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『社説集』2022年10月まとめ④

『社説集』2022年10月まとめ④

 京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。

 今回は、『社説集』2022年9月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。

注目2本

613-12.国語世論調査 漢字を書く力伸ばしたい2022/10/08 産経新聞

615-13.アーバンスポーツ 岡山の街づくりに生かせ/2022/10/23 山陽新聞

その① 613-12.国語世論調査 漢字を書く力伸ばしたい2022/10/08 産経新聞

本文

 興味深いのは、生活の変化とコミュニケーションに関する意識を問うた結果である。「情報機器の普及で言葉や言葉の使い方が影響を受けると思うか」という問いに対し、「思う」と答えた人が全体の9割を超えた。

 その影響を尋ねると、「手で字を書くことが減る」「漢字を手で正確に書く力が衰える」とした人がともに89%にのぼった。

 漢字は表意文字である。「峠」や「榊」など日本で作られた国字もあるが、ほとんどは古代中国で生まれて日本に伝わり、やがて、ひらがなやカタカナを生んだ。いわば日本文化のプラットフォームだ。勉学だけでなく、日常生活でも漢字の習得は欠かせない。小中学校の授業などで、何度も手で書いて覚えた経験があるだろう。

 ところが、パソコンやスマホの普及に伴い、日常から「手書き文化」が消えつつある。読み方を入力すれば、即座に同音異義の漢字が並んで選ぶだけですむからだ。文章を書くスピードも格段に速くなるため、利便性と合理性を求めた自然の結果といえるだろう。

613-12.国語世論調査 漢字を書く力伸ばしたい2022/10/08 産経新聞

キーワード

  • 表意文字
  • 手書き文化

解説

  先月度の『社説集』まとめブログの中でも、「国語世論調査」についての読売新聞の記事を紹介しました。今回は、産経新聞のものを取り上げます。

 読売新聞の記事よりも、産経新聞の記事は、「漢字の習得」や「手書き文化」についての言及が多いです。

 「漢字」は表意文字=概念(意味)を表す文字ですが、アルファベットを代表とする世界の文字は、ほとんどが表音文字=音を表す文字です。さらにいえば、日本語は表意文字(漢字)と表音文字(かな)を併用しています。このハイブリッド性が日本文化の面白い点といえます。←現代文ではしょっちゅう見られる日本文化論です。覚えておくと役立ちます。

 先日、『メッセージ』という映画をNetflixで観ました。現代を代表するSF作家テッドチャン原作です(最新作『息吹』も最高です。表題作の短編『息吹』が白眉だと思います。個人的には、読後感が谷川俊太郎の『二千億光年の孤独』に近いと思いました)。言語学者が突如現れた異星人と言語的なコンタクトを試みるという話なのですが、その中で(以下軽いネタバレ)異星人の扱う文字が「表意文字」であると判明する場面がありました。表意文字が世界でも珍しいことを考えると、表音文字文化圏の人々にとっては、異世界の文字体系と捉えられるかもしれませんね。両方持っている日本語はなかなか面白い存在なんじゃないでしょうか。

 ところで、「手で書く」という作業は、学習においても、内容の整理や理解に良い効果をもたらすことがあると考えられます。大事なことは、「手書き」と情報機器を用いた速記・写真保存などを、目的に応じてうまく併用することでしょうね。

 デジタル学習/アナログ学習といった対立も、教育現場の工夫によって十分解消、両立できると思います。京都医塾でも、iPadを使った授業が行われていますが、全部が全部iPadを使わせているわけではなく、「書く」作業が有効な場合は手書きをさせることがあります。

その② 615-13.アーバンスポーツ 岡山の街づくりに生かせ/2022/10/23 山陽新聞

本文

 アーバンスポーツ4種目の大会を同時開催するイベントが先月、岡山市中心部で開かれた。自転車BMXフリースタイル・パークの会場となった下石井公園は、ジャンプ台や選手を映す大型スクリーンが設置され、エンターテインメント空間に。空中で華麗な技が決まるたび、大きな拍手で盛り上がった。

 先月発足した岡山県アーバンスポーツ協会が旗揚げイベントとして企画した。11月に市中心部で行われる歩行者天国でも、BMXなどのパフォーマンスを披露する計画だ。

 県内には全日本フリースタイルBMX連盟の拠点があり、昨年の東京五輪に出場した大池水杜さんら有力選手がいる。来年度には岡山理科大付属高に全国初のアーバンスポーツ部が創設される。競技の裾野を広げるとともに、都市型スポーツという特性を生かして街づくりにもつなげていきたい。

 東京五輪ではBMXをはじめ、スケートボード、スポーツクライミング、バスケットボール3人制など若者に人気のあるアーバンスポーツが採用され、注目を集めた。2024年のパリ五輪ではブレイクダンス(ブレイキン)が加わる予定になっている。いずれも街中から生まれ、大がかりな施設を必要としない競技も多い。遊休地や空き店舗などで楽しめるようにすれば、市街地に若者を呼び込み、にぎわいをもたらす効果が見込めるだろう。

615-13.アーバンスポーツ 岡山の街づくりに生かせ/2022/10/23 山陽新聞

キーワード

  • アーバンスポーツ

解説

 本稿の執筆者(石田)の趣味はクライミングです。特にボルダリングに力を入れています。・・・と述べたところで、「クライミング」と「ボルダリング」の違いって、わかりませんよね。

 「クライミング」とは、岩や壁を登ることの総称、「ボルダリング」は「クライミング」の中でも、主に4m前後の岩や壁を、ノーロープで登る行為をいいます。「ボルダリング」は「クライミング」の一形態です。

 ちなみに、巷でいう「スポーツクライミング」は主にインドアで行われるクライミングを指します。

 日本はスポーツクライミングの分野で世界をリードしていて、年間を通して行われるワールド杯では上位を独占することがあります。すごいですね。

 インドア(ないしインドアに準じるほど安全性の確保されたアウトドア)のクライミングは「何回落ちてもいいが、その分ハードな動きが求められる」という方向に進化していきます。これは登山におけるクライミングと根本的な思想的部分で違うところです(登山では基本、落ちてはいけない)。

 壁の中でダッシュしたり、飛び跳ねたりと、動きが複雑化、派手化していきますが、これがまさしく「アーバンスポーツ」となりうる必要条件なんじゃないでしょうか。スタイリッシュでクールな方向ですね。都市の駅近のビルの地下とかに、クライミングジムはよく立地しています。

 少数(ないし個人)で、小スペースで、短時間でも楽しめてかっこいい、このあたりがアーバンスポーツの条件なのではないかと、考えてみました。

 都市で生活していると、どうしても運動不足になりがちですね。アーバンスポーツの浸透は、都市生活者の健康維持の観点からもよいことではないかと思います。

 勉強においても、勉強に取り組む直前に適度な運動をしておくと、能率が上がるというような研究があるそうです。京都医塾では、朝の散歩を推奨しています。太陽の光を浴びて、気持ちを前向きにして勉強に集中することも大切ですね。

終わりに

 いかがだったでしょうか。

 京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。

 付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。