京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2023年1月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
626-12.終活とデジタル 端末内の「遺品」早めに整理を/2023/01/07 読売新聞
629-12.死への感受性 若者の死生観に向き合う/2023/01/25 中外日報
626-12.終活とデジタル 端末内の「遺品」早めに整理を/2023/01/07 読売新聞
本文
自分の死後、パソコンやスマートフォンの中にある文書や画像、銀行口座へのアクセス権限などをどうするのか。デジタル社会となって、新しい難問が浮上している。
スマホなどのデジタル端末に、住所録や画像、文書などを収めている人は多い。持ち主が亡くなった場合、端末内のデータは「デジタル遺品」と呼ばれ、一般に取り扱いは遺族らに委ねられる。
だが、家族がパスワードを知らず、端末のロックを解除できないケースが珍しくない。故人の友人や知人の連絡先を記した住所録を確認できず、亡くなったことを知らせられない場合がある。
葬儀や相続の手続きで慌ただしい中、残された家族を困惑させるのは故人も本意ではなかろう。
近年は、通帳がなく、定期的に郵便物も届かないインターネット銀行やネット証券を利用する人も少なくない。家族らが事前に口座の存在を知らなければ、財産が放置されたままになりかねない。
音楽や映画の配信を定額利用していることを知らない場合、契約を打ち切ることもできない。
最近は、人生の終わりを想定して準備をする「終活」が広がっている。あらかじめ家族と資産や契約の状況などを話し合い、情報を共有しておくことが大切だ。
626-12.終活とデジタル 端末内の「遺品」早めに整理を/2023/01/07 読売新聞
キーワード
- 終活
解説
「終活」という言葉は広く社会に浸透した印象がありますが、2010年ごろ広まった造語です。「人生の最期に当たって、遺言状を残したり、物品的遺産、社会的関係を整理したりすること」であるといえるでしょう。私の90代の祖父は数年前、京都の寺院の墓地にお墓を購入しました。「整理」とはまた違いますが、それもまた一つの終活ですね。
昨今は、高齢者であっても重要な情報をデジタル化している場合が多く、その場合本人がアクセス方法を残しておかなければ遺族がアクセスできなくなります。ネットで検索すると、「デジタル終活」という言葉でたくさんヒットします。デジタルのデータストレージ・共有サービスの広告サイトに誘導されます。それほどニーズがあるのでしょうね。
629-12.死への感受性 若者の死生観に向き合う/2023/01/25 中外日報
本文
「Z世代」と呼ばれる若者、特に現代の大学生が「いのち」や「死」についてどんな考えを持っているのかをうかがわせる興味深い授業が東洋大で行われた。浄土宗総合研究所員であり自死問題など社会的課題に関わる小川有閑・蓮宝寺住職が担当し、毎回ゲスト講師を招いての連続講義だ。
浦上哲也・浄土真宗なごみ庵住職は、主催する「死の体験旅行」という、自らの最期を想定していのちを考えるワークショップについて講義。がんになり死に向かう過程で家族友人など大事にしている人や仕事や趣味、好きな物事を徐々に手放していくというリアルな疑似体験で、死の間際に手放すのは「親」というケースが多いことや、体験者は自分が様々な人や物事に支えられて生きているのに気付くということを説明した。
これに学生は「死という普遍的なものに向かって進んでいく時間の中で思考が変化し、徐々に死を受け入れていくことができると思った」「大切なものとの関わりが切れてしまうことの意味を知ることは『生』のための活動」「死について考えないようにするのは恐怖を先延ばしにするだけであり、まず向き合い考えるのが大事だ」などのリポートを書いた。
629-12.死への感受性 若者の死生観に向き合う/2023/01/25 中外日報
キーワード
- Z世代
- ACP
解説
一本目とかかわりの深い記事を選んでみました。「Z世代」とは、90年代から2010年代前半生まれの年代を指すようですが、誰が決めたわけでもないので、定義は曖昧です。特徴は「生まれながらにしてデジタル・ネイティブ」、つまりIT機器がすでに普及した環境に生まれた世代であるということです。
これに学生は「死という普遍的なものに向かって進んでいく時間の中で思考が変化し、徐々に死を受け入れていくことができると思った」
という部分に注目していただきたいと思います。これは、高齢者を中心とした終末期の患者に対して行われている「ACP」という取り組みに通ずる部分のある考えです。
ACPとは、医師・医療従事者が患者・患者家族と繰り返し話し合いの機会をもち、患者が死に際してどのような考えを持っているか、その意向を聞き取り、またその考えを深めつつ共有する取り組みのことを指します。
終末期においては意思決定能力が失われる場合もあるので、この記事にあるように、「死に向き合って考えを深める」ことは大切であろうと思われます。また、死は個人的なものばかりであるだけではなく、その看取りの過程においては、家族や医療者をどうしても巻き込むものですから、関係する人びとの中でしっかりと話し合われることが必要でしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。
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付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。