こんにちは、英語科の佐々木です。
この記事では、英語の長文問題に役立つ隙間時間の活用法について、ちょっとした考えを紹介したいと思います。特に、医学部の入試問題には、難解な内容の長文を(しかも複数!)課してくる大学がありますが、そうした問題に対処するための一つの案についてです。
埼玉医科大学の問題を用いて考えてみる
さて、そのような入試問題を課す大学の典型例として、埼玉医科大学を挙げることができます。例えば2021年については、全部で大問が5つありますが(制限時間70分)、内訳は、大問1のみ文法・語彙の問題で、残る大問2~5は全て長文読解問題です。大問1の文法・語彙問題は難易度としては高くはなく、実質的には残りの長文問題が勝負となります。それら長文問題は内容的には多様で、分量が少ないものもあるとはいえ、制限時間に対して問題文の数は多いと言えます。
それぞれの問題文の内容は、「平均寿命の伸びと国別の変化」、「気分は主張の評価に影響を与える」、「小説におけるポリフォニーの概念」、「脳外科医の死への関わり方の変化」となっており、中身も多彩と言えます。今回ここで取り上げたいのは、その中の大問4「小説におけるポリフォニーの概念」です。というのも、日ごろ見ている受験生の中でも圧倒的に評判が悪い類のテーマで、その意味ではこうしたテーマに強くなれば受験で優位に立てると考えられるからです。とはいえ、ここで言っておきたいのは、あくまでそうした分野に慣れておくためのコツのようなものです。
まず、具体的に問題の一部を見てみると、次のような一文から二つの問題が構成されています。
“…the multiple ideological perspectives are granted ( 29 ) validity within the text; this free play of discourses precludes the dominance of any point of view, including that of the author.”
(29)については、該当する語を、privileged, equal, merged, musicalから選択させる問題です(正解は赤字)。また、下線部については同義語を、encourage, promote, prevent, includeから選ばせる問題です。正解の単語を入れると、訳文は「小説の中では、複数のイデオロギー的な視点に対等な正当性が与えられる。(小説の中の)会話をこのように束縛されないものとすると、著者の意見も含めて、いかなる意見も優勢になることが不可能になる(排除される)。」となります。
とても難しく見えますが、要は「小説中のどの登場人物の意見も対等なままの状態である」というほどの意味です。もし「ポリフォニー」について少し知っていれば、これを読み取るには、実は問題文中のいくつかの単語(perspectives, validity, dominanceなど)を知っているだけで十分で、問題を解くのにもそれほど時間と労力を必要としません。
隙間時間で知識を身に着けよう
では、「ポリフォニー」の知識をどのように身につけるのか?一つは、こうした問題に出会った際には赤本などの訳文を読むことです。別の方法は、こちらの方が簡単ですが、その言葉をネットで検索することです。「ポリフォニー」は文学では非常に有名な概念で、必ず解説が見つかります。入試問題で出てくるテーマは、どのような分野であれ、概ねその分野の基本的な概念やテーマです。そこで、受験勉強の際に全く馴染みのない難解(そうな)トピックに遭遇した場合には、それについて少し調べておくとよいというわけです。気負う必要はありません。勉強の合間の息抜きとして検索するだけです。しかし、繰り返しコツコツ続けておけば、やがて様々な分野について知識が身につき、それが後に読解問題で力を発揮することになるでしょう。
おわりに
もちろん、医学に関係の深いテーマの長文問題もきちんとできなければ意味はありません。例えば図表を読み取る問題や、実験を含む論説文などは、医師を目指す生徒にとっては必須の内容であり、必ず得点できなければならないでしょう。そうした「本筋」の学習の合間に気分転換として、上のような勉強をお勧めしておきます。うまくいけば一石二鳥ではないでしょうか。