京都医塾化学科の安達です。
今回は、水素水に水素は本当に溶けているのか??についてお話します。
巷では水素水なるものが売られているのを目にしたことがある方もいると思いますが、この水素水について、高校で習う化学の知識を使って「どのくらい水素が溶けているのか」を考えてみたいと思います。
そもそも水素水って?
調べたところ、水素水というのは「水素分子が高濃度で溶けている水」とのことでした。かなり抽象的ですが、どうやら公的な定義はないようです。市販されている水素水の水素溶存濃度はさまざまのようですが、一つのサンプルとして水素水1L中には「0.0008 g」の水素が含まれているというものを発見しましたので、これについて以下の話は展開されているものと考えてください。
水素って水に溶けるの?
まず、高校化学の序盤で習う知識を適用してみましょう。物質が水に溶ける条件は以下の3点のうちいずれかを満たすことです。
➀極性をもつ ②電離する ③水自体と反応する
水素は単体であり、無極性分子です。また、電離もしませんし、水との反応も起こしません
(というか反応して別の物質になってしまったらそれはもはや水素水ではありませんし)
ということで、この時点で水素水と呼ばれるものが本当に作れるのか怪しくなってきました。
ヘンリーの法則を考えてみる
上記のように水素は水に溶ける物質とは言い難いです。とはいえ、こちらも高校化学で習うヘンリーの法則を使う場面では、水にあまり溶けない気体を取り扱います。これを用いて、水素水とやらには、どのくらい水素が溶けているのかを考えてみましょう。
ヘンリーの法則を用いた計算
まずヘンリーの法則とは「(一定温度、一定量の水に)溶ける気体の量は、その気体の分圧に比例する」というものです。これを使って我々が生活している「1気圧、20℃」で1Lの水に溶ける水素の量を計算してみましょう。
まず、基準として1気圧20℃では「0.00163 g」の水素が溶けるというデータがあります。ここで気を付けなければならないのは、このデータは充満している気体が全て水素の場合である、ということです。水素水の容器のふたを開ければ、周囲は普通の空気なので、ヘンリーの法則の定義にあるように水素の「分圧」を考える必要があります。そこで、空気中の水素の割合を考えてみましょう。Wikipediaによると、水素は体積比で「0.00005%」含まれているとあります。これを使うと水素の分圧は
1気圧 × 0.00005/100 = 0.0000005気圧
これより、1気圧20℃において水素は水に
0.00163 g × 0.0000005 = 0.0000000008 g(0.0008μg)
「0.0000000008 g」溶けているとなります。
まとめ
いかがだったでしょうか。サンプルの数値からは大きく減少したように感じますが、この数値を多いと思うか、少ないと思うかは人それぞれです。ただ、何も考えずに選択するよりは、きちんと考えた結果をもって選択をすることが、高度に情報化された社会の中で生きていくときには、より良い選択ができるのではないかと思います。
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