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2022年度久留米大学医学部の化学過去問対策・分析

2022年度久留米大学医学部の化学過去問対策・分析

京都医塾化学科です。
このページでは,久留米大学医学部2022年度前期試験の化学の問題について分析します。

・“医学部受験に興味がある”という方
・“久留米大学”の受験を考えている方
・“久留米大学の化学がどのような問題か知りたい”という方

におすすめの記事です。興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2022年度
形式:記述式
時間:理科2科目で120分
大問数:4題
配点:100点

出題の傾向と特徴

【例年の出題傾向】

ここ数年は、大問1が全範囲から出題される平易な小問集合、続いて理論・無機・有機の大問が1つずつという出題形式になっています。複合問題でも出題されるぶん、理論化学の比重がやや大きいものの、理論・無機・有機がバランスよく出題されています。また全範囲にわたって論述問題がよく出題されることと、医薬品に関する出題が多いのも特徴です。難易度はいずれも標準レベルのため、苦手分野をつくらず、標準問題をすばやく正確に解き切る練習が有効です。

2022年度(最新の過去問)の分析

ここからは、最新の入試問題を具体的に分析します。
(※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。)

【大問1(小問5題:理論3・無機1・有機1)】

問1はクロムの電子配置を問う問題。発展的な内容ですが私立医学部入試ではよく出題されるため、「第4周期の遷移元素ではクロムと銅だけ価電子数が1(他の遷移元素は価電子数2)」と覚えておきましょう。問2は平易なモル計算。問3は含まれている電子の総数を答える問題。問4は久留米大学でよく出題されている法則名や発見者を答える問題。問5は合成高分子の知識題。いずれも私立医学部入試としては基礎レベルでした。

【大問2(理論:蒸気圧)】

(1)~(4)は蒸気圧に関する基礎問題。(5)は比熱を使った計算、(7)、(8)は気液平衡を含む気体の圧力の計算問題であり、標準的な問題でした。一方、(6)は蒸気圧曲線の形状の理由を問う問題で、あまり見かけない題材の問題でした。こういった考察問題に対応するためには、普段の学習から、習った内容をそのまま丸覚えするのではなく、「なぜそうなるのか」を毎回考えて理解することが重要です。時間があれば、グラフの形状など「とりあえずそうなるもの」と覚えていたポイントについて、手持ちの知識を使って理由を説明できないか考えると良い訓練になります。考えた後は、先生に質問したり自分で調べるなどして必ず答えを確かめましょう。時間はかかりますが、こうした思考経験の積み重ねが、初見の問題や考察・記述問題を解く力につながります。

【大問3(無機:14族の元素)】

14族の両性元素であるスズと鉛についての問題でした。よく出題される題材のため、問題文からAとBの金属を決定するところまでは、すばやく確実に行えなければなりません。(1)、(5)、(6)は基礎・標準レベルで、得点源としたい問題。(4)および(7)は、知識としては標準的でしたが、あまり見慣れない問われ方をしているため、焦らずに持っている知識を活用する力が必要です。(2)や(3)についてはスズと鉛の安定な酸化数を覚えていないと難しかったかもしれません。酸化還元反応は基本的に「不安定な酸化数から安定な酸化数に向かう反応」であることを踏まえたうえで、ニトロベンゼンの還元時のスズの酸化数の変化、鉛蓄電池の放電時の反応における鉛の酸化数の変化と結び付けて、それぞれの安定な酸化数を覚えておきましょう。

