京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2023年2月まとめの②になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目2本
630-5.認知症の新薬 効果と課題の見極めが肝心だ/2023/01/30 読売新聞
631-6.臓器あっせん 「野放し」許さぬ抜本策を/2023/02/11 京都新聞
630-5.認知症の新薬 効果と課題の見極めが肝心だ/2023/01/30 読売新聞
本文
認知症の7割を占めるアルツハイマー病の新しい治療薬が、国内でも承認申請された。薬を切望する人の期待にどの程度応えられるのか、しっかり見極めることが肝心だ。
米食品医薬品局(FDA)が、製薬大手エーザイと米国のバイオジェンが共同開発した新薬レカネマブを迅速承認した。企業側はすでに米国で販売を始め、日本でも年内の承認を目指している。
認知症は記憶力などが低下し、日常生活に支障を来す。世界に5500万人の患者がいるとされるが、根本的な治療法はない。
現在、国内で承認されている薬は、いずれも一時的に症状を緩和する対症療法にすぎない。
レカネマブは病気の原因に着目した薬で、初期段階の患者に1年半投与した臨床試験の結果、認知機能低下の進行を7か月半遅らせる効果がみられたという。これまでにない前進だと言えよう。
630-5.認知症の新薬 効果と課題の見極めが肝心だ/2023/01/30 読売新聞
キーワード
- アルツハイマー病
- 対症療法
解説
認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。認知症にはいくつかの種類があります。アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。症状はもの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。
認知症とは認知機能の低下により、日常生活全般に支障が出る状態のことを指し、その原因はさまざまです。たとえば、脳血管の疾患や、あるいは自己免疫性疾患のような内科的な病気が原因となることもあります。しかし、アルツハイマー病は認知症を発症する原因としてとりわけ多いものです。
現在あるアルツハイマー病への対処法は、いわゆる「対症療法」、つまり一時的に症状を緩和するだけで、根治するものではない処置でした。「レカネマブ」もまたアルツハイマー病を根治するものではなく、病気の進行を遅らせるものです。しかしそれでも、一定の効果があがるものであれば、認知症患者が急増する社会にとって希望となりえます。
一方で、「迅速承認」された薬剤は副作用のリスクなどについて慎重に検討することが必要です。社会的ニーズが高い薬剤であればなおさら、安全性についてよく議論されることが求められるでしょう。
631-6.臓器あっせん 「野放し」許さぬ抜本策を/2023/02/11 京都新聞
本文
ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁が臓器移植法違反の疑いでNPO法人理事を逮捕した。
東京都内の40代男性の親族に海外での移植を勧め、渡航・移植費用名目で現金3300万円を支払わせ、肝臓を移植する手術を受けさせた疑いが持たれている。男性は移植後に体調が悪化し、帰国後に家族から生体肝移植を受けたが回復せず、死亡した。
国内の深刻な臓器提供者(ドナー)不足を背景に、海外での移植希望者は後を絶たない。
違法なあっせんは、患者の「健康な生活を取り戻したい」という切実な気持ちにつけこんだ行為であり、許されない。
631-6.臓器あっせん 「野放し」許さぬ抜本策を/2023/02/11 京都新聞
キーワード
- イスタンブール宣言
- (新)臓器移植法
解説
世界のどの国においても臓器の提供は足りておらず、2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が出されたことで、海外渡航による臓器移植に頼っていた日本でも臓器移植法の改正に拍車がかかり、2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に全面施行となりました。
臓器移植ネットワークHPより
「イスタンブール宣言」というものがあります。上記に引用した通り、「移植に必要な臓器は自国内でまかなうこと」を原則とした宣言です。たとえば国内で移植手術が難しい子どもの心臓移植などは、他国に渡って移植を受けなければ助かりません。しかしそれは他国の「移植順番待ちリスト」に割り込むことでもあり、問題がないとはいえません。
移植でしか治療できない病気があり、その患者が多くいる以上、臓器に対するニーズが生じ、そのニーズを満たそうとする動きが生じてきます。合法的かつ倫理的に許容されるレベルで行われればよいのですが、残念ながら、違法な臓器売買や、営利目的が疑われる臓器移植のあっせんなどが行われます。
可能な限り、自国内で臓器を確保しなければなりません。2010年の新臓器移植法は、ドナーとなるための要件を緩和するものでした。しかし、臓器提供体制の不十分さもあって、なかなかドナー(やその家族)の意思を生かせないのが現状です。そのような状況がある限り、臓器ニーズに対する不足は解消せず、違法なあっせんもあとを絶たないでしょう。
終わりに
いかがだったでしょうか。
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