京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年10月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
613-8.内密出産の指針 法整備へ向けた一歩に/2022/10/06 京都新聞
615-4.医療現場の事故 原因究明に消極的すぎないか/2022/10/19 読売新聞
その①613-8.内密出産の指針 法整備へ向けた一歩に/2022/10/06 京都新聞
本文
内密出産に関する法律はなく、医師法や戸籍法に抵触する恐れがあるため、同病院や熊本市が国に対応のルール化を求めていた。
新指針は、「最も尊重されるべき点は母子の生命・健康の確保」とした上で、医療機関に母親の身元情報の永年保存を求めたほか、首長の職権で戸籍を作成できることを明示した。母子の支援に児童相談所や都道府県など関係機関にも連携を求める。
同病院の対応をほぼ踏襲する形ながらも一歩前進だろう。
とはいえ医療現場の責任は重く手続きも煩雑だ。母親の氏名や住所、生年月日などの身元情報を確認して保存し続け、開示に関する母親との同意内容の記録も求められる。医師らは診療録を作り、子どもを要保護児童として児童相談所に通告し、戸籍作成に必要な情報も提供しなければならない。
指針は内密出産を「推奨するものではない」との立場であり、これではためらう医療機関が多いに違いない。責任を医療現場にだけ押し付けず、公的な機関がより積極的に関わるべきであろう。
望まない妊娠で赤ちゃんを遺棄する事案が後を絶たない。内密出産は妊婦と赤ちゃんを守る「究極の緊急保護」とされる。
613-8.内密出産の指針 法整備へ向けた一歩に/2022/10/06 京都新聞
キーワード
- 内密出産
- ガイドライン
- 第三者提供卵子による体外受精
解説
「内密出産」については、9月度のブログ【『社説集』2022年8月まとめ④ 604-15.家族、いのちとは問う 「ベイビー・ブローカー」で/2022/08/05 中外日報】の中でも取り上げました。「内密出産」とは、家庭との関係や経済難、また性被害などによって、身元を明かさないまま病院において出産することをいいます。今回の記事では、国策定の指針(ガイドライン)に、内密出産についての取り扱いが明記されたことが報じられています。
内密出産は現在、熊本県慈恵病院でしか行われていませんが、「究極の緊急保護」としての役割があります。「赤ちゃんの遺棄」という社会的な問題が存在している限り、当面の対策として必要になるでしょう。
内密出産のように、現実に起きたことに対して、後追いで国が対応していく、ということがしばしばあります。
たとえば、2020年には第三者提供精子・卵子によって生まれた子どもの親子関係を規定する法律が制定されました。2022年度現在、子どもの「出自を知る権利」などについての内容が盛り込まれた法案が議論されています。
第三者提供精子による出産や第三者提供卵子による体外受精のいずれも、生殖補助医療にかかわる法律のない中で行われるようになりました。
無精子症の場合、精子提供を第三者に求めるしか挙児を得る手段はありません。また、第三者提供卵子による体外受精は、病気で卵子を形成できない場合、代理母出産以外で子どもをもうける唯一の手段となります。現状の日本においては、姉妹間の卵子提供が可能でない場合、海外に卵子提供者を求めることになります。
技術の進歩や社会の変化に応じて、国も柔軟な対応をすることが求められるでしょう。
その②615-4.医療現場の事故 原因究明に消極的すぎないか/2022/10/19 読売新聞
本文
医療事故調査制度は、報告と調査が適切に行われる形に改める必要がある。当事者の医療機関だけで判断するのではなく、第三者機関や学会が判定にかかわったり、報告の基準を設けたりするなどの対策を検討してはどうか。
医療事故の報告をすると、病院の評判が落ちるのではないかという心配から、消極的になる傾向もあるという。だが、調査しなければ、原因もわからぬまま再び問題が起きかねない。遺族の声に耳を傾けることも大切だ。
キーワード
- 医療事故
- 医療過誤
解説
『当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの』が、「医療事故」の定義です。一方で、「医療過誤」とは、「過失のある医療事故」です。区別する必要がありますね。ポイントは過失の有無です。
事故の調査については、基本的にその医療機関内で完結することになります。医療事故について客観的な視点からの調査を求めたい遺族にとっては、第三者機関の介入を期待するのも当然のことでしょう。
遺族の納得が得られ、かつ再発防止につながる調査がなされることが望まれます。
終わりに
いかがだったでしょうか。
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