京都医塾数学科です。
このページでは「川崎医科大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“川崎医科大学医学部”の受験を考えている方
・“川崎医科大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
オススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度
形式: マーク式
制限時間: 80分
配点: 100点
出題の傾向と特徴
【毎年恒例の出題単元】
数学Ⅲ範囲の微分法(接線や導関数)・積分法(面積)
2018年度は数学Ⅱ範囲のいわゆる1/6公式を用いる面積問題でしたが、2019年度から再び数学Ⅲ内容に戻りました。接線や導関数を求めることで微分の計算をさせ、面積問題で積分の計算をさせる問題が出題されています。面積を求める問題は基本的なパターンのものが多いですので、被積分関数が三角関数や対数関数のものも含めて、頻出の積分のパターンを練習しておきましょう。
【頻出の出題単元】
恒例の単元を除くと、図形問題が頻出です。
以前は複素数平面からの出題が多くみられましたが、以下のように最近はベクトルの問題に変わってきているように見受けられます。とはいえ、どちらが出題されるかは分かりませんので、両方しっかりと対策をしておきましょう。また、独立して大問になっていなくても、大問の中に、図形的に考えて処理する問題が入っていることもあります。
2021年度…第2問 ベクトル
2020年度…第1問 複素数平面
2019年度…第1問 ベクトル
2018年度…第3問 図形と無限等比級数
2017年度…第2問 複素数平面
2016年度…第2問 複素数平面
また、残りの1題は整数や確率からの出題が多いです。こちらは、2019年の確率漸化式から一般項を求めさせ、その一般項の極限を求めるように複数の単元からの融合問題になることもあります。
【制限時間に対する問題量】
大問3題に対して80分ですので、私立医学部入試としては時間にゆとりがある方です。とはいうものの、積分を中心に計算量が多いため計算力は求められます。また、図形問題が多いため図形の性質を利用した計算の工夫ができないと、計算に時間がかかることや計算ミスが起きることが考えられます。
2022年度(最新の過去問)の分析
さらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:やや難)
(1)
(ⅰ) 放物線 \(y=x^2\) と直線 \(y=a(x-1)\) が異なる2点A, Bで交わるための\(a\)の条件を求める問題。
基本通り、判別式 \(D>0\) から条件を求めましょう。
(ⅱ) \(a\)が変化するとき、線分ABの中点の軌跡を求める問題。
中点の座標の求め方は、基本中の基本です。ここで出した座標を、\(x=(aの式①), y=(aの式②)\) と捉えて\((x, y)\) の等式にしましょう。また、その時の\(x\)が取り得る値の範囲は、\(x=2a\) 及び(ⅰ)で求めた条件 \(a<0,4<a\) より \(2x<0, 4<2x\) となりますが、問題で聞かれずとも、新しい関数の式を出したときには、必ずその定義域を考える、ということは習慣化していきたいところです。
(ⅲ) 点 \((x,y)\) が(ⅱ)の放物線上を動くときに \(k=\displaystyle\frac{y+8}{x-1}\) の取りうる値の範囲を求める問題。
分数のままでは面倒ですので、分母を払ってしまいましょう。
\(y=kx-k-8\) より、この直線と(ⅱ)の放物線 \(y=2x^2-2x \)が共有点をもつ条件、
つまり、方程式\(2x^2-2x=kx-k-8 \dots ①\) が実数解を持つための \(k \)の範囲を求めます。
\(D≧0\) として不等式を解くと、\(k≦-6 , 10≦k\) となります。この解は放物線の定義域 \((x<0, 2<x)\) を考慮しない場合、すなわち定義域が任意の実数である場合に、2曲線が共有点をもつ\(k\) の条件です。
ここからさらに条件を絞り「方程式①の実数解のうち、少なくとも1つが\((x<0, 2<x)\)の範囲にあるための\(k\)の条件を導く必要があります。実際に解の公式を用いて方程式を解くと「\(k≦-6\)のときは、常に解が0より小さい」、「\(k≧10\)のときは、常に解が2より大きい」ことが分かります。よって、求めるべきkの範囲は「方程式①が実数解を持つ条件」つまり、判別式\(D≧0\)と同じとなります。
