京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2022年9月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事2本を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
608-5.子どもの口腔衛生「家族の心掛けが鍵を握る/2022/09/03 陸奥新報
612-5.75歳以上の医療費 現役世代の負担抑えねば/2022/10/01 山陽新聞
その① 608-5.子どもの口腔衛生「家族の心掛けが鍵を握る/2022/09/03 陸奥新報
本文
睡眠時に口呼吸をしている児童や猫背の児童には歯列(歯並び)に問題を抱えているケースが多いことが、弘前大学COIと生活用品メーカー「ライオン」による、黒石市内の小学生を対象とした歯列調査の中間報告で示された。
中間報告は2019~21年度に実施した調査のまとめ。歯並びの悪さが生活習慣に影響するのか、それとも生活習慣の悪さが歯並びに影響するのかといった因果関係は現時点で分かっていないが、それら以外にも歯列の悪さと関連がある生活習慣はありそうだ。
歯列調査は23年度までは継続が決まっている。調査で得られる新たな知見が、子どもの口腔(こうくう)衛生に対する父母らの意識の高まりや、将来的には歯列に問題を生じさせるリスク行動の解明と予防などにもつながればいい。
2022/09/03 陸奥新報
キーワード
- 口腔ケア
- 生活習慣病
- 国民皆歯科検診
解説
米国では一般的といわれる「歯列の矯正」ですが、日本ではあまり普及していません。コロナ禍において、日本と比べ、欧米圏ではマスクの着用に忌避感があったように、コミュニケーションにおける「口」の重要性が高いのかもしれませんね。
今回の記事では、「睡眠時の口呼吸」をする、あるいは「猫背」である児童は、歯列に問題を抱えているケースが多いと書かれています。
口腔の健康は、全身の健康にも大きな影響を与えます。たとえば、「食べる」機能に支障が出れば、栄養状態が悪くなります。糖尿病などの生活習慣病にもつながるかもしれません。また、近年では認知症との関係も指摘されています。
政府は「骨太の方針2022」のなかで、「国民皆歯科検診」を具体的に検討することを盛り込みました。健康診断と同様に、定期的に歯科検診を受ける機会があれば、口腔が関係するさまざまな健康リスクを減らすことができます。それは、ひいては国家財政を圧迫する医療費の削減のために、一役買うかもしれませんね。
その② 612-5.75歳以上の医療費 現役世代の負担抑えねば/2022/10/01 山陽新聞
本文
75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で、原則1割となっている窓口負担がきょうから変わる。新たに2割負担の枠が設けられ、単身で年収200万円以上、2人以上の世帯は320万円以上など一定の収入がある人が対象となる。加入者の2割の370万人が該当する見込みである。
高齢者も負担能力に応じて支え手になってもらう「全世代型社会保障」の一環だが、物価が上昇する中、対象者は家計の圧迫要因が加わる。「受診控えを招く」との懸念も出ており、政府は影響を注視しなければならない。
キーワード
- 後期高齢者
- 健康寿命
- 国民皆保険
- 公的医療保険
解説
一般的に「高齢者」とは65歳以上の人のことをいいますが、「後期高齢者」とは、75歳以上の人のことを意味します。
(まったく余談ですが、本ブログの筆者は先日、「稲川淳二の怪談ミステリーナイトツアー2022」を観に行ってきました。稲川淳二先生、御歳75歳で、一回も噛まずに講演を終えられました。畏敬の念しかありません。達人ですね。)
75歳ともなると、いわゆる「健康寿命」に達します。つまり、生活習慣病など、なんらかの健康上のトラブルを抱えながら生きていく場合が多くなります。そうなると、継続的な医療支援を必要とするので、そのぶん医療費も嵩むことになります。
医療費はもちろん、個人がすべて負担するものではありません。「国民全体で医療費を負担し、支え合おう」という「国民皆保険制度」のもと、公的医療保険制度に加入する人(およそすべての国民)、および国庫からの支出で医療費が賄われます。
国全体の医療費が上昇するなか、記事にあるように、負担能力のある後期高齢者には一定の負担を求めることもやむを得ないかもしれません。しかしそのために、「受診控え」など、医療を必要とする人が医療にアクセスしづらくなるような状況は、絶対に避けなければなりません。
終わりに
いかがだったでしょうか。
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付け焼き刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大切ですよ。