京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2023年1月まとめの③になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
626-2.少子化対策 本気なら実行力で示して/2023/01/06 熊本日日新聞
629-9.実効ある少子化対策へ全体像の議論を/2023/01/27 日本経済新聞
626-2.少子化対策 本気なら実行力で示して/2023/01/06 熊本日日新聞
本文
「異次元の少子化対策に挑戦する」。岸田文雄首相は年頭記者会見でこう語り、経済再生とともに少子化対策を今年の重要課題に掲げた。
年末に財源の議論が先送りされた子ども関連予算の倍増について首相は6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」策定までに大枠を示すと明言。「こどもファーストの経済社会」「若い世代がようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現する」とも述べ、4月にこども家庭庁が発足する今年、少子化対策に強力に取り組む意欲を示した。
2022年の年間出生数は初めて80万人を割る見通しで、少子化は国の推計より8年早く進んでいる。出生数の急減に少しでも歯止めをかけなければ、年金、医療などの社会保障制度以前に、国民生活の維持自体が危ぶまれる。
それだけに首相の危機感は理解できる。だからこそ早急に、その「本気」を計る実行力を国民に示してもらいたい。一方で財源確保に向けては、徹底した情報公開に加え、国会をはじめとした全国民的な議論を忘れてはならない。
626-2.少子化対策 本気なら実行力で示して/2023/01/06 熊本日日新聞
キーワード
- 異次元の少子化対策
- こども家庭庁
解説
対策の基本的な方向性は3つです。第1に、児童手当を中心に経済的支援を強化することです。第2に、学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めます。そして第3に、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実です。女性の就労は確実に増加しました。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠です。その際、育児休業制度の強化も検討しなければなりません。小倉大臣の下、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。
上記は、令和5年度岸田内閣総理大臣年頭記者会見から引用しました。メディアで「異次元の少子化対策」という言葉が繰り返し用いられていますが、結局それって何?という疑問が湧いたので、調べてみました。記者会見で掲げた言葉であって、何かしら具体的な中身があったわけではないんですね。
今年4月に「こども家庭庁」が発足します。公式twitterなどの情報をみても、具体的な仕事はよくわからない部分がありますが、令和3年12月のこども政策の新たな推進体制に関する基本方針によると、子どもを取り巻く環境や実態を子ども視点で把握し、すべての子どもの権利を守るための司令塔役を担うということが狙いのようです。各省庁や機関にまたがって行われている子どもに対する支援を、統率、連携、強化するイメージでしょうか。
「異次元の少子化対策」という言葉をむなしいものにしないためにも、実効性のある施策を打ち出してもらいたいところです(また、「子どもファースト」ということは、子育てをする家庭からの意見も大切ということです。子育て世代から声をあげることも重要なことだ、と思います。)
629-9.実効ある少子化対策へ全体像の議論を/2023/01/27 日本経済新聞
本文
少子化対策は1994年から何度も出ている。政府は幼児教育・保育の無償化などを成果にあげるが、対策メニューの一部にすぎない。とりわけ長時間労働などの硬直的な働き方や、女性に偏る家事・育児負担の見直しは、実効性を伴う取り組みが進んでいない。
ドイツでは男性の育休取得と女性の早期復職を促すなかで、出生率を回復させた。日本の取り組みの遅れの背景に、古い家族観や労働観があったのではないか。こうした検証と反省も踏まえ、効果的な少子化対策を詰めてほしい。
この30年で親となる若い世代は一段と減った。出生率が少し上がっても、出生増は望みにくい状況だ。成果が出ないときほど目玉の対策を掲げたくなるが、大事なのは基礎の積み重ねだ。企業も含めた取り組みの加速を求めたい。
629-9.実効ある少子化対策へ全体像の議論を/2023/01/27 日本経済新聞
キーワード
- 保育の無償化
- 男性育休
解説
子育て支援にかんして先進的な取り組みを行っている明石市では、2019年度段階で3~5歳児の保育料無償化を実現していました。出産や不妊治療の支援などもそうですが、ながらく自治体の取り組みに任される状態が続いてきました。保育料は認可保育園で月額平均2万円程度といわれます。所得のある家庭だとより多く負担する必要があります。
「子は社会の宝」という表現がありますが、その言葉の意味を体現していく必要があるのではないでしょうか。近代以降の日本の家族観においては、「よそはよそ、うちはうち」的な家族の責任のもとで子どもを養育する感覚がありますが、「社会の宝」であるならば、子育ては社会化するべきです。少なくとも、経済的理由で「産み控え」が生じるような条件はまず取り払いたいところです。
今般「児童手当の所得制限撤廃」について自民党が検討している旨が報じられました。子育て支援の充実を求める世論の後押しをうけてのことでしょうか。ぜひさらなる踏み込んだ施策まで実行してもらいたいところです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
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付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。