京都医塾数学科です。
このページでは「日本大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“日本大学医学部”の受験を考えている方
・“日本大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
概要
2022年度から、医学部ではA方式(学部別試験)が廃止され、N方式(全学部共通試験)に一本化されました。
また、新たに二次試験でも学科試験が課されることになりました。
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
一次試験
形式: 全6問、全てマーク式
制限時間:60分
配点:100点(一次試験の総得点は400点)
二次試験
形式:全3問、全て記述式
制限時間:60分
配点:60点(二次試験の総得点は180点)
【一次試験】出題の傾向と特徴
2018年度・2019年度入試は大問数が5でしたが、それ以降は6に固定されています。
【頻出の出題単元】
小問集合の第1問は、各単元からバランスよく出題されています。
また、第2問以降では、場合の数・確率、ベクトル、数列の極限(特に無限等比級数)、面積・体積計算の問題がほぼ毎年出題されています。
【制限時間に対する問題量】
単純計算で考えると、大問1つ当たり10分以内となりますので、時間が厳しい試験と感じるかもしれません。
しかし、出題内容は教科書レベル~入試基礎レベルで構成されており、難問・奇問と言える問題は皆無です。
複雑な計算を要求される事もほとんどありません。
手を止める事無く解き進められれば十分間に合うはずです。
【一次試験】2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 小問集合】(難易度:易)
(1) 二次方程式の実数解の存在する範囲(解の配置問題)
(2) 三角形の内角の二等分線の長さ
(3) 常用対数の利用
(4) 整式の除法(余りを求める)
(5) データの分析(変量を変換した時の平均値・分散の変化)
(1)と(3)は超典型問題ですから、短時間で解き切りましょう。(共に1分程度)
(5)については、知識として身に付いていれば一瞬の計算で解ける問題です。
(2)のポイント:面積を利用して立式すると効率的に解けます。
(4)のポイント:1の3乗根(ω)を両辺に代入し、その性質を利用する。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…(5)以外は取り切る。
【第2問 確率】(難易度:やや易)
1~4の数字を等確率で引く操作を4回繰り返し、最大値と最小値の差が0または1となる確率を答える問題です。
(1)のポイント:差が0、つまり4回とも同じ数が出る。
(2)のポイント:差が1、つまり( \(M\) , \(m\) )=(4,3),(3,2),(2,1)の3通り。あとは \(M\) と \(m\) が何回ずつ出たかを考え、反復試行を利用します。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…確率が苦手なら、(2)は飛ばして他の大問でカバー。
【第3問 三角関数】(難易度:非常に易)
三辺の長さが与えられた三角形に対して、1つの内角の余弦(cos)に対してその2倍角の余弦・4倍角の余弦を順に求める問題です。
4倍角は「2倍角の2倍角」と考えればよいだけで、3分以内で完答が可能な、非常に易しい問題です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。
【第4問 ベクトル】(難易度:標準)
ベクトルを利用して、内積や大きさ、三角形の面積比を計算する問題です。要所ごとに、幾何の知識を活用することで計算を省略・効率化できる箇所があります。
(1)のポイント:「交点の位置ベクトル」の超典型問題。メネラウスの定理を使う事も出来ます。
(2)のポイント:三角形の外心から各頂点までの距離が等しい事を利用。ベクトルの大きさは2乗すると内積が出てきます。1文字消去を意識。
(3)前半のポイント:「3点が同一直線上にある条件」(共線条件)を適用。文字消去を意識すれば、自ずと方針が見えるはずです。
(3)後半のポイント:「一つの角を共有する2つの三角形の面積比は、その角を挟む2辺の長さの積の比と等しい」という知識を利用すると、 \(p\) と \(q\) の積が即座に求められます。「2数の和と積の大小関係」と「最小値」から、「相加平均・相乗平均の大小関係」を連想できるかが時間短縮のポイントです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。方針が立たないなら(3)の後半は後回し。
他教科を得点源にしたい受験生…(3)の前半まで取る。
【第5問 数列の和と極限】(難易度:標準)
一定の規則の下で次々と図形を作成していき、面積の和や内接円の半径を考える問題です。
問題設定を理解するのに時間がかかると感じるかもしれませんが、「同じ操作を繰り返す」→「相似比が一定」→「等比数列(の和)になる」という典型的なこの手の問題の流れが見えていれば、余計な計算をせずに短時間で片付けられるはずです。
(1)のポイント:直角二等辺三角形の辺の比を利用し、条件式を立てましょう。
(2)のポイント:(1)が分かれば、相似比→面積比(つまり等比数列の公比)が分かります。