【大問4(有機:構造決定)】

炭素・水素・酸素からなる分子量60の化合物A~Dの構造を決める問題でした。分子量と構成元素から分子式を絞り込む問題はよくある形式のひとつですが、慣れていないと難しく感じたかもしれません。構造決定の基本は、まず「最も可能性を限定しやすい要素」について考え、そこからありうるパターンを数え上げていくことですが、この場合も考え方はまったく同じです。類題を解いて手順に慣れておきましょう。(例えば今回の場合、「原子量が最も大きい『酸素』が化合物に含まれる数」から考えていくと簡単です。)
また、今回の問題は分子量が小さいので考えられる構造はそれほど多くありません。この場合はありうる構造を書き上げてしまい、そのうえで「問題条件に合う構造を探す」または「条件に合わないものを除外していく」という方針が有効です。実際、分子式が絞り込めれば化合物A・C・Dは比較的容易に特定できます。
一方、化合物Bが厄介です。「Bとエタノールとの混合物に濃硫酸を少量加えて加熱すると芳香を持つ化合物Eが生成する」という条件から、この反応をエステル化と考えてカルボキシ基の存在を想定するのが普通ですが、「Bは単体のナトリウムと反応しない」という、もうひとつの条件と矛盾してしまいます。ここから先に進めなくなった人が多いのではないかと思いますが、実は下線を引いた反応は「エステル交換反応」という高校範囲では学習しない反応であるため、消去法で考えてエステルに思い至るしか正解にたどり着く方法がないのです。(しかも受験生にとって未知の反応であるため、厳密には複素環式エーテルを除外する方法がありません。)
出題ミスでないとすればかなりの難問であり、この問題で正解できなくても気にする必要はありません。大切なのは、未知の状況のときこそ、勇気を持って、あくまでも「論理と根拠に基づいて答える」ことです。これを続けられる人は必ず伸びます。たとえ間違っていても、根拠に基づいていれば判断のプロセスを検証し、修正することができるからです。
以上の意味で、この問題に対し、「実際にはカルボキシ基は単体ナトリウムと反応するので出題ミスだが、『Bは単体のナトリウムと反応しない』という条件は『Bはアルコールではない』という意味だろう」と考えて「Bは酢酸である」と答えるのは極めて自然な発想だと思います。
入試という一発勝負の場でこういう問題に出会ったときは、なるべく時間をかけずに割り切って方針を決めてしまい、確実に得点できそうな問題に時間を割きましょう。ちなみにB(とE)を間違えると(2)だけでなく(3)と(4)の答えも変わってしまうのですが、これも仕方がないと割り切りましょう。合格を勝ち取るためには、難問が解けるかどうかよりも、医学部の標準レベルの問題を落とさず取りきることが大切です。
最後に(4)についてです。分子量の大小・水素結合の有無・分子の枝分かれ構造といった要因がどのように分子間力に影響を及ぼし、沸点・融点に変化をもたらすのかは、非常によく出題されるテーマなので、きちんと整理して理解しておきましょう。

【総評】

一部難しい問題はあるものの、全体的な難易度や問題形式はここ数年の傾向通りでした。基礎知識の穴を作らず、典型問題の立式・計算はすばやく確実に行えるようにしておくことと、また、論述問題が多いので、日頃から反応・操作の理由や、物質の構造と性質の関係について文章で説明する経験を積んでおくことが大切です。また、今回はそれほど目立ちませんでしたが、医薬品関連の出題は続いているので、日頃から医学関連のトピックに興味をもって化学の学習を進めるとよいでしょう。

【制限時間に対する問題量】

計算問題が多く記述問題もあるので、時間的な余裕はありません。基礎問題は手際よく対処して、計算問題・論述問題と構造決定などに時間を使いましょう。また、典型問題の立式までの過程をどれだけ短縮できるかが重要です。

≪2022年度の目標値≫

化学を得点源にしたい受験生…7割以上
他教科を得点源にしたい受験生…5割5分

まとめ

というわけで、今回は久留米大学医学部の2022年度の化学の入試問題についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!

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投稿者:安達 康明

  • 役職
    化学科統括/化学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    8年
  • 出身大学
    京都大学工学部
  • 特技・資格
    バレーボール
  • 趣味
    ゲーム、アニメ鑑賞
  • 出身地
    岡山県
  • お勧めの本
    ビーカーくんとそのなかまたちシリーズ

受験生への一言
なぜその思考が必要なのか、なぜこの解法なのかをキチンと理解できれば点数は必ずついてきます。その手助けをしていくことを最優先で考え、授業を進めています。合格のために出来るサポートは全力でやります。