京都医塾物理科です。
このページでは「昭和大学の物理」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“昭和大学医学部”の受験を考えている方
・“昭和大学医学部の物理がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式:記述式
時間:2科目140分
大問数:4題
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)
出題の傾向と特徴
2016年度以降の7年分について、分野別の傾向をまとめます。
【力学】
毎年、1題は出題されています。出題テーマは
・「地球のまわりを周遊する人工衛星(2022)」
・「月による潮汐力(2021)」
・「ある惑星における重力加速度の測定、空気に対する推進エンジンの仕事(2020)」
・「空気抵抗を考えた鉛直投げ上げ(2019)」
・「円錐の内側表面における円運動、超高速で自転する天体の密度の導出(2018)」
・「モンキーハンティング(2017)」
・「実験値から推測するケプラーの第3法則(2016)」
です。意図されてのものかわかりませんが、天体や万有引力に関する出題が多く目立ちます(2016, 2018, 2020, 2021, 2022)。大きな特徴として、教科書では直接扱わないような現象や、その場で与えられた実験における測定結果といった未知のものを題材として、そこに隠れている理論を推定させるといった問題構成が好まれています。パターン暗記では対応できないため、粘り強い思考力が重要となってきます。
【電磁気】
2022年度を除き、毎年1題は出題されています。出題テーマは
・「一様磁場中における導体棒の回転運動(2021)」
・「自己誘導・相互誘導(2020)」
・「コンデンサーの過渡現象における時定数の導出、非線形抵抗(電球)を含む直流回路(2019)」
・「ダイオードを含む直流および交流回路(2018)」
・「電磁調理器の仕組み、コンデンサーを含む直流回路(2017)」
・「電流がつくる磁場からコイルが受ける力、平行板コンデンサー(2016)」
です。上記の通り、題材は様々なものから出題されています。難易度は様々であり、典型的かつ基本的な出題も多い一方で、2019年度の時定数の導出などは、一度でも微分方程式から理論導出を行った経験があるかどうかで出来が大きく分かれる発展的な問題でした。
【波動】
2016年度以降の7年間で、5題出題されています。出題テーマは
・「くさび型空気層における光波の干渉(2022)」
・「ドップラー効果(2021)」
・「凸レンズと凹面鏡を組み合わせてつくる像(2019)」
・「薄膜干渉(2018)」
・「光ファイバー(2017)」
です。5題中4題は光波に関する現象(2017, 2018, 2019, 2022)であり、頻出となっています。ただし、いずれも典型的な題材であるため、基本に忠実に解き進めれば高得点が望めます。徹底した基礎問題の反復演習が、得点に結びつきやすいと言えるでしょう。また、現象そのものの仕組みについても、教科書などを通してきちんと理解しておきましょう。
【熱力学】
2016年度以降の7年間で、5題出題されています。出題テーマは
・「球形容器内の気体の分子運動論(2022)」
・「4室の気体の混合と状態変化、分子運動から考えるヨーヨー風船のしぼみ(2021)」
・「p–Vグラフにおける熱サイクル(2019)」
・「様々な物質の体膨張(2017)」
・「2室の気体の混合(2016)」
です。典型題も多い一方で、2017年度の様々な物質の体膨張についての問題や、2021年の分子運動からヨーヨー風船のしぼみを考える問題など、高い思考力が必要なものも出題されています。熱力学の学習は、ともすると公式のパッチワークに陥りがちですが、このような問題に対応するためには現象そのものに対する定性的な理解が重要となってきます。教科書などを通して、可能な限り理解を深めていきましょう。
【原子物理】
2016年度以降の7年間で、3題出題されています。出題テーマは
・「電子線によるブラッグ反射(2022)」
・「電磁波の性質・X線の発生(2020)」
・「崩壊速度による半減期の式の導出(2018)」
です。2020年度と2022年度は典型的かつ基本的かつですが、2018年度の崩壊速度による半減期の式の導出は、微分方程式からの理論導出が要求されています。これも時定数の導出と同様に、経験の有無で出来が大きく分かれる発展的な問題でした。
【制限時間に対する問題量】
2022年度は2科目140分で大問4題を解答する必要がありました。1科目70分では、大問1題あたりの時間は17~18分となります。記述式ではあるものの、近年は煩雑な計算が要求される問題が少なくなったため、それほど時間制限は厳しくありません。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】
地球のまわりを周遊する人工衛星を考察する問題です。半短軸の導出は、物理ではなく数学の問題と言えますが、それ以外はすべて典型的かつ基本的です。楕円軌道の周期は、円軌道のそれと比較してケプラーの第3法則から導出しますが、類題演習が十分であれば難なく解けると思います。そのため、完答が望まれます。
≪2022年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…8~10割
他教科を得点源にしたい受験生…7~8割
【第2問】
球形容器内の気体の分子運動論を考察する問題です。設問構成も含めて極めて典型的かつ基本的であり、躓くポイントはありません。結論として、1分子あたりの平均運動エネルギーが3kT/2となることも、常識にしておきたいところです。本問も、完答が望まれます。
≪2022年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…10割
【第3問】
くさび型空気層における光波の干渉を考察する問題です。こちらも典型的かつ基本的であり、平易に解き進められます。そのため、やはり完答が望まれます。
≪2022年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…10割
他教科を得点源にしたい受験生…8~10割
【第4問】
電子線によるブラッグ反射を考察する問題です。考察そのものは平易ですが、後半の数値計算がやや煩雑です。そのため、計算力で大きく得点が分かれたものと思われます。
≪2022年度の目標値≫
物理を得点源にしたい受験生…7.5~10割
他教科を得点源にしたい受験生…5~7.5割
【総評】
例年、難易度は基本~やや難と幅広い大問で構成されており、難しいものでは思考力・計算力ともに標準以上のレベルが要求されます。そのため、他大学に比べて解答時間が1科目あたり70分と長いものの、時間的な余裕はありません。また、高校物理の教科書内容を超えた出題も見られるため、普段の演習を通してその知識に触れておかなければ、初見で対応することは厳しいと思われます。他、グラフの描図や現象の定性的な説明を求められる設問も、毎年のように出題が見られます。そのため、高いレベルで、物理としての総合力が試される大学です。
しかし、2022年度は、4つの大問すべてが典型かつ基本的な出題となりました。2022年度のみならず、その前年度となる2021年度から大幅な易化傾向が続いています。そのため、オーソドックスな問題を高得点で争う勝負に切り替わってきており、今後の動向にも注意が必要です。
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