京都医塾生物科の井崎です。この記事は、<酸素解離度の公式>の第3回(最終回)です。ここまでの記事をまだ読んでいない方は、第1回の記事から読まれることをお勧めします。
では第2回で考えた、「2種類の異なる発想法」に基づく「タクシー会社の客の輸送効率」を再確認しておきましょう。タクシーの例えの延長線で言えば、「世知辛い発想」に基づく①式と、「共同体主義的な発想」に基づく②式でしたね。
医学で使われる「酸素輸送効率」の発想は、①式です。②式ではなく①式を使う理由は、「現実の体の中では酸素ヘモグロビンの割合は100%にはならないので、分母を95%で計算した方が臨床現場では楽だし速いから」です。
上では「①式は世知辛い発想」と書きましたが、これは初学者に印象深く理解してもらうための擬人的表現であることに留意してください。
体の中で酸素ヘモグロビンの割合が100%にならない理由は、「そんなに結合力が強いと逆に解離しにくくなり、酸素の運搬量がかえって下がってしまうから」です。
しかし、血液は採血によって簡単に体外に取り出せますから、「血液をビーカーか何かに入れて酸素分子O2を吹き込み、「酸素ヘモグロビンの割合」を強制的に100%にすることも可能」ではあります。このような実験で得られた数値を使う場合は、②式を使います。
なので入試では、①式を使う問題と②式を使う問題のどちらも出題されます。ですから、これらの式の区別ができていないと正答出来ない、ということです。
では最後に予備校のブログらしく、解いてみましょう(第1回の記事で出題した問題を再掲します)。
(立式が終われば、数値計算には電卓を使ってもらって構いません。ここでの主眼は「間違いなく四則計算を実行できる能力」を養ってもらうことではなく、「式を立てる力」と「立てた式の意味を理解する力」を養ってもらうことなので。)
【問題1】
肺の血液100(mL)中に酸素が20(mL)含まれる時、100(mL)の血液が組織で放出する酸素量(mL)を求めよ。ただし、「酸素ヘモグロビンの割合」は肺で95%、組織で30%とする。
【問題2】
ヘモグロビンは血液100(mL)中に15(g)存在し、1(g)のヘモグロビンは最大で1.4(mL)の酸素と結合できるとすると、100(mL)の血液が組織で放出する酸素量(mL)を求めよ。ただし、「酸素ヘモグロビンの割合」は肺で95%、組織で30%とする。
********** 解けたら、以下の解答を見て下さい **********
ちなみに、上記の式変形の分子の部分は、
となっています。
というわけで酸素運搬の計算問題では、「①式か②式のどちらを使うべきか」を、問題文を注意深く読んでから判断しましょう。 ちなみに、上記の問題解説では全ての数値に単位をつけていますが、こうすることで「何の計算をしているのか」がよく分かります。理科の計算では全ての数値に単位をつけることを強くお勧めします。このような計算の工夫に関する記事もそのうち書きたいと考えており、「他日を期す」ということにしたいと思います。
まとめ
今回は、生物の<酸素解離度の公式>についてまとめてみました。
酸素運搬の計算問題で立式する際に、「分母に95(%)や98(%)などではなく100(%)を入れる場合があること」が理解いただけましたよね。
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