京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年11月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
617-11.学び直し 日本再生への大きな鍵だ/2022/11/06 京都新聞
620-2.サッカーW杯 「平等」と「共生」の実現を/2022/11/25 新潟日報
その①617-11.学び直し 日本再生への大きな鍵だ/2022/11/06 京都新聞
本文
労働者だけの支援や、はやりのIT人材育成に偏るべきではない。人口が急減する日本で、女性や高齢者が学び直し、働き手として活躍する意義は大きい。
北欧では保育士、介護士、准看護師などを一つにした総合ケア資格を作り、学び直しによる転職先の受け皿になっている。資格が細分化しすぎた日本も、柔軟性の高い職種の新設や育成へ参考にしてはどうか。
617-11.学び直し 日本再生への大きな鍵だ/2022/11/06 京都新聞
キーワード
- リスキリング
- 高齢者雇用
解説
「リスキリング」という言葉が認知を広めています。アルファベットにすれば”re-skilling”、「再び-スキルを身につけること」の意です。リスキリングの定義は、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」です。「スキルの大幅な変化」といえば、昨今では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が思い起こされるでしょう。会社業務を合理化・能率化するためには欠かせないものです。
しかし今回の記事では、「はやりのIT人材育成に偏るべきではない」と指摘されていますね。これはどういうことでしょうか。
近年、高齢化が進展する中で、介護需要が増大し、介護士の不足がさけばれています。介護需要を満たすために、海外から外国人労働者を受け入れる手もありますが、一方で国内で介護士を育成することもできるのではないでしょうか。つまりリスキリングですね。
定年制度についてはある程度柔軟性があり、一概に「◯歳で定年」と決められるわけではありませんが、およそ65歳が定年になってきますよね(2025年の法改正以降)。健康寿命が延伸するなか、働く意志を持っているにもかかわらず定年を迎える高齢者が多く出ると考えられます。そのとき、何かスキルがあれば再雇用を積極的に行えます。またそのスキルが社会にとって需要の高いものであれば願ったり叶ったりですね。
その意味では、「保育士」も供給が少ない職種です。保育士一人当たりが担当する子ども数が多すぎるため、適切なケアができないことが強く問題視されています。
幅広くスキルの獲得を目指すことは、長期的な視点で見れば社会にとってプラスに働くと考えられますね。
その②620-2.サッカーW杯 「平等」と「共生」の実現を/2022/11/25 新潟日報
本文
今大会で気になるのは、開催国カタールの人権問題だ。移民労働者や性的少数者の人権を侵害していると指摘されている。
英紙は、スタジアム建設などで多くの外国人労働者が厳しい労働環境で働かされ、10年間で6500人以上が死亡したと報じた。
カタールにとってW杯は国家プロジェクトで、巨大スタジアムを七つ新設するなど、インフラ整備を含め2290億ドル(約32兆円)以上を投じた。「最も金のかかったW杯」と言われている。
また、イスラム教国カタールでは同性愛行為は違法とされるが、タミム首長は開幕セレモニーで「全ての人を歓迎する。多様性とそれらを結びつけるものを祝福することは美しい」と述べた。
しかし、欧州の7チームが同性愛者などへの差別反対を示したキャプテンマーク(腕章)を着けようとしていたのを、政治的スローガンを禁止する国際サッカー連盟(FIFA)が突然「着用は処分対象になる」と通達した。
大会組織委員会は着用の自由を認めており、カタール政府の圧力があったと指摘されている。
ドイツチームは日本戦前の写真撮影で出場選手11人全員が口を手で覆い、意見を封じられたことへの抗議を示した。
ブリンケン米国務長官はカタールでの会見で懸念を表明し、国際的な政治問題に発展しつつある。
欧州では観戦ボイコットの動きも広がっている。
キーワード
- 多様性
- 性差別
解説
今大会の日本の躍進は目覚ましいものがありましたね。個人的には三笘選手をすごく応援してしまいました。対面するDFとの距離の置き方や、一対一で仕掛けるときのステップの仕方が独特でした。ジョーカー的な起用になっていましたが、フルタイムで見られるようになれば、と思います。
以上のことはさておき、今大会ではカタールの人権問題が注目されました。
カタールはお隣のサウジアラビアと同じく、厳格なイスラム教国ですので、一般法と同時に「シャリーア」と呼ばれる、コーラン(イスラムの聖典)、ムハンマド(イスラム教の預言者)の言行を根拠とする宗教的な法律が運用されています。
カタールでは、同性愛関係に対しては罰金から死刑までの刑罰が適用されます。開幕セレモニーでは多様性が尊重されると受け取られるメッセージが発せられましたが、カタール政府の想定する「多様性」の中には同性愛の自由は含まれないのかもしれません。
欧米的な人権意識に照らせば、同性愛者を差別することは明確な性差別であって、到底容認し難いものでしょう。ただし一方で、「同性愛の容認」という考え方を一方的に押しつけられることに対しては、「文化の侵害」として反発する動きが出るのもやむを得ないことかもしれません。
いずれにせよ対立は根深く、短期的に解決する問題ではありません。そして性的マイノリティーの差別される状況を黙認するわけにもいきません。継続的な対話が求められるでしょう。
終わりに
いかがだったでしょうか。
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