京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年9月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
609-15.継体天皇研究 古代の日本海交流に注目/2022/09/06 福井新聞
612-16.国語世論調査 手書きの大切さ再確認したい/2022/10/01 読売新聞
その① 609-15.継体天皇研究 古代の日本海交流に注目/2022/09/06 福井新聞
本文
越国(こしのくに)出身といわれる継体天皇に関する研究が新たな展開をみせている。鳥取県米子市でこのほど開かれた継体に関するシンポジウムで、山陰と九州、北陸(越前・若狭)をつなぐ古代の壮大な日本海交流が注目された。
一方、県内では近年、六呂瀬山古墳群(坂井市)、横山古墳群(あわら市・坂井市)の調査から、継体天皇即位前後の状況も浮かび上がりつつある。今後も地域の歴史を掘り下げ、地域間交流など幅広い視野で研究を深めたい。
シンポジウムは古代から日本海側の交通拠点として栄え、歴史遺産が多く残る米子市の淀江地区で、東大大学院などが開いた。
淀江では、石馬と呼ばれる古墳に立て並べた石製品が本州で唯一発見されている。もともと5世紀から6世紀の九州の古墳でみられ、中でも、継体と関係があった筑紫君磐井(つくしのきみいわい)の墓とみられる岩戸山古墳(福岡県)が有名。このためシンポジウムでは、岩戸山の石製品を製作した石工集団の一部が淀江に派遣されたとの見方が示された。
また、九州系の横穴石室が山陰に集中し、若狭や越前の大首長墳でも採用されている。さらに、九州や若狭・越前では朝鮮半島製の装身具や冠が出土。継体が天皇に即位した背景に「北陸と山陰、九州、朝鮮半島との間に日本海を介して交流や交易が頻繁に行われていた」との指摘があり、日本海沿岸地域の首長間ネットワークの重要性が強調された。
609-15.継体天皇研究 古代の日本海交流に注目/2022/09/06 福井新聞
キーワード
- 継体天皇
- 筑紫君磐井
- 五経博士
- 冠位十二階
解説
「継体天皇」は6世紀の大王(おおきみ、天皇のこと)で、強烈なキャラクターで知られた武烈天皇の次に即位しました(ちなみに天皇に死後送られる諡号(しごう)に「武」や「神」という字が使われている場合、その天皇は生前すさまじいパワーを発揮した可能性が高いです。はじめの大王である神武天皇しかり、天皇という呼称をはじめて用いた天武天皇しかり。)
彼は越前国にゆかりがあるそうですが、京都のお隣滋賀県にもルーツがあります。お父さんが近江高島郡出身のようです。高島は日本国内でも珍しい「アドベリー」の産地です。甘酸っぱい味を一度ご賞味あれ。ちなみに「アドベリー」の「アド」は高島市を流れる「安曇川」の「アド」です。
継体天皇の治世で受験日本史的に知っておかなければならないことは2つ。
- 筑紫国造磐井の乱平定
- 五経博士、儒教を教えにくる
筑紫国は当時文明の最先端。大陸に最も近い場所だからです。そんな要所を治めていたのが現地の豪族である国造、磐井でした。彼は新羅(朝鮮半島の国)と結託して大和朝廷と対立します。継体天皇は物部麁鹿火(もののべのあらかい)を派遣して磐井を打ち倒しました。
五経博士は儒教の経典である5つの書、五経を教授する官職です。百済(朝鮮半島の国、B。日本と仲良し)から儒教を教えにはるばる日本まで来てくれました。
儒教は7世紀初頭制定された官位制度「冠位十二階」にも影響しています。江戸時代に盛んに研究された「朱子学」も儒教の一派です。それほど日本史に深い影響を与えた思想がこのころ伝来したんですね。
その② 612-16.国語世論調査 手書きの大切さ再確認したい/2022/10/01 読売新聞
本文
文化庁が全国の16歳以上を対象に実施した2021年度の「国語に関する世論調査」の結果が公表された。全体の82%が「国語に関心がある」と答え、関心がある点は「日常の言葉遣いや話し方」「敬語の使い方」が多かった。
言葉や言葉の使い方については85%が「社会全般に課題がある」と回答した。中でも「改まった場で、ふさわしい言葉遣いができない」「インターネットでの炎上のように、中傷や感情的な発言」などを問題視する人が目立った。
言葉は人柄を表し、使い方によっては、相手を傷つけることもある。SNSを使って誰もが発信できる時代だが、それ故、言葉を介したコミュニケーションのあり方に悩む人も少なくないだろう。
パソコンやスマートフォンの普及で、言葉や言葉の使い方が影響を受けると考える人は91%に上った。「手で字を書くことが減る」「漢字を書く力が衰える」という懸念が圧倒的に多かった。
キーワード
- 敬語
- ウチとソト
解説
取引先の部長があなたの会社に訪問してきたとします。その部長に対して、「社長がすぐにいらっしゃいますので、少々お待ちください」と言ったとします。この言い方は正しいでしょうか?
敬語を正しく学ぶということは、「ウチ(身内)とソト(身内以外)」という日本文化にとってたいへん重要な関係性を知ることでもあります。上記の例であれば、会社のウチ・ソトという関係を意識すれば、自社の社長よりも他社の部長を立てたいと思うはずです。「いらっしゃる」=尊敬語ではなく、「参る」という謙譲語を使った方が適切だったと言えるでしょう。
日本文化の中で生きるためには、このような関係性への細やかな配慮を行き届かせた表現を随所で駆使しなければなりません。配慮が至らなければ「うまく話ができない」「円滑なコミュニケーションが取れない」と思われてしまうかもしれません。それは患者との信頼関係の構築が必須である医師にとって致命的なことです。「TPO(time,place,occasion)を弁える」といっても、自分が弁えているつもりでは意味がありません。他者からそう評価されるためには、正しい言葉遣いが必要になります。
京都医塾では、言葉や言葉の使い方について、面接・小論文指導の中でしっかりと指導してまいります。一朝一夕では身につかないものだからこそ、継続的な練習が必要になります。
終わりに
いかがだったでしょうか。
京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。
付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。