\) の正の約数の個数が \(m\) の正の約数の個数と \(n\) の正の約数の個数の積で表されることに気づけるかどうかがカギになります。
しかし、誘導となる設問がない中で自ら気づくのは容易ではありません。
≪2023年度の目標≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)の(ア)(イ)(ウ)、(2)の(オ)(キ)、(3)の(ク)(ケ)(コ)、(4)の(シ)(ス)(セ)を得点したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)の(ア)(イ)、(2)の(オ)、(3)の(ク)(ケ)、(4)の(シ)(セ)を得点したい。
【第2問 微分法】(難易度:難)
微分を用いて「(1)関数 \(f(x)\) の増減」、「(2)(3)方程式の実数解の個数」を調べる問題です。
一見すると解き慣れた標準問題に思えるかもしれません。しかし(1)では \( f'(x) \) の増減を調べるために \(f^{\prime\prime}(x)\) の正負を考察しなければなりません。
さらに、\(f'(4)\) を不等式で評価するために問題文で与えられた \(0.6<\log{2}<0.7\) を使うなど、国公立大学で出題される不等式証明で用いるような手法が必要になります。
(2)(3)でも関数の増減に加えて中間値の定理を用いて実数解の個数を確定させていくという細部の考察が必要となり、見た目よりも作業すべきことが多い問題です。
なお「(4)2曲線で挟まれた部分の面積」は(3)の結果を用いて2曲線の上下関係を調べることになりますが、「とりあえず定積分をして答えを出す」ことも可能です。
(1)から(3)で得点できないときも諦めずに最後まで問題に目を通し、解ける問題を探しに行くことも重要です。
≪2023年度の目標≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)に加え(4)の答えだけ求める。
他教科を得点源にしたい受験生…(4)の答えだけ求める。
【第3問 ベクトル・数列】(難易度:標準)
位置ベクトルの内分点の公式を繰り返し用いることで \(\mathrm{A}_{1},\mathrm{B}_{1},\mathrm{C}_{1},\mathrm{A}_{2},\mathrm{B}_{2},\mathrm{C}_{2},\mathrm{A}_{3},\dots\) の位置ベクトルを次々に求めることは可能です。
しかし、膨大な計算を扱うことになりますので、(2)の設問「\(\overrightarrow{p_{n+2}}\)を\(\overrightarrow{p_{n}}\)を用いて表せ」から「\(\overrightarrow{p_{n+2}}\)と\(\overrightarrow{p_{n}}\)は平行なのではないか」と疑ったり、図を描きながら「\(\bigtriangleup\mathrm{A}_{n}\mathrm{B}_{n}\mathrm{C}_{n}\) は正三角形だから…」といったように図形的性質に目を向けたりすることで計算を最小限に抑えなければ、以降の設問にかけられる時間は制限されます。
また(3)(4)はベクトルの列 \(\left\{ \overrightarrow{p_{n}}\right\}\) の奇数番目あるいは偶数番目の成分を求めるなど、慣れない式変形が要求されます。
決して後半の問題で正答に至るのも容易ではありません。
≪2023年度の目標≫
数学を得点源にしたい受験生…完答したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)、時間をかけてでも(2)を解答したい。
【総評】
解きやすい問題を見つけるのも難しい構成です。小問集合だからと言って決して典型的な問題だけが並んでいるわけではありません。問題を取捨選択できるだけの力をつける必要があります。また第1問(3)や第2問のように国公立大学等で要求される論述タイプの問題も出題されるため、これまでの学習で様々な種類の問題を経験しているかという経験値に左右される問題も多かったと言えます。また全体的に「計算量が多い」と言えますので、少しでも解きやすい問題を選び、選んだ問題は時間をかけてでも着実に正解することが求められるでしょう。
まとめ
今回は北里大学医学部の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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