京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年8月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
604-3.がん検診 コロナ下、受診控え禁物/2022/08/07 秋田魁新報
605-5.全数把握見直し 早急に現場負担の軽減を/2022/08/13 神戸新聞
その➀604-3.がん検診 コロナ下、受診控え禁物/2022/08/07 秋田魁新報
本文
新型コロナウイルスの感染が広がって以降、重いがんと診断される人が増える傾向がうかがえる。コロナへの感染を危惧し、がん検診の受診を控える動きが影響しているとみられる。がんの早期発見・治療のためには、コロナ下であっても検診が欠かせない。定期的な受診に努めたい。
秋田大大学院医学系研究科と県総合保健事業団が県内11のがん診療拠点病院のデータを調べたところ、2020年に最も進行度の高いステージ4の食道がんや胃がんと診断された件数は、それ以前の4年間の平均に比べて7・2%多かった。この年は3月に県内でのコロナ感染が初めて確認されて以降、流行が本格化していった。
緊急事態宣言が初めて全国に発令された4~5月を中心に、感染防止を目的にがん検診を休止する自治体や団体が全国で相次いだ。その後、検診が再開されるようになってからも、感染を警戒した受診控えの傾向が続いたとみられる。検診を受けていれば早期に発見できたのに、重い状態に進行してから見つかったケースが多数あった可能性が考えられる。
2022/08/07 秋田魁新報
キーワード
- 新型コロナウイルス感染症
- 受診控え
- 生活習慣病
- かかりつけ医
解説
新型コロナウイルス感染症の蔓延にともなう大きな問題の一つとして、医療体制の逼迫があります。新型コロナウイルスへの対応に医療資源が割かれるなかで、通常の医療(日常の診療や救急外来など)にも影響が生じています。
一方で、今回の記事では、「受診控え」が問題として指摘されています。受診控えとは、医療機関への受診を敬遠する行為のことです。新型コロナウイルスに感染するリスクを避けるため、検診を受けない傾向が強まったようです。
生活習慣病を代表する存在でもある「がん」は、早期の発見によって対処することで、完治を目指せたり、あるいはその進行を遅らせることができたりするものです。
したがって、患者と密接な関係を築く「かかりつけ医」が、コロナ禍においても必要な検診を患者に受けるよう促していくべきでしょう。電話・オンラインによる相談など、対面以外で患者と接触する方法もあります。
その②605-5.全数把握見直し 早急に現場負担の軽減を/2022/08/13 神戸新聞
本文
新型コロナウイルスの流行「第7波」で医療機関や保健所の現場が逼迫(ひっぱく)している現状を受け、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が、対策の見直しが必要とする提言を発表した。
感染者の全数把握をやめ、重症化の恐れがある人の情報のみを集める方針変更や、一般の診療所でも感染者を治療できる体制構築などを求めている。第2段階として、法改正による全面的見直しを想定する。
医療機関には軽症、中等症の患者が殺到し、妊婦や重症化リスクの高い高齢者らが医療を受けられない事態が起きている。保健所も入院調整や濃厚接触者の特定作業で疲弊しており、専門家有志の危機感は十分に理解できる。政府には提言内容を早急に検討してもらいたい。
2022/08/13 神戸新聞
キーワード
- 全数把握
- HER-SYS
解説
新型コロナウイルスの感染状況をつぶさに把握するため、政府はこれまで「全数把握」の方針を継続してきました。「全数把握」とは、重症者のみならず、新型コロナウイルスに感染した患者は軽症・中等症も含めその数を把握するというものです。
ただ、HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)へ登録する作業が膨大で、事務作業に追われるために医療従事者への負担が過大となるなど、問題が指摘されていました。
もちろん、可能な限り全数把握の原則を維持することが理想だとは思われます。一方で、妊婦や高齢者らなどに対し、医療が行き届かないほどに現場が逼迫していることも事実です。
政府には、人命を守るための現実的な対応策を期待したいところです。
参考記事
以下の記事も、「全数見直し」の問題について考えるために、参考にして下さい。
医療機関の報告は現在、国のシステム「HER―SYS(ハーシス)」を通じて行われているが、現場からは「入力項目が多過ぎる」といった不満が出ていた。
事務的な手続きに労力を費やし、肝心の診察や健康観察に時間が割けなくなるようでは本末転倒だ。見直しはやむを得まい。
反面、新しい方式で報告対象から外れる人は、健康観察が行き届かなくなる恐れがある。若者らは軽症で済むことが多いとはいえ、保健所からの連絡がなくなれば、不安を抱く人もいるだろう。
こうした人の相談に応じるため、全都道府県に「健康フォローアップセンター」を設置するという。相談体制の整備は急務だ。
2022/08/25 読売新聞
終わりに
いかがだったでしょうか。
京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。
付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。