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2024年度金沢医科大学医学部の物理過去問対策・分析

2024年度金沢医科大学医学部の物理過去問対策・分析

京都医塾物理科です。

このページでは「金沢医科大学医学部の物理」についての過去問分析コメントを紹介します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“金沢医科大学医学部”の受験を考えている方
・“金沢医科大学医学部の物理がどのような問題か知りたい”という方

オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2024年度

形式:マーク式(択一式。ほとんどの数値問題は各桁の数値をマーク)

時間:2科目90分

大問数:2題(年度によりばらつきが大きい)

配点:75点(1次試験全体の配点は350点)

出題の傾向と特徴

 2016年度以降の9年分について、分野別の傾向をまとめます。

【力学】

 毎年、1題は出題されています。出題テーマは

・「摩擦のある棒に通した小球の運動(2024)」

・「小球とばねにつながれた板との衝突(2023)」

・「なめらかな地面および円筒面に沿った小球の運動、重ねあわせた2つの直方体の運動(2022)」

・「小球につながれた摩擦のある斜面上での小物体の運動(2021)」

・「ゴムひもによる単振動 (2020)」

・「斜方投射、壁や水平面との衝突、(小)氷が受ける浮力(2019)」

・「(小)万有引力による地球の質量の導出、滑車や糸でつながれた物体どうしの運動(2018)」

・「(小)弧度法から度数法への変換、電車内での糸でつながれた物体どうしの運動(2017)」

・「直方体の静止条件(2016)」

です。

 これらから分かるように、幅広い単元から出題されています(2017年度と2018年度は、連続してやや似通った題材となりました)。教科書基本レベルの問題もありますが、ゴムひもによる単振動や、複数の物体が互いに力を及ぼしあいながら行う運動など、やや考察が複雑な問題も出題されています。

 なお、ゴムひもの特徴は、「自然長よりも長い場合にのみ、ばねと同じように弾性力を与える」というものです。そのため、自然長を境に運動を区切り、それよりも伸びているときは単振動、縮んでいるときはそれ以外の運動(2020年度の場合は重力のみを受けた等加速度運動)と、切り分けた考察が必要となります。学校で配られる教科書傍用問題集には類題の収録がない場合もありますので、過去問や別の問題集も使いながら、解法を一通り確認しておきましょう。

【電磁気】

 2017、2020、2022年度を除き、1題は出題されています。出題テーマは

・「ホール効果(2024)」

・「コンデンサーを含む直流回路(2023)」

・「(小)一様な抵抗棒、点電荷のつくる電場と金属球殻による遮蔽(2021)」

・「(小)電力量(2019)」

・「サイクロトロン(2018)」

・「RLC交流回路(2016)」

です。

 毎年、電磁気が出題されているわけではないため、一般的な大学の出題とは異なる傾向です。また、意図してのことではないと思いますが、ほとんどの大学で頻出となる電磁誘導の単元からの出題がありません。

 出題された問題の多くは、教科書基本レベルの知識を組み合わせれば解けますが、電力量の単位[kWh(キロワット時)]を問う問題については、知識がなくて答えられなかった人も多いと思われます。これについては、

   [W(ワット)]と[h(時間)]の積を取る (※ [h]は”hour”のこと)

と覚えておけばよいでしょう。すると、[k]が103(=1000)を、[W]が[J/s]を、1[h]=3600[s]を表すことから

   1[kWh]=103[J/s]×3600[s]=3.6×106[J]

となります。

【波動】

 2019、2023、2024年度を除き、1題は出題されています。出題テーマは

・「2つの単振り子によるうなりの発生、薄膜干渉(2022)」

・「(小)空気中の音速、(小)弦の共振(2021)」

・「水面波の干渉(2020)」

・「(小)真空中の光速、(小)凹レンズ (2018)」

・「(小)正弦波の式、(小)ドップラー効果、虹の原理(2017)」

・「(小)うなり、(小)薄膜干渉(2016)」

です。

 2017年度(虹の原理)、2020年度(水面波の干渉)、2022年度(2つの単振り子によるうなりの発生)は、典型からもやや逸脱した難易度の高い問題でした。一方で、それ以外の問題については、教科書の基本的な内容を踏まえて正答できます。特に、空気中の音速Vや、真空中の光速cは、どの教科書にも太字で書かれており、それぞれ

              V=331.5+0.6t [m/s] (V[m/s]:空気中の音速,t[℃]:セルシウス温度)

              c=3.0×108 [m/s] (c[m/s]:真空中の光速)

