京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年9月まとめの③になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
610-5.「希望する子ども数」の大幅減に危機感を/2022/09/13 日本経済新聞
612-6.産後ケア 孤立防ぎ寄り添う支援を/2022/10/02 京都新聞
その① 610-5.「希望する子ども数」の大幅減に危機感を/2022/09/13 日本経済新聞
本文
若い世代の結婚や出産への意欲が大きく低下している。国立社会保障・人口問題研究所の2021年「出生動向基本調査」によると、未婚の男女(18~34歳)のうち「いずれ結婚するつもり」という人は、男性で81.4%、女性が84.3%と、過去最低になった。
結婚意向のある女性が希望する子ども数の平均も、15年の前回から0.23人も減少し、1.79人と初めて2を割り込んだ。男性も1.82人と、やはり減っている。
新型コロナウイルス禍による先行き不安が、若者の心理に影響したのは確かだ。ただ未婚化や少子化の傾向はコロナ前から明白だった。このままでは少子化が想定以上に加速する。危機感を持って対処する必要がある。
家族を持つかどうかはもちろん個人の選択だが、若者を後ろ向きにさせる環境要因を取り除くのは、政府や企業の責務である。
キーワード
- 合計特殊出生率
- 希望出生率
- 未婚化 晩婚化
解説
今回の「出生動向基本調査」では、若い世代の希望する子ども数の平均が落ち込んでいることがわかりました。
「希望出生率」ということばがあります。希望出生率とは、若い世代における、結婚、出産に関する希望がかなうとした場合に想定される出生率のことです。現在、政府は希望出生率の目標を1.8と掲げています。若者の雇用安定・待遇改善や、結婚・妊娠・子育てに関する切れ目のない支援、働き方の改革など、結婚・子育てがしやすい環境を充実する取り組みに着手しています。
一方で、日本の「合計特殊出生率(=一人の女性が一生のあいだに産む子どもの数)」は2021年が1.30であり、少子化傾向に歯止めがかからない状況です。
先進国では一般に少産少子社会への人口転換が進みます。またライフスタイルの多様化により、未婚化・晩婚化が進行します。つまり少子化は避けられないことですが、問題はそれがあまりに急速な勢いで進行していることにあります。即効性のある対策はないかもしれませんが、まずは、政府や企業の積極的な働きかけによって、産む意欲を減退させるような環境的要因を取り除いていく必要があるでしょう。
その② 612-6.産後ケア 孤立防ぎ寄り添う支援を/2022/10/02 京都新聞
本文
厚生労働省は、出産後の授乳指導や育児相談など「産後ケア」の実施状況について、全自治体の実態調査を始めた。
出生数や産後ケアの実施件数、支援が必要な親をどのように把握し、事業を周知しているか調べる。担い手の確保やケアの質向上といった課題を把握し、本年度中にも自治体向けの指針を策定するという。
出産した女性は、ホルモンの乱れや子育てに対する不安と疲労の蓄積で、抑うつ状態になりやすい。産後女性の10人に1人が気分の落ち込みや食欲不振などの産後うつを経験するとされる。重症になると自殺や虐待につながる恐れもある。
(略)
今月から、妻の産休期間中に夫が取得できる「産後パパ育休」(男性版産休)の制度が始まった。子どもの誕生から8週以内に、計4週間まで2回に分けて休暇を取ることができる。
男性の育休取得率は年々増加しているが、欧米に比べ低水準の13・97%にとどまっている。育児や家事をいっそう分かち合うことも、産後ケアにとって重要だ。
キーワード
- 産後うつ
- 男性育休 産休
解説
産後の健診、助産師の自宅訪問のなかでは、「育児について大変だ、つらいと思うことがありますか」などにような、母親のメンタルヘルスに関する質問があります。
本ブログの執筆担当(男性)は現在まさに育休中ですが、たしかに子育てのなかにはメンタルを損なうかもしれないと感じられる瞬間があります。
たとえば、子どもの夜泣きです。新生児であれば、約3時間ごとに授乳を必要とします。夜中も同様であり、親はどうしても寝不足になります。うまく両親で分担できればよいですが、担当が一人だと、体力的にも精神的にも大きな負担となります。
また、授乳間隔が約3時間おきとはいうものの、新生児はいつ泣くかわからず、またなかなか泣き止まず、対応する親は「うまく育児ができていないのではないか?」などと、心配をかかえがちです(完璧主義的な傾向がある人なら、余計に負担に感じるのではないでしょうか)。
「産後うつ」による自殺なども社会的に大きなトピックになっているなか、出産・育児がしやすい環境づくりは喫緊の課題です。男性の育休・産休制度を整備し、育児参加を促すことは、安心して希望する数の子どもを産み育てられる社会づくり(つまり希望出生率の向上)につながるでしょう。
終わりに
いかがだったでしょうか。
京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。
付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。