京都医塾化学科です。
みなさんは東大寺の大仏を見たことはあるでしょうか。今でこそ黒一色の姿をしていますが、建立された当時は金メッキにより金色に光り輝いていたといいます。今回はそんな大仏にまつわる化学をご紹介しようと思います。
・大仏の金メッキ
先述のとおり建立当時の大仏は金メッキが施されていました。とはいえ、大仏が立てられ始めたのは西暦745年。現在のような電気メッキは当然使えません。では、どのようにして大仏に金メッキを施したのかというと、今回のメインテーマとなる「アマルガム法」という手法で行われました。
・アマルガム法とは
まずは「アマルガム」という単語の説明からします。アマルガムとは水銀と他の金属の合金です。化学の授業で「青銅」や「ステンレス鋼」などと一緒に習った人も多いのではないでしょうか。そして、水銀に金を溶かした合金を金アマルガムと呼びます。その金アマルガムを大仏に塗り、その箇所を加熱することで水銀を蒸発させます。そうすることで、大仏の表面に金メッキを施す方法をアマルガム法といいます。
・実はヤバいアマルガム法
さて、そんなアマルガム法ですが、「水銀を蒸発させる」という工程が非常に危険を孕んでいます。水銀の蒸気を吸い込んでしまうと呼吸器から吸収され猛毒に作用してしまいます(ちなみに液体の水銀を誤って飲み込んでも微量であれば、それほど害はありません)。大仏建立では、閉鎖空間の建屋内で、大仏に塗布したアマルガムの水銀を飛ばす作業が5年以上も続けられた結果、作業に従事し水銀蒸気を吸った多くの人が、水銀中毒によって死亡することとなったといわれています。東大寺中門を入った庭に並ぶ500立像は、犠牲者を供養した像とされていて、この犠牲者の多くが水銀中毒であったとすると背筋が寒くなりますね。
・最後に
今回はアマルガムという合金と、それを用いたアマルガム法を取り上げました。合金の単元では「合金名」と「合金に使われている金属」を暗記するのが大変、という方も多いのではないでしょうか。そんなときは、合金の歴史を調べてみるのも知識の定着に役立つかもしれませんよ。今回の話に興味がわいた方は、他の金属についても調べてみると良いのではないでしょうか。