京都医塾物理科の馬渕です。「物理の得点につながる図とは何か」の後編になります。
物体ごとに力を描図する
これは以前のブログ記事「適切な力の描図」で詳しく触れましたが、力学において現れる力を
① 重力
② 触れているものから受ける力
の2つに分け、このルールに沿って力を過不足なく描き込んでいこうということです(慣性力はここでは除きます)。
ただ、力の描図そのものは多くの方が実践されているかと思うので、今回は別の観点からそのコツを伝授したいと思います。それは「物体の数だけ図を描こう」ということです。前編と同じ、以下の問題を例に説明していきます。
例題
この問題では、A と B のそれぞれに対して鉛直方向の力のつりあいの式と水平方向の運動方程式を立てることになるので、A と B に働く力をそれぞれ描き込む必要があります。ここで、1つの図にすべての力を描き込むと、以下のようになります。
いかがでしょうか?これで「正しく」立式するというのは、至難の業に思えます。いったいどの力が A と B のどちらに働いているのか、とても分かりにくい図になっていますね。
そこで、今度は全く同じ状況について、A と B に働く力を、それぞれの物体ごとに描き分けていきます。
A と B をきちんと区別すれば、一目で様子が分かりやすくなります。これで、式も随分と立てやすくなりましたね。このような隣接する 2 物体などは、特に力線が込み入ってくるので、基本的には着目物体の数だけ図を描くようにしましょう。
※ ただし、上級者のために添えておくと、敢えて 2 物体を区別せずに力を描く方がよい場合も有り得ます。そういった場合分けについても、京都医塾の授業では明確な基準を示しながら詳しく解説します。もっと物理を得意にしたい方は、ぜひ京都医塾の授業で学び取ってください。
状況の変化を考える場合は、「変化前→途中→変化後」を描く
物理では、運動を始めとする様々な現象の変化を追いかけることが、その分析の基本となってきます。その際には、具体的な変化の様子がイメージできるように、「変化前→途中→変化後」と 3 つの図を描くことを心がけましょう。先ほどの例と似ていますが、以下の問題を例に説明していきます。
例題
この問題であれば、「変化前→途中→変化後」として、「A に初速度 v0 を与えた瞬間→A がB 上を滑っている途中→A が B に対して静止した瞬間」の 3 つの図を描くとよいでしょう。すると,以下のようになります。
縦に並べるのも、変化(ここでは変位)を見やすくするコツです。このように図を描くことで、求めるべき「A が B 上を進んだ距離」とは、「A と B がそれぞれ床に対して滑った距離の差」であることが、一目で分かりやすくなります。
また、変化の初めと終わりは、特殊な状況になることが多々あります。そのため、力の描図は途中の図に行うとよいでしょう(ここでは割愛しています)。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今まで漫然と図を描いていた(もしくは一切描いていなかった)という方は、これらのポイントを押さえた「得点につながる図」を描く練習をしてみましょう。
京都医塾では、問題を演習する際に、上記のような観点で積極的に作図を行い、現象を具体的にイメージできること、そして極力ミスを減らすことが可能となるように指導しています。今回の記事では紹介しなかった図に盛り込むべきこと、解法などもまだまだあります。気になる方はぜひ京都医塾の授業を受けてみて下さい。作図は、一朝一夕で上達するものではありません。日々コツコツと練習し、様々な意味で自分を助けるための図を描く実力をつけていきましょう。
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