京都医塾物理科です。
朝晩、随分と涼しくなってきました。一方で、日中暑い日が続くことも時折あるため、長袖では暑く、かといって半袖では寒いといった調節の難しい時期です。風邪など引かないように、十分に体調に気を付けながら、引き続き勉強に励んでいきましょう。
今月は、
・過去問にはいつから手を付け始めるべきか
・10月の勉強のポイント・学習アドバイス
をお届けします!
過去問にはいつから手を付け始めるべきか
10月に入り、そろそろ書店には昨年度の入試問題を収録した過去問題集が並ぶ時期になってきました。教学社から出版されているいわゆる「赤本」が書店の一コーナーを真っ赤に染める様は、否応なしに「受験が近づいてきたな」と感じさせる秋の風物詩です。いずれにせよ、志望校が決まっているという人は、発売されたらすぐに購入しておきましょう。
そして、過去問題集を入手したら、直ちに「最新年度(昨年度)」のものを解きましょう。
「昨年度のものは、入試直前に力試しとして取っておきたい」
「手を付けられていない分野や単元があるので、過去問に手を出すのはまだ早い」
よく耳にする意見です。全く気持ちが分からないわけではありません。しかし、それでも今すぐに最新年度の過去問を解いてください。その理由は、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」の格言の通り、
①その大学の傾向をつかむため
②残り時間で自分に必要な勉強計画を立てるため
の2つに集約されます。
具体的に説明します。まず、「敵を知る」にあたる①についてです。皆さんは自分の志望校について、各科目ごとの形式(マークor記述)、制限時間、大問数、難易度、そして合格最低点といった内容を把握しているでしょうか。情報としては知っているという人も、百聞は一見に如かず。一度時間を計って解いてみて、それが実際にどのようなものであるのかを体感してみましょう。必ずや、様々な発見があるはずです。
次に、「(敵を知った上で)己を知る」にあたる②についてです。一度過去問を解くことで、解けなかった問題が必ず浮かび上がってきます。その分析を通して、今の自分に足りていないものを見つけ出しましょう。もちろん、未習分野・単元であれば、解けなくて仕方ないという問題もあるでしょう。しかし一方で、既習分野・単元も多くあるはずです。物理であれば、どの大学においても、「力学がどの程度解けているか」が今の実力を測る良い指標となります(もちろん、既習分野・単元がどの程度解けているのかは、全て自己分析の対象です)。
力学を始めとする既習分野・単元が満足に解けているということであれば、ここまでの勉強に問題はありません。逆に、思ったほど解けていないという人は、これまでの勉強と問題を照らし合わせながら、その単元全体を復習しましょう。難易度の判別が難しい場合は、信頼できる先生などに相談し、取るべき問題かどうかを見定めていきましょう。
以上が一段落したら、過去問演習を中断し、これまでの勉強の続きを行っていきましょう。今の時期から過去問演習を繰り返しても、実力は伸びません。ぎりぎりまで、基礎固めに徹してください。実力を完成させるための過去問演習は、1か月もあれば十分です。
10月の勉強のポイント・学習アドバイス
ここまで順調に勉強が進んでいる人は、9月まで電磁気の半分程度(電気分野)を終えていることと思います。10月からは、残り半分の磁気分野に取り掛かりましょう。
皆さんは磁気分野の最初を学習したあたりで、このように思ったことはないでしょうか。
「電気分野はまだ何とか分かるんだけど、磁気分野はさらに公式がたくさん出てきて、もうわけがわからなくなってきた…。そもそも、磁場って何なんだ?」
理解が追い付かない中で、覚えるべき公式だけがいくらでも増えていくので、投げ出したくなる気持ちはよくわかります。ですが、一度グッとこらえて、やはりいつものように定義から整理してみましょう。
磁場とは、「『運動する電荷』に力を与える空間」です。定性的に、電荷は磁場中を運動しているとき、その速度と磁場の両方に直交する方向に力を受けます(「フレミングの左手の法則」は、この関係を分かりやすく述べたものです)。定量的には、磁束密度Bの磁場中を、電荷qが速度vで磁場と直交する方向に動くとき、磁場から受ける力の大きさfは「f=qvB」となります(磁場と速度が斜めであれば、なす角をθとして「f=qvBsinθ」となります)。
以上の定義をもとに、電流が磁場から受ける力「F=IBl」を導いてみます。(導体中の)電流は、ミクロにみると自由電子の運動に還元されます。そのため、まず自由電子が磁場から受ける力を考えてみます。すると、自由電子の電荷は-eなので、磁束密度Bの磁場中を速度vで動くとき、磁場から受ける力の大きさfはf=evBとなります。
ここで、導体を断面積S、長さlの円柱とすると、単位体積あたりの自由電子の個数をnとして、導体中の自由電子の総数はnSlであるため、自由電子が磁場から受ける力の大きさの総和Fは、F=nSl×f=nSlevBとなります。
一方で、導体中の電流の大きさIは、ある断面を単位時間あたりに通過する電荷を考えて、I=enSvです。したがって、Iを用いてFを表すと、F=enSv×Bl=IBlとなります。
いかがでしょうか。一言で言えば、「磁場の定義はf=qvBで、ここからF=IBlが導出される」ということです。もし、今までは単に公式を丸暗記していたということであれば、少しつながりが見えてきたのではないかと思います。こういったことをきっかけにして、一つ一つの知識を結びつけていき、もう一度問題に立ち向かっていってください。物理も残すところ、あと少しです。
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