(3)のポイント:三角形の内接円の半径は、面積から求めます。初項さえ求めてしまえば、あとは(2)の相似比を利用するだけです。収束する無限等比級数を計算すればよい。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…できれば完答。(3)の後半は後回しにする手もあり。
【第6問 微分・積分】(難易度:やや易)
関数の増減・凹凸を調べた後、曲線と直線で囲まれた部分の面積を求める問題です。
(1)は微分計算を実行するだけの問題です。
(2)前半のポイント:交点の座標は、連立方程式を解くだけです。最小値については、二次導関数の符号が常に正、つまり下に凸である事を意識すれば、最小値はすぐにわかるはずです。
(2)後半のポイント:対数関数の積分は、部分積分利用。置換を利用して真数部分を簡単に置き換えると、計算しやすいです。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…多少時間をかけてでも完答。
【総評】
N方式は他学部でも使用する問題なので、非常に解きやすい問題が並んでいます。
大問ごとに多少の難易度の差はありますが、過去問などで演習を重ねていれば、方針に迷う問題はほとんど無いはずです。
1・2・3・6は満点、残りの問題を時間の許す限り取り切ると良いでしょう。
忙しい試験にはなるので、少しでも手が止まるようであれば、解ける問題に移るようにしましょう。
【二次試験】出題の傾向と特徴
2022年度から新設された試験のため、過去問が存在しません。
2021年度まで実施されていたA方式(学部別試験)にも記述式の設問がありましたが、それと比べると比較的平易な問題であると言えるでしょう。
【制限時間に対する問題量】
60分で大問3つですから、一次試験と比較すると時間的な制約は緩いと言えます。
しかし、全て記述式での回答となるので、事前に答案作成の練習を積んでおき、所要時間の感覚を把握するようにしておきましょう。
【二次試験】2022年度(最新の過去問)の分析
最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 微分・等式の証明】(難易度:易)
(1) 導関数の計算4問
(2) 二次方程式の2解についての等式が成り立つことの証明
(1)は教科書例題レベルの超基本問題ですから、素早く片付けましょう。
(2)は、証明の形を取っていますが、与えられた式を変形していくだけなので、難易度としてはかなり易しい問題です。
(2)のポイント:解と係数の関係だけでは無く、「方程式の解→代入可能」を活用すると素早く処理できる。1の3乗根(ω)の性質を利用した解法もあり。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…素早く完答。
他教科を得点源にしたい受験生…素早く完答。
【第2問 逆関数・面積計算】(難易度:やや易)
無理関数の逆関数、そしてそれらで囲まれる部分の面積を求める問題です。
(1)のポイント:元の関数の値域が逆関数の定義域に対応することを忘れないようにしましょう。
(2)のポイント:直接交点の座標を求めに行くと、計算が煩雑になります。対称軸 \(y=x\) との交点と読み替えると楽になります。
(3)は、特に難しいところも無い定積分の計算です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。
【第3問 三角関数の最大値】(難易度:標準)
単位円周上の動点によって変化する三角形の面積や点と直線の距離の最大値を求める問題です。
かなり易しい第1問・第2問と比較すると、難易度はかなり高いと言えます。
なるべく短時間で2問を片付けて、この問題にどれだけ時間を割くことが出来るかが、勝負を分けることになります。
(1)のポイント:積の微分法・商の微分法を正確に処理する。無闇に展開したりせず、因数分解や約分を狙いに行くと効率的に計算する事が可能です。
(2)のポイント:「点と直線の距離」の公式に当てはめて立式。分母に半角公式を適用すると約分できる事に気付けるか。最後は三角関数の合成。微分計算は不要。
直角三角形の辺の比に着目すると、 \(d\) の立式が簡略化できる。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…第1問・第2問を短時間で片付け、時間をかけて完答したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)は得点したい。
【総評】
第1問・第2問では、ほとんど差が付くことは無いでしょう。
第3問でどれだけ得点できるかが合否を分けることになったと予想されます。
ただ、A方式の時代と比較すると難易度は控えめであり、一次試験と同様に高得点勝負になります。
まとめ
高得点勝負になりますので、少しのミスが命取りになる試験です。難易度の高い問題はほとんど出題されていませんので、何度も演習した基礎レベルの問題集を何度も解き直し、正確に・素早く解き切る力を身に付けておきましょう。
一次試験に関しては、ここ数年の出題単元はかなり固定化されていますので、何年か過去問を解いて解く順番などの戦略を立てておくのも良いでしょう。
二次試験に関しては、2022年度が初めてだったので、2023年度入試に問題の難易度などが大きく変更される可能性も少なからずあります。過去の医学部のA方式試験を解いておくのも対策になるでしょう。
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