です。重要な知識なので、必ず確認しておきましょう。

【熱力学】

 2017、2020、2022、2023、2024年度を除き、1題は出題されています。出題テーマは

・「シリンダー内の気体の状態変化、液体中に沈めた容器内の空気の状態変化 (2021)」

・「ヒーターによる氷や水の加熱(2019)」

・「pVグラフで表された熱サイクル(2018)」

・「(小)外部に開かれている容器内の空気の状態変化(2016)」

です。

 気体の分子運動論こそ見受けられませんが、それ以外の幅広い単元から出題されています。中でも、液体中に沈めた容器内の空気の状態変化は、多くの受験生が苦手とする題材です。浮力が「その物体が排除した流体に働く重力と同じ大きさで逆向きになる」ことや、深さhでの液圧p

    p=p0+ρgh (p[Pa]:水圧,p0[Pa]:大気圧,ρ[kg/m3]:液体の密度,g[m/s2]:重力加速度,h[m]:深さ)

となることなどは、このような題材を解くために必須の知識となります。教科書で確認しておきましょう。

【原子物理】

 2020、2021、2022、2023、2024年度を除き、1題は出題されています。出題テーマは

・「放射性同位体・放射線、(小)中性子を構成するクォーク(2019)」

・「(小)クォークの電荷、核反応式(2018)」

・「(小)半減期、光電効果(2017)」

・「(小)原子核の構成核子、コンプトン効果(2016)」

です。

 これらから分かるように、幅広い単元から出題されています。原子物理は解法がワンパターンな題材が多く、例えばコンプトン効果であれば、「エネルギー保存則」と「運動量保存則」の2式を連立すれば解くことができます。手持ちの問題集(または教科書傍用問題集)を元に、解法の流れを一通り確認しておきましょう。

 また、2018年度と2019年度は、素粒子(クォーク)に関する知識が問われました。多くは教科書基本レベルですが、最後の単元の素粒子まで満遍なく学習しておく必要があります。教科書を最後まで通読して、できる限り知識を詰め込んでおきましょう。

【制限時間に対する問題量】

 2024年度は2科目90分で大問2題を解答する必要がありました。1科目45分と考えると、大問1題あたりの時間は22.5分となります。したがって、思考に使える時間は十分にあります。基本的な知識の徹底と、反復演習による解法の定着が、高得点を取るためには非常に効果的と言えるでしょう。

2024年度(最新の過去問)の分析

 さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。

※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。また、問題の分析は、教学社から出版されている「赤本」の収録問題のみについて行います。

【第1問】 

 ホール効果を題材とした問題です。教科書通りの導出過程を問われています。特にひねられた設問はないため、完答が望まれます。ただし、[mm]や[μm]など接頭辞の異なる単位が混在しているので、これらを換算する際には注意が必要です。教科書や基本的な問題集を用いて、導体試料内のキャリアの数密度やホール電圧を何も見ることなく導出できるようにしておきましょう。

≪2024年度の目標値≫

物理を得点源にしたい受験生…9~10割

他教科を得点源にしたい受験生…8~10割

【第2問】 

 摩擦のある棒に通した小球の運動を題材とした問題です。小球は棒に貫かれていますが、基本的には摩擦のある斜面上に置かれた状況と同様に考えることができます。[Ⅰ](1)は、小球が滑り出す条件から求めます。(2)は、摩擦力の仕事をその定義から求めます。その後で、点Oに達したときの速さを、仕事とエネルギーの関係から求めます。

 [Ⅱ]からは問題設定が少し変わり、傾けた棒を回転させます。(1)は円運動の半径を求め、向心力F=mrω2の式に代入し、求めます。(2)は、小球とともに回転する観測者から小球の運動を考察するとよいでしょう。この観測者から小球を見ると静止しているため、(1)で求めた向心力の大きさを遠心力の大きさとして、力のつりあいを立式します。その後で、摩擦力がはたらかないという条件から、重力と遠心力の関係を求めます。(3)は、角速度ωが小さすぎると棒に沿って下向きに、大きすぎると棒に沿って上向きに滑り出すことから、最小のωと最大のωを求めます。それぞれの場合について、摩擦力の向きに気をつけつつ、考えるとよいでしょう。

≪2024年度の目標値≫

物理得点源にしたい受験生…9~10割

他教科を得点源にしたい受験生…8~10割

【総評】

 2020年度から2科目120→90分となり、大問数が4→2題に変更されたため、それに伴って急激な難化を見せました。しかし、2021年度は大問数が5題と大きく増え、その代わりに難易度は大幅に易化しました(2019年度以前に近づいた印象を受けます)。そして、2022年度以降は大問数が再び2題に戻り、難易度も基本~標準レベルに落ち着いてきています。

 また、以前からのことではありますが、題意のつかみにくい問題もしばしば出題されています。そのため、解きやすい問題を確実に取り切る基礎力を身につけた上で、試験時間いっぱいまで粘り強く思考できる力を鍛えていきましょう。

まとめ

というわけで、今回は金沢医科大学医学部の物理についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

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