京都医塾数学科です。
このページでは「獨協医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“獨協医科大学”の受験を考えている方
・“獨協医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2022年度(最新の問題より)
形式: マーク式(穴埋め)
制限時間:60分(2020年度までは70分だったが、2021年度から60分になりました。2023年度も60分になっています。)
配点: 100点(筆記試験の総得点は400点)
出題の傾向と特徴
直近5年分についての傾向をまとめます。
【問題の構成】
・第1問は(1)と(2)が別の問題になっていることに注意しましょう。第2問以降は、大問構成になっています。
・2020年度までは70分で5題、2021年度は60分で4題の構成となっています。10分短くした分、1題削ったと思われるので、2023年度も2021年度と同じ形になる可能性が高いでしょう。
・テーマの選択は少し難しめのことが多いです。
ただし、誘導が丁寧についているので、難しいテーマの問題も諦めずに、一つ一つの設問をよく読んでみましょう。
最後までは解けなくても、ある程度は手がつけられるようになっていることが多いです。
【制限時間に対する問題量】
獨協医科大学の数学の大きな特徴は、完答することが非常に困難な問題量です。
難問がたくさん出題されるわけではないのですが、一問一問が骨のある問題になっており、少しでも解法を思いつくのに時間がかかったり、計算ミスがあるだけで、もう満点を取ることは無理でしょう。
現実的には、数学で満点を狙う必要は全くありませんので、「解ける問題を確実に解く」ことを徹底するべき大学です。
【毎年恒例の出題単元】
確率とベクトルの問題が毎年出題されています。
2013年度から2020年度までは、第2問が確率・第3問がベクトルという流れが続いており、獨協医科大学の定番の流れとなっていました。
2021年度に時間と大問がカットされたとき、ベクトルはやはり大問として出題されていたものの、確率は第1問の半分だけになりました。
2022年度はベクトルの大問はなくなっていて、2023年度以降どのようになるのかは不透明です。
2022年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※獨協医科大学の1次試験日は2日間設定されており、どちらかを選ぶことになります(2日間とも受験することも可能です)。本記事では公開されている1日目の問題の分析を行います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 2変数関数・確率】(難易度:(1)やや難 ・ (2)標準)
(1)は条件式つきの2変数関数の最大値・最小値の問題が2問並びます。前半の(ⅰ)は標準的な問題です。
一方、(ⅱ)は以下のように手順が多く、手を動かしても得点に結びつきづらい問題です。
①「 \(x^{2}+2y^{2}=4 \) のときの \(x+y\) のとりうる値の範囲を求める」
②「 \(t=x+y\) とおきかえる」
③「 \(t\) の2次関数の最小値を定数 \(a\) の値の範囲で場合分けして求める」
④「条件を満たす \(a\) の値を求める」
そのため、(1)(ⅱ)を解くのは後回しにすべきでしょう。
(2)はさいころを3回投げる試行について「出た目の最大値・最小値」を考える問題です。
難易度としては標準的ですが、最後の設問「出た目の最小値が2以下かつ出た目の最大値が4以上であるとき、出た目がちょうど2種類である条件付き確率を求めよ」は、出た目の組み合わせを落ち着いて数え上げる必要があります。
制限時間が厳しく設定されていることを考えれば正解するのは容易ではないでしょう。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)(ⅰ)、(2)完答
他教科を得点源にしたい受験生…(1)(ⅰ)、(2)の(サ、シ)まで。
【第2問 3次方程式の虚数解】(難易度:標準~やや難)
第2問は定数 \(a\) を含む \(x\) の3次方程式 \(x^{3}-(a-3)x^{2}-3a^{2}=0\) に対して、3つの独立した設問があるという構成になっています。
各設問は独立しているものの、与えられた3次方程式が因数分解できることに気づけないと、正解にたどりつくのは難しくなっています。
3次方程式に限らず、因数分解(\(AB=0\)の形を作ること)が方程式や不等式の基本解法となっていることを意識しましょう。
(1)は \(\displaystyle a=\frac{4}{3}\) のときの与えられた方程式の実数解を求め、
残る2つの虚数解 \(\alpha\) , \(\beta\) の式の値を求める問題となっています。
後半の式の値を求める問題では、解と係数の関係を用いる標準的な解法のほか、