(2)
(ⅰ) 放物線上の点を通る接線を求める問題。
基本中の基本です。接線の定義式通りに、答えを求めましょう。
(ⅱ) 指定された領域内を点\((x , y) \)が動くときに、与えられた数式の最小値を考える問題。
\(与式=k\) のように置いて、図形的に処理していくのがセオリーです。このように置くと、\( k=bxy-(x+y) \)という、2変数関数の式となります。このような関数では、どちらか一方の文字を定数とみなして、1変数の関数と捉え、まずはその最小値から求めるようにします。
もし”\(y\)を定数”と置いたのであれば、”\(kがx\) の関数となる”ように扱います。この場合、定義域は定数”\((yの式)\)”によって表されることに注意しなくてはなりません。\(y\)を固定して\(x\)の式の最小値を求めた後、更にそこから\(y\)を動かすことで、\( k=bxy-(x+y) \)の最小値が分かります。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 6割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割
【第2問】(難易度:標準)
与えられた漸化式
\(a_{1}= \displaystyle\frac{2}{7}\ , a_{2}= \displaystyle\frac{10}{7}\ , a_{n+2}-2a_{n+1}+a_{n}= \displaystyle\frac{6}{7}\ (n+1)\)
から、数列の一般項などを求めていく問題。
(1) \(a_{3}\) を求める問題。
ただの代入計算です。ミスなく解き切りましょう。
(2) \(a_{n+1} – a_{n}=b_{n}\) の一般項を求める問題。
式変形により、
\(a_{n+2} – a_{n+1}=a_{n+1} – a_{n}+ \displaystyle\frac{6}{7}\ (n+1)\)
であるので、
\(b_{n+1}=b_{n}+ \displaystyle\frac{6}{7}\ (n+1)\)
\( \displaystyle\frac{6}{7}\ (n+1)\)が階差数列となるため、初項\(b_{1}\)と階差数列の初項から\(n-1\)項目までの総和から、一般項\(b_{n}\)が求まります。
(3) 一般項\(a_{n}\)を求める問題。
(2)の結果を利用しましょう。\(a_{n+1} – a_{n}=b_{n}\)なので、\(b_{n}\)が階差数列の形になります。
(ⅰ) \( \displaystyle\sum_{k=1}^{n} \displaystyle\frac{3k+7}{7a_{k}-2k}\ \)および\( \displaystyle\sum_{k=1}^{ \infty} \displaystyle\frac{3k+7}{7a_{k}-2k}\ \)を求める問題。
前者は、\(a_{k}\)に(3)の結果を代入し、計算します。分母の因数分解から部分分数分解まで、ミスなく計算を進めましょう。これが求まれば、\(n→ \infty\)の極限は容易に出せるでしょう。
(ⅱ) \( \displaystyle\sum_{k=1}^{n} [a_{k}] \)を考える問題。
\(a_{k}\)は常に正の値なので、\([a_{k}]\)は\(a_{k}\)の整数部分と言い換えることができます。
\(a_{n}= \frac{1}{7}\ (n^3+n)\)ですから、\((n^3+n)\)を7で割った余り部分は切り捨てて計算する、と考えればよいでしょう。
\(n\)を、7で割り切れる数、7で割って1余る数、・・・、7で割って6余る数
によって分類すると、0以上の整数\(k\)を用いて、
\[n=7k, 7k+1, 7k+2, 7k+3, 7k+4, 7k+5, 7k+6\]
と表せます。
\( \displaystyle\frac{1}{7}\ (n^3+n)\)の小数部分を\(b_{n}\)と置くと、\(b_{n}\)は\(((n^3+n)を7で割った余り) \div 7\)です。\(n\)を7で割った余りで分類し、各場合における\(b_{n}\)を求めていけば、\( [a_{n}]=a_{n}- b_{n} \)として\( [a_{n}]\)が容易に計算できるようになります。
