京都医塾数学科です。このページでは「昭和大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“昭和大学医学部”の受験を考えている方
・“昭和大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】
形式:答のみの記述回答
制限時間:英数合わせて140分(実質70分)
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点)
昭和大学医学部の数学は(実質)70分・答のみ回答という形式が続いています。
大問数については、近年は4問が続いています。ただし、小問集合のような形式の出題が頻繁にあり、大問の数以上に分量が多く感じてしまう受験生も多いでしょう。
出題の傾向と特徴(5年分)
形式に加え、2017年度以降の5年分についての傾向をまとめます。
※この記事では、一般入試Ⅰ期のみを分析の対象とします。
【頻出の出題単元】
大きな特徴として、(医学部に限らず)多くの大学が出題範囲から除外されている数学Bの「確率分布と統計的な推測」という単元が頻繁に出題されていることが挙げられます。
この単元の中でも、特に期待値に関する問題が毎年のように出題されています(5年中4年)。
「確率分布と統計的な推測」という単元の想像がつかない方は、共通テスト数学ⅡBの第4問をイメージすると良いでしょう。
(多くの高校ではこの単元を学習する機会が無く、参考書等でも省略されている場合があります。)
昭和大学医学部を第一志望とする受験生は、この単元の対策を念入りにしておきましょう。受験を検討している受験生は、期待値だけでも触れておく価値はあります。
その他、複素数平面の出題頻度が比較的高い(5年中4年)ことも、特徴として挙げられます。
【制限時間に対する問題量】
実質70分で4問と聞くと、そこまで時間に追われるタイプの試験では無いと感じるかもしれません。
しかし、「概要」でも述べたように、大問の中で独立した問題が並んでいる事が多く、見た目以上に忙しい試験になっています。
計算量がやや多い事を考えると、英語が手早く片付けられる受験生であれば、数学に少し時間を回す事も検討できるでしょう。
2021年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 図形と方程式】(標準~やや難)
ある弦で対称に移動させた円を与え、最終的には特定の条件を満たす弦の通過する領域を考えさせる問題です。
「円と直線の位置関係(接する条件)」・「円と直線の2交点間の距離」・「2円の2交点を通る直線(円束)」・「通過領域」と言った、この単元の典型的な問題が詰まった問題であり、しっかりと学習を重ねてきた受験生であれば方針設定に困ることはあまりないでしょう。
しかし、状況設定が文字情報のみであり、自力で図示した上で上記の処理を進めていく事になり、時間が大きく取られかねません。
また、(4)において「通過領域」→「実数解の存在条件を立てる」と進められても、条件処理が煩雑になっており、最後まで解き切るためには根気よく作業する必要があります。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…できれば(4)にも手を出したいが、(3)まで解いて次に進むのもあり。
他教科を得点源にしたい受験生…(3)まで取り切る。
【第2問 整数3問】(やや易)
各々独立した問題3つで構成されています。
(1):8の倍数となる条件
(2):式の値が1となるような底・指数の条件
(3):条件を満たす2つの自然数の組を全て発見する
(1)に関しては、「下3桁に着目」という知識が知られています。
(2)に関しては、「両辺を2乗する」という変形をすると落とし穴にはまってしまう事に気を付ければ、丁寧に条件を整理していくだけで問題なく解けます。
(3)に関しては、( 2のn乗 ) と自然数を足して1000になることから、nが8以下であることに着目すれば、地道に調べていくだけで良いことに気付けるはずです。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…できれば完答したいが、(2)で戸惑ってしまった場合は後回し。
【第3問 確率・微積分】(やや易~標準)
独立した2問それぞれに小問が2つあります。
(1):くじ引きに関する確率
(2):円と放物線で囲まれる図形の面積・回転体の体積
(1)に関しては、教科書練習問題レベルの問題であり、特に難しいところはありません。
(2)に関して、面積についてはy軸方向で考える方が効率が良い事に気付けるか、回転体の体積についてはいわゆる「バームクーヘン分割」を活用できるかで処理量に差がついてしまう所はありますが、この分野の典型的な問題であるため、計算ミスに注意すれば十分解き切れる問題です。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。(2)は効率よく解いて、他の大問に時間を回したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)は完答。(2)の体積計算は時間がかかってしまうので、捨ててしまうのもあり。
【第4問 座標空間上の図形の体積・確率(期待値)】(標準)
この大問も、独立した2問にそれぞれ2つずつ小問があります。
(1):曲面と平面で囲まれる図形の体積
(2):コインを投げるゲームの勝敗とその賞金の期待値
(1)に関しては、1つ目の小問である楕円の面積が誘導になっており、立体の平面 z= ( 定数 ) における断面が楕円になっている事に気付ければ、断面積を積分して体積を求める事が出来ます。ただ、「回転体の体積はたくさん演習したけど、断面積を積分するタイプはあまり経験が無い」という受験生も少なくないでしょう。差がつく問題とも言えます。
(2)に関しては、【頻出の出題単元】でも挙げた通り、この大学で頻出の出題分野になります。期待値についての知識があれば、特に難しいところはありません。志望順位が高い受験生は必ず確保したい問題になります。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)の2問目は手が止まるなら後回し。(2)は対策さえしていれば完答は容易。
他教科を得点源にしたい受験生…対策の上、 (2)は確保。
【総評】
4年連続で出題されていた複素数平面が無いという変化はありましたが、小問の多用や期待値の出題など、例年通りの出題傾向が維持されている所も目立ちます。
全体の難易度としても、前年度から大きな変化はなく、過去問演習などで対策していた受験生にとっては取り組みやすい試験でしょう。
まとめ
この大学特有の出題がありますが、全体を通してみれば受験数学における典型問題が大半であり、難問・奇問の類はほぼありません。
どのような事態に遭遇しても落ち着いて対処できるように、時間の使い方や解くべき問題の取捨選択の戦略も立てられるように練習しておきましょう。
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