京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年8月まとめの③になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
605-1.国立大学の統合 「医工連携」で競争力高めたい/2022/08/10 読売新聞
605-16.認知症にやさしいデザインを/2022/08/13 日本経済新聞
その① 605-1.国立大学の統合 「医工連携」で競争力高めたい/2022/08/10 読売新聞
本文
東京工業大と東京医科歯科大の、理系の有力国立大2校が統合に向けた協議の開始を決めた。
今後、合同の会議を設け、単一の新大学にするのか、運営法人の傘下に2大学を置く方式にするのかを検討するという。
東工大は工学分野に強みを持つが、医学部や大学病院がない。一方、東京医科歯科大は医学専門のため、理工学への対応が十分とは言えない。統合は互いに手薄な部分を補完し合う形になる。
研究レベルが高い伝統校同士が統合を目指す意義は大きい。今後、各地の大学で再編が進む契機になる可能性がある。
2022/08/10 読売新聞
キーワード
- 医工連携
- ゲノム編集
- AI
- ロボット
解説
医工連携とは、医療関係者と工学関係者が連携して、医療にかかわる新技術の開発・新事業の創出を目指す営みのことをいいます。医療機器の開発などは、医学と工学が交わる典型的な例です。また、近年進むAIの活用は医学/情報工学、ゲノム編集の応用は医学/生物工学などと、さまざまな分野で新たな技術の開発が進んでいます。
一つの例を紹介します。藤田医科大学の、「屋内配送向けサービスロボット」です。病院内を、自律走行制御が可能な最新のロボットが駆け回ります。医療従事者の負担軽減に一役買いそうですね。
このように、医工連携の可能性は非常に幅広いものといえます。東工大と東京医科歯科大が統合することで、医工の垣根を超えたアイデアが実現されると期待してしまいますね。
その② 605-16.認知症にやさしいデザインを/2022/08/13 日本経済新聞
本文
私たち一人一人が認知症と向き合い、正しく理解し、この病と共生する社会を築くことがとても大事になる。社会課題を解決するツールとして最近注目されているのが、デザインの力の活用だ。
認知症と共生する街を掲げる福岡市の取り組みが興味深い。自宅や地域で安心して暮らせるように専門家の意見を踏まえ、2年前に「認知症の人にもやさしいデザインの手引き」を作った。
例えばトイレだ。認知症になると尿意を催しても間に合わないことがよくある。トイレがどこなのか迷い、中に入っても便器がどれかすぐにはわからないからだ。
扉の色は壁や床とコントラストをつけ、目線の位置に大きな文字とピクトグラム(絵文字)を併記する。白い便器が識別できるようその周囲は紺色などにする。手引きにはこんな指南が並び、公民館などの施設で導入が進む。
21年には、認知症の人たちから見える世界を描いた書籍や映画が話題になった。こうした視点から、新たなデザインの発想が多く生まれてくることも期待したい。
キーワード
- 認知症
- ユニバーサルデザイン
解説
認知症を理解するための書籍・映画については、『京都医塾おすすめの一冊』でも紹介しています。ぜひご一読ください。
2040年には認知症の高齢者が1000万人弱に達するという試算があります。認知症の原因となる代表的な病は「アルツハイマー病」ですが、投薬などによって進行を遅らせることが、現在医療ができる限界であり、根本治療の方法はありません。高齢化が進む中で、認知症患者が増加することは避けられません。認知症患者とともに生きる社会づくりが必要です。
その意味で、「ピクトグラム」のようないわゆる「ユニバーサルデザイン」はより注目を集めていくでしょう。「ピクトグラム」とは、絵文字や記号を用いて、示したい情報を直感的にわかるよう図示すること。東京オリンピックの開会式でも話題になりました。「ユニバーサルデザイン」とは、年齢や性別、身体状況など、人それぞれの個性や違いにかかわらず、暮らしやすい社会を実現するためのサービスを提供していこうという考えのことです。
いわゆる「健常」な人に合わせた設計に終始するのでなく、社会のあらゆる場面で、さまざまな立場の人に対する配慮がなされることが望ましいですね。
終わりに
いかがだったでしょうか。
京都医塾では、全国の新聞社説から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。
付け焼き刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大切ですよ。