京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2023年1月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
628-11.バックカントリー 相次ぐ遭難、慎重な行動を/2023/01/17 福井新聞
629-14.ネット有害情報 監視強化で事件防止を/2023/01/28 南日本新聞
628-11.バックカントリー 相次ぐ遭難、慎重な行動を/2023/01/17 福井新聞
本文
バックカントリーはパウダースノーを滑る浮遊感が楽しめる一方、必要な装備や道具を持たずに山に入る人が後を絶たない。非圧雪のため雪崩も起きやすく、滑落や天候の急変にも気をつけねばならない。遭難が起きれば大規模な捜索が必要で、2次遭難の恐れもある。
スキー場の管理区域外はコース表示などの目印がなく、コースに戻る方向が分からなくなる。雪崩に巻き込まれたり立木への衝突、雪穴に転落したりする可能性もある。手つかずの自然は危険と隣り合わせだ。
管理区域外は携帯電話の電波が届かない場所も多い。長時間寒風にさらされ命に危険が及ぶ恐れもある。雪に埋もれれば、救出までのタイムリミットは約15分とされ、それ以降は生存率がぐんと下がる。
今季に合わせスキージャム勝山では、注意喚起の看板を増設するなど対策を講じ、勝山署はコース外に出るなどの危険行為をしないよう呼びかけた。
スキー場は自然の中にあるだけに遭難などの危険がつきまとう。県内のスキー場関係者はスキー場利用者に衛星利用測位システム(GPS)や手軽な食料を携帯して利用するよう業界として呼びかける必要性を訴える。コースかどうか迷う場合はスタッフに確認するなど、危機意識を持つことも大切だ。バックカントリーを楽しむ以上、自己責任であることを肝に銘じ、危険性を認識し慎重に行動してもらいたい。
解説
「バックカントリー」という言葉に聞き馴染みのない人が多いと思います。普通、スキーやスノーボードはゲレンデですべるものだと思われています。ゲレンデとはドイツ語で「(限られた)土地・地域」の意だそうです。山の文脈ではスキー・ロッククライミングの練習場のことを指します。練習場ということは、最大限安全が確保されているということです。私はスキーのことはよく知りませんが、たとえばロッククライミングのゲレンデであれば、墜落を防ぐ支点が壊れたり、頭上から落石があったりといった可能性が極力除去されているものです。その一方で、バックカントリーがフィールドとするのは自然です(ある程度滑走記録をもとにしておもむいているとは思いますが)。一歩間違えなくてもあらゆる危険が伴います。
コース外を滑走するからには自己責任となりますが、自己責任であるとはいえ、ひとたび遭難に発展すれば警察を含めた周囲の人間に迷惑がかかります。しかし一方で、だからと言って「決められたコースしか滑走してはいけない」という結論も行き過ぎであることを認識しておきたいところです。記事にもある通り、愛好者は「自己責任であることを肝に銘じ、慎重に行動する」しかないのかもしれません。たとえば「気象情報から雪崩の発生するリスクを評価し、計画の決行/変更/中止を判断すること」が慎重な態度といえるでしょう。
629-14.ネット有害情報 監視強化で事件防止を/2023/01/28 南日本新聞
本文
警察庁は「爆発物・銃器の製造」「殺人や強盗」などをうかがわせるインターネット上の文言について、3月から「有害情報」として削除を依頼する方針を明らかにした。
安倍晋三元首相銃撃事件では、被告がネット情報で銃を自作したと説明したほか、各地で相次ぐ強盗事件の容疑者らは交流サイト(SNS)でやりとりをしていたとみられる。監視体制の強化で事件を未然に防ぐ狙いだ。
ただ、削除依頼に強制力はない。国による違法性の判断の違いから、海外のプロバイダー(接続業者)の場合は削除要請に応じないこともあるという。実効性を高めるための知恵を絞る必要がある。
警察庁は通報を受け付ける民間団体「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)に業務を委託。IHCは「薬物取引」「児童ポルノや売春」などの違法情報と、その他の有害情報に分けて対応し、警察に連絡したり、サイト管理者や接続業者に書き込みの削除を依頼したりしている。
現在、有害情報は「自殺の誘引」だけだが、銃器製造や殺人・強盗のほか「臓器、人身売買」「ストーカー行為」など計7類型を対象に追加する。いずれも生命に危険が及ぶ恐れが高い犯罪に関連しており、抑止につながることが期待される。
解説
Twitter現CEO(すでに退任の意向を表明していますが)イーロンマスク氏は「言論の自由絶対主義」を掲げましたが、フェイクニュースや悪意ある情報の拡散などの観点からの反対意見が多く見られました。Twitterをそのような場にすることとは、また次元の違う話かもしれませんが、やはり情報への自由なアクセスが強みであるインターネットというより広い空間においても、違法性があったり公共にとって有害な情報に対しては強く対応することが必要かもしれません。
たとえば、自殺の誘引を狙った有害情報であれば、うつ病など精神的に失調した患者が悪い方向に影響を受ける可能性があります。また、臓器売買に誘引する違法情報なども、経済的に困窮する人を陥れる可能性があります。
立場の苦しい人をさらなる窮地へ追い込むような情報に、簡単にアクセスできる状況は、今後改善していくべきではないでしょうか。
おわりに
いかがだったでしょうか。
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付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。