こんにちは、京都医塾国語科の石田です。
今回は、季節のトピック「紅葉」について、雑学や京都にかかわる知識を紹介します。
紅葉
見ごろ
紅葉の見頃っていつだっけ?と毎年忘れてはネットで調べませんか?
京都嵐山ではおよそ11月中旬頃が紅葉の見頃になります。
もちろん、地域によって見頃時期は異なります。特に寒い地域や標高の高い地域では見頃時期が早まります。
北海道大雪山系旭岳では、2022年度の見頃が9月中旬頃でした。例年、日本で一番早く見頃を迎えます。
日本で一番遅く紅葉を迎えるのは、静岡県熱海の紅葉と言われます。11月中頃から12月上旬が見頃です。
京都で一番遅く見頃を迎える紅葉は、下鴨神社(京都市左京区)の「糺の森」です(なんと年末ごろになる場合もあるようです)。「糺」は「ただす」と読み、縄をよりあわせる、の意です。紛糾(ふんきゅう)の「糾」、「あざなう」と同じ意味ですね。糺の森は縄文時代から続く原生林で悠久の歴史を湛えており、古来から和歌などに多く詠み込まれています。
京都の紅葉
上記の項ですでに少し紹介しましたが、京都は紅葉のスポットがたくさんあります。その中でも個人的に一押しのスポットである、鞍馬山をご紹介します。
鞍馬寺があることで有名な鞍馬山を選出いたしました。理由は、京都が見下ろせるロケーションや、寺域いっぱいに紅葉の錦が広がることはもちろんですが、何より自転車で行けることです!
…いや、結構大変ですけどね。京都観光としていくなら、レンタルのスポーツバイクがいいのではないでしょうか。ローディー(ロードバイクが趣味の人)は輪行でぜひどうぞ。
できれば、鞍馬寺からさらに山の奥へ脚を伸ばしてみてください。「鞍馬温泉」があります。露天風呂で山の紅葉を独り占めできますよ。
さらに意欲のある方は、そこから「花背峠(はなせとうげ)」に自転車でアタックしてみてください!京都の峠の中でもかなりの難関です。もう無理だと思ったら、早めに諦めて下り快速で帰りましょう笑
嵐山、永観堂、東福寺、などなど、京都は紅葉の見どころだらけです。ですが、せっかく紅葉を愉しむなら、ぎゅうぎゅうのバスで行くよりも、自力でペダルを回してアプローチしてみるのも一興ではないでしょうか。
和歌に詠まれた紅葉
このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず 手向(たむけ)山 紅葉の錦 神のまにまに (古今和歌集 菅原朝臣)
歌意:このたびの旅は、(急ぎましたので)幣も手に取りきれませんでした。この手向山では、(幣の代わりとして)紅葉の錦を、神さまの御意のままに(どうぞお受けくださいまし)。
朱雀院(宇多上皇)に対して、菅原道真が詠んだ歌です。道真は歌が上手ではなかったと言われますが、古今集に収載される名歌を詠んでいます。
幣とは神に祈るときの捧げ物で、木綿や麻が用いられます。この歌では散り落ちる紅葉を幣に見立てており、同様の連想は同時代の和歌にしばしばあるようです。
道真の歌としては、他に「東風(こち)吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな」という歌が有名です。左遷先の太宰府(福岡)から、はるか京都の自邸に咲き匂う梅の花を想って詠んだ歌ですね。
ちなみに、一般に道真は藤原氏の讒言(ざんげん:他人を陥れるためのうその告げ口)によって太宰府に左遷されたと言われていますが、大陸において唐の支配力が弱まり、東アジアの国際状況が変化するなかで、大陸と接する前線である福岡の経営を強化する意図があった、との説もあるようです(つまり正当な人事)。
奥山に 紅葉踏み分け なく鹿の 声聞くときぞ 秋はかなしき (古今和歌集 よみ人しらず)
歌意:奥山に、(散り敷いている)もみじを踏み分けて(妻問いして)鳴く鹿の声を聞くときこそ秋は悲しい。
おいおい、「妻問い」ってなんやねん?と思われる方も多いかもしれませんね。鹿の鳴き声を聞いたことがあるでしょうか?「ケーン」とか「キューン」といった擬音語で表されることがありますが、なんともいえない遠くへ響く声です。秋になると、鹿は発情期に入りますから、どこかにいる愛しい妻(予定)を呼ぶ切なる声なんですね。ちなみに大文字山に秋の夜中入ると、声がたくさん聞けますよ。
「かなし」という古語は、哀しいとも愛しいとも意味が取れます。おそらく心中に迫る切なる思いという意味では出発点を同じくしていると思われます。秋は何だか人恋しくなる「かなし」い季節ですね(とかよく言われますよね)。
以上、季節の話題「紅葉」を紹介してきました。京都の秋は美しいですよ。ぜひいらしてくださいね。