京都医塾生物科の小林です。
生物の入試問題におきましては最新のトピックスからの出題も見られます。予め見聞きして理解している内容の出題であれば自信を持って強気に解き進められますし、得点的にもアドバンテージとなり得ます。教科書内容をしっかりと理解しておくことが最重要であることはもちろんですが、余裕があればこういったトピックスも押さえておきましょう。
そこで最新の研究の中では最も出題される可能性の高いであろう今年度のノーベル生理学・医学賞をご紹介させていただきます。日本人の功績があった場合と比較すると出題頻度は落ちますが、刺激の受容は高校生物の範囲内ですので今後の入試で出題される見込みは大いにあると思います。
2021年のノーベル生理学・医学賞は「温感」および「触覚受容体」を発見した功績で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジュリアス氏、米スクリプス研究所のパタプティアン氏に授与されました。受験生の皆様におかれましては発見に至った実験の組み立てを理解していただけますと幸いです。
温感受容体について
ジュリアス氏はトウガラシの辛み成分であるカプサイシンの受容体を特定し、これが痛みや熱を感じ取るセンサーとして機能する仕組みを解明されました。
「辛み」は味覚ではなく、痛みや熱、酸などによるいわゆる「刺激」であるということは有名な話で、ご存じの方もおられますよね。
ジュリアス氏は痛みや熱に反応する神経細胞で発現している遺伝子を調べ、培養細胞で1つずつ過剰発現させてカプサイシンに対する細胞の応答を調べた。
「TRPV1」と呼ばれる膜タンパク質が活発に応答し、これにカプサイシンが結合することでナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞内に流入し、活動電位が発生することを明らかにした。
実験的にはたいへん読み取り易い対照実験ですね。
さらにTRPV1はカプサイシンがなくても43℃を超える熱刺激においても活性化することを示し、痛みのセンサーであるとともに熱のセンサーとしても機能することがわかった。
鎮痛剤などの医薬品への応用が期待されます。
触覚受容体について
パタプティアン氏は触覚をつかさどる機械的な刺激の受容体を発見されました。
機械刺激を受けて興奮する細胞から機能が未知であった遺伝子をしらみつぶしにノックダウンし、反応が低下するものが2種類見つかりました。その内の一方「PIEZO2」をノックアウトしたマウスを作成し、これが皮膚感覚を欠如していたことからPIEZO2が皮膚の触覚を担うセンサーとして働くことがわかりました。
皮膚や臓器の変形に伴ってPIEZO2も変形し、中央のイオンチャネルが開き、活動電位を生じさせるという仕組みにより機械刺激を受容します。
ノックダウンやノックアウトといった操作は大学入試でも頻出ですよね。発現量を低下またはなくした際の変化により遺伝子の働きを考察するのが目的です。
こちらも医薬品や医療での応用が期待されます。
まとめ
今回は 今年度のノーベル生理学・医学賞をご紹介しました。生物の入試問題におきましては最新のトピックスからの出題も見られます。予め見聞きして理解している内容の出題であれば自信を持って強気に解き進められますし、得点的にもアドバンテージとなり得ます。教科書内容をしっかりと理解しておくことが最重要であることはもちろんですが、余裕があればこういったトピックスも押さえておきましょう。
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