例えば\(n=7k-6\)のとき、\(b_{n}= \frac{5}{7}\ \)となりますから、
\[ [a_{7k+6}]=a_{7k+6}- \frac{5}{7}\ \]より、
\[ [a_{7k+6}]=(7k+6)^3+(7k+6)- \frac{5}{7}\ \]
となります。
すべてのパターンについて\(b_{n}\)および\([a_{n}]\)を求め、問題の条件に当てはまる\(n\)について和を計算していきましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 8割
他教科を得点源にしたい受験生… 6割
【第3問】(難易度:標準)
(1) 関数\(f(x)= \displaystyle\frac{e^x+e^{-x}}{2}\ (x≧0)\)について考える問題。
(ⅰ) \(f(x)\)の最小値と \({f(x)}^2-{f'(x)}^2\)を求める問題。
最小値は、基本どおり増減表からグラフの概形を考え、答えましょう。\(f(x)\)自体が有名な関数ですから、既にグラフの形を知っていたという受験生も多いと思われます。式の値は、因数分解して和と差の積の形を作ってから計算すると、ミスを減らせるでしょう。
(ⅱ) \(f(x)\)の逆関数\(g(x)\)について、\(g'(x)\)および\( \displaystyle\frac{x}{g'(x)}\ -g(x)\)の導関数を求める問題。
逆関数は、関数内の変数\(x, y\)を入れ替えた後、その等式を\(y\)について解くことで導けます。指数関数の逆関数ですから、両辺に\(log\)を取ったうえで式変形しましょう。
逆関数さえ求まれば、あとは公式を用いて計算を進めていくだけの問題です。
(2)
(ⅰ) 解法としては、第2次導関数まで求め、傾きの増減を調べる方法が分かりやすいでしょう。
定義域\(x≧0\)の範囲において、\(f'(x)\)は単調減少となります。よって、\(x→+0\)で\(f'(x)\)の極限を取ったときの値が、接線の傾きの上限であることが分かります。
(ⅱ)
座標を表す文字式は一見複雑ですが、接線の方程式や、接線と軸との交点の座標の求め方は基本通りです。求めるべきものは線分\(PQ\)の長さの最小値ですが、\(PQ^2\)を\(q\)の式で表すと、
\( PQ^2= \displaystyle\frac{9}{4}\ q^2+ \displaystyle\frac{1}{25q^2}\ + \displaystyle\frac{13}{20}\ \)…①
となります。
①が最小となるのは\( \displaystyle\frac{9}{4}\ q^2+ \displaystyle\frac{1}{25q^2}\ \)が最小となるときなので、微分計算、あるいは相加平均・相乗平均の大小関係を用いることで答えを求めることができます。
(ⅲ)
図示は容易ですが、積分計算がやや難しくなっています。
(1)の計算過程で出てきた、
\((x \sqrt{x^2-1}\ – \log{(x+ \sqrt{x^2-1}\ )} )’=2 \sqrt{x^2-1}\ \)
を利用しましょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生… 7割
他教科を得点源にしたい受験生… 5割
【総評】
全体を通して、高い計算力が求められます。使う解法は基礎~標準レベルですので、焦らず確実に解き進めていきましょう。
第1問については、(1)および(2)(ⅱ)だけは解ききりたいところです。数学が得意でない受験生は、残りの問題は後回しにし、第2問に力を入れるのが賢明でしょう。
第2問は、最後の問題こそ難易度は高めですが、それ以外は基本的な漸化式の解法で解ける問題ばかりです。解法が分からなかった受験生は、基礎的な問題集で漸化式のセオリーを学び直しましょう。
第3問は、(2)を解き進めるために必要になる関数の極限や増減を調べる練習を、普段からどれだけ行っているかで差がつく問題です。そういった意味では演習量が試される問題と言えます。
まとめ
というわけで、今回は川崎医科大学の数学についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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