京都医塾公式ブログ

『社説集』2022年11月まとめ③

『社説集』2022年11月まとめ③

 京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。

 今回は、『社説集』2022年11月まとめの③になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。

注目2本

617-16.Twitterの公共的役割に十分配慮を/2022/11/04 日本経済新聞

619-7.世界人口80億 深刻な貧困招かぬように/2022/11/20 京都新聞

その①617-16.Twitterの公共的役割に十分配慮を/2022/11/04 日本経済新聞

本文

  約半年間にわたる曲折を経て、イーロン・マスク氏による米ツイッターの買収が完了した。政治指導者から庶民まで世界で数億人が情報を受発信する公共性の高い情報基盤の全権を一個人が握った。個人や広告主企業にはその危うさへの懸念が広がっている。

 運営次第で偽情報や憎しみをあおる書き込みであふれ、人々が安心して使える情報基盤として成り立たなくなる危険がある。マスク氏はツイッターが世界の多くの人と社会にとって重要なインフラである事実を十分認識し、思慮深く運営してほしい。

617-16.Twitterの公共的役割に十分配慮を/2022/11/04 日本経済新聞

キーワード

  • イーロン・マスク
  • 情報インフラ

解説

 イーロン・マスクは米自動車会社テスラの共同創業者兼CEOとして有名です。また、世界屈指の大富豪でもあり、マイクロソフトのビル・ゲイツやアマゾンのジェフ・ベゾス、ルイ・ヴィトンのベルナール・アノーといった名だたる富豪を抑え、2022年の世界長者番付では1位でした。テスラは電気自動車・クリーンエネルギー関連の企業であり、EV(電気自動車)への関心の高まりが、テスラの株価を押し上げていることが推察されますね。ちなみに、ニューヨーク州では2035年までに、州内でのガソリン車の新車販売ができなくなります。それほど排ガスゼロ(ゼロエミッション)への意識が欧米では高まっています。

 イーロン・マスクは「言論の自由」をより徹底することを掲げてツイッター社を買収しました。背景には米前大統領のドナルド・トランプ氏のツイッターアカウントが米国連邦議会への乱入事件を受けて凍結されたことがあります。

 たしかに、「言論の自由」を原理主義的に捉えれば、どんな性質の言論であっても発言の機会が保証されるべきかもしれません。しかし、記事にもあるように、ツイッターという情報メディアはきわめて公共性が強く、偽情報や悪意をもって発せられた情報が社会的混乱を引き起こしたり、あるいは個人に大きな損害を与えたりする可能性があります。トランプ氏のように、影響力の強いアカウントを持っている場合は、より一層公共性への意識が求められますね。

 2ちゃんねるの開設者である西村博之氏は「嘘は嘘であると見抜ける人でないと難しい」と発言しましたが、いまや情報インフラ(情報の基盤、情報源)となったツイッターにおいては、その影響力の強さから、公共性への適正な配慮がなされなくてはならないといえるでしょう。

その②619-7.世界人口80億 深刻な貧困招かぬように/2022/11/20 京都新聞

本文

 総務省が発表した人口動態調査で、今年1月1日時点の日本の総人口は、外国人を含めて約1億2600万人だった。前年と比べて0・57%、約72万6千人の減少で、下げ幅は比較可能な2013年以降で最大となった。

 東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)が初のマイナスとなって、人口減は沖縄を除く46都道府県に拡大した。

 少子化に歯止めをかけて、なるべく人口を減らさず、地域社会を維持していくことこそ、日本における人口問題の中心課題といえよう。

 一方、世界に目を向けると、人口減の悪影響だけが懸念されているわけではない。

 国連は、今月15日の推計で、世界の人口が80億人を突破したと発表した。

 10年には70億人に到達しており、そこからさらに10億人が加わったことになる。

 今後は、59年までに100億人を超え、80年代に約104億人まで増加した後、横ばいで推移する見通しだという。

キーワード

  • ファクトフルネス
  • SDGs

解説

 数年前、「FACTFULNESS」という本が世界的にベストセラーになりました。特に日本では100万部を売り上げるなど、大きな反響があったようです。この本の要諦をまとめると、

・「思い込み」から脱しよう

・そのために、「ファクト(=主に数字データ)」を把握しよう

というものでした。

 特に「人口増加予測についての思い込み」について、鮮やかに説明されています。人は右肩上がりのグラフを見たとき、その先も直線的なグラフを描くと予測しがちです(これを「直線本能」として本書は説明しています)。しかし現実には、グラフは直線的に伸びていくとは限らないし、急激に下降する可能性だってあります。

 世界の人口について、私が小学校の頃覚えたのは、「63億人」という数字だったと記憶しています。およそ20年間のうちに17億人増加し、約1.25倍になりました。20世紀のうちに、世界の人口は16億人から60億人になりました。人口爆発への危惧が高まるのは当然のことと思います。

 しかし、「乳幼児死亡率の低下」「女性の学習機会の保障、社会進出」、こうした基本的なことが成し遂げられれば、「子どもをたくさん産まなければならない」とする女性への社会的圧迫は必要がなくなり、基本的に人口増加は緩やかになります。いわゆる多産多死社会から少産少子社会への移行ですね。

 適切な医療の提供、公衆衛生の向上、ジェンダー差別の解消、こうした基本的なことの実践が、人口の適正化にも影響していくようですね。先にこの20年で1.25倍と述べましたが、この数字にしても、過去の人口増加率からいえばずい分なだらかになっているといえます。

 上記の「基本的なこと」は、昨今話題の「SDGs」にも関わります。SDGsには「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」、こうした目標が掲げられています。さまざまな目標に対して達成の努力がなされることで、大きな社会問題の改善が少しずつ進んでいきます。

 小論文においても、SDGsについて書かせる出題が増えることは十分予想できます。ぜひ、多角的な観点から、極力憶測を挟まず論を組み立てる練習をしてほしいと思います。

終わりに

 いかがだったでしょうか。

 京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。

 付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。