\( \alpha \) , \( \beta \) が2次方程式 \(x^{2}+3x+4=0\) の解であることから成り立つ等式 \( \alpha^{2}=-3\alpha-4 \) , \( \beta^{2}=-3\beta-4 \) を用いることで「次数下げ」をする解法があり、こちらの方が素早く正確に正答にたどりつけます。
制限時間内で多くの問題を処理するためには必須の解法と言えるでしょう。
(2)は与えられた方程式の異なる実数解の個数がちょうど2個、すなわち2重解をもつ条件を求める問題です。
こちらは因数分解さえできていれば標準的な問題ですので、きちんと解ききりたい問題です。
(3)は複素数 \( \displaystyle \gamma =\frac{-3+\sqrt{3}i}{2} \) に対して、\( \gamma^{5} \) を求める問題、そして条件「 \(\gamma^{n}+3\) が与えられた方程式の解となるような実数 \(a\) が存在する」を満たすような最小の自然数 \(n\) を求める問題から構成されます。
前半の問題は数学Ⅲ(複素数平面)の典型問題です。
一方後半の問題は正解することはもちろん、条件の意味を正しく読み取ることも難しい問題となっています。
また \(\gamma^{n}\) の実部を「解と係数の関係」および「ド・モアブルの定理」により計算するなど、複数の知識を組み合わせる必要があります。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)、(2)、(3)の前半
他教科を得点源にしたい受験生…(1)の前半、(2)、(3)の前半
【第3問 数列の和・格子点の個数】(難易度:標準~やや難)
(1)(2)はガウス記号、整数部分、床関数などの呼び名がある、「実数 \(x\) を超えない最大の整数 \( [x] \)」を用いた数列の和 \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n^2} [\sqrt{k}]\) を求める典型問題です。
この記号を初めて見る方にとっては非常に難解に見える問題ですが、
与えられた数列の和 \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n^2} [\sqrt{k}]\) を \(1+1+1+2+2+2+2+2+3+3+\cdots +(n-1)+(n-1)+n\) と書き並べることで規則性が見えれば、初めて解く方でも十分に解ききれる問題となっています。
(3)は領域に含まれる格子点(\(x\)座標,\(y\) 座標がともに整数である点)の個数を求める問題です。
「\(x\) 軸と \(y\) 軸を含む3直線で囲まれた部分」と「\(x\) 軸と \(y\) 軸と無理関数 \(y=\sqrt{4n^{2}-x}\) で囲まれた部分(\(n\) は自然数)」に分けて考えれば、標準的な解法で解くことができます。
しかし、計算量は多く、計算ミスが生じた際に得点に結びつかないことを考えると、この問題に取り組むのは得策ではないでしょう。
ただし、第1問や第2問と違い、第3問(3)は等式
\(\displaystyle \sum_{k=3n^{2}}^{4n^2} [\sqrt{4n^{2}-k}] =\sum_{k=0}^{n^2} [\sqrt{k}]\)
および(2)の結果を用いることで計算量を大幅にカットすることも可能です。
完答するためには一見独立している問題を結びつけることが有効です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)、(2)
他教科を得点源にしたい受験生…(1)、(2)
【第4問 積分法の応用(面積)】(難易度:標準)
第1問~第3問と異なり、各設問が独立していません。
共通テストと同様に丁寧な誘導がついている形式となっています。
また、最後の設問で求めるのは「曲線と接線で囲まれた面積」であることから分かるように、標準的なテーマとなっています。
数学Ⅲの経験値が得点に直結するような問題ですが、素早く完答したいところです。
ただ、素早く解くためには積分計算で「半円の面積」を活用するなど計算工夫は必須です。
≪2022年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答(10分程度で)
他教科を得点源にしたい受験生…完答
【総評】
ベクトルの出題は無かったものの、全体的な構成としては例年通りのセットと言えるでしょう。
随所で述べているように、時間との勝負になるので、難しく感じる問題や時間がかかると判断した問題は、どんどん飛ばしていきましょう。
ただし、途中で詰まったときに、その後ろを全て諦めるのは危険です。
1つ飛ばしても、その後が埋まる可能性は十分ありますので、1点でも多く稼ごうとする気持ちを忘れないようにしましょう。
まとめ
解きやすい問題を見抜き、取り組む問題を取捨選択するという対策が有効です。
しかし、対策をしていない受験生は、問題量に圧倒されて、本来の力を出し切れない場合が多いはずです。
過去問対策をすることで、有利になれる大学の一つと言えるでしょう。
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