今回は方程式の解の公式の話です.
2次方程式の解の公式
2次方程式 \(\displaystyle ax^2+bx+c=0\) (\(\displaystyle a\neq0\))の解は
\(\displaystyle x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}\)
と表される.
Wikipediaによると,エジプト中王国の時代(紀元前2050年から紀元前1650年ごろ)まで遡るそうです.当時は数をアルファベットで表したり,根号 はありませんでしたから,どのように伝わっていたのか気になるところです.しかも, 負の数は17世紀まで認められて,いなかったんだって!
さて,3次方程式のときはどうなるでしょうか?
3次方程式の解の公式
3次方程式 \(\displaystyle ax^3+bx^2+cx+d=0\) (\(\displaystyle a\neq0\))の解は
\( \displaystyle x=-\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}+\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}}-\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}-\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}} ,\\ \displaystyle -\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}+\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}} \omega -\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}-\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}} \omega^2 ,\\ \displaystyle -\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}+\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}} \omega^2 -\sqrt[3]{\frac{-\frac{9d}{a}+\frac{3bc}{a^3}-\sqrt{81 \left( \frac{d}{a}-\frac{bc}{3a^2} \right)^2 +12\left( \frac{c}{a}-\frac{b^2}{9a^2} \right)^3 } }{18}} \omega \)
と表される.ただし, \( \omega \) は \( x^2+x+1=0 \) の解の1つとする.
もちろん,上記の公式を覚える必要はありませんし,覚えていても因数定理を用いた方が絶対ラクです.実際は公式の「形」ではなく「手順」を覚えて解を求めます.この手順を <タルタリア・カルダノの公式> と呼びます.手順を紹介する前にこの公式に関わった人たちを何人かをWikipediaに基づいて紹介しましょう.
- ニコロ・フォンタナ・タルタリア(1499?-1557)
イタリアの数学者.よく「タルタリア」と呼ばれているが, 実際はあだ名.「それでも地球は回っている」のガリレオ・ガリレイはタルタリアの孫弟子.(この台詞もちょっと怪しい)
・ジェロラモ・カルダーノ(1501-1576)
イタリアの人物(数学者なのかな?).3次方程式の解の公式を公表した人.医者だったり, 賭博者だったりなんか怪しい感じ.
当時イタリアでは数学の問題を出し合って,より多くの問題を解いた方が勝ちという数学試合がおこなわれていたそうで,タルタリアは <3次方程式の解の公式> を知っており,数学試合で有利であった. カルダーノはタルタリアから「誰にも公表しない」という約束で公式を聞いたのだが,後日「偉大なる術(アルス・マグナ)」を著し解の公式を発表しました.
このことから3次方程式の解の公式は「カルダーノの公式」と呼ばれていました.その後,数学史の研究が進むにつれて「ほんまはタルタリアが先に発見してたんだ!」と知られて, <タルタリア・カルダノの公式> と呼ばれるようになりました.でも,「タルタリアより先に発見した人がいて, タルタリアはその人に習った.」とも言われており,何処まで行くことやら.「カルダーノもタルタリアが発見者じゃないと分かったから公表したんだろう. 」とも言われています.様々な説があって,どれが正しいやら.ややこしいなぁ.
ただ,当時は3次方程式を解くことでお金を稼ぐことができたみたいですよ.いまの皆さんならYouTuberより稼げるかもしれません(笑).ただし, いまのような数学記号がなかったので方程式の解き方を説明するだけでも一苦労です.「アルス・マグナ」では立方体を分割する図を使って解説しているようです.
また,解の公式の中では, \( x^2+x+1=0 \) の解\( \displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{3} i}{2} \)の一方を\( \omega \)とおいて用いています.この値は3乗すると1となり「1の虚数3乗根」とも呼ばれています.はじめて虚数が人の目にさらされたことになります.
「あれ?! 負の数は17世紀まで認められなかったんじゃないのか?」
「2乗すると\(-1\)になる数\(i\)って,なおさら意味わからんやん!」
というわけで,この公式は公表されたのはいいものの計算途中に怪しさ満点の概念があるので, あまり受け入れられなかったらしいです.でも「たとえ論理が怪しくても正しい値を発見できるからいいやん」という人たちもいて,研究が進みました.
最後に
この記事を書くにあたって,いくつかのHPを確認しましたが,もっと詳しく書いているページが沢山ありますね.私はヘルマン・ハル 著,三宅克哉 訳「数学10大論争」を昔読んで,うろ覚えで書いています. 間違いがあればご指摘願います.
話が長くなってしまいました. <3次方程式の解の公式> は,次の機会のブログで紹介しますね.準備としては,
\(a^3+b^3+c^3 -3abc = \left( a+b+c \right) \left( a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca \right)\)
を覚えておくとよいでしょう.