京都医塾国語科では、週に1回『社説集』として、生徒に新聞社説記事を紹介しています。
今回は、『社説集』2023年2月まとめの④になります。➀で紹介した記事から、医学部受験生必見の記事を取り上げ、紹介したいと思います。
目次
注目二本
630-1.社会は生成AIの進化にどう向き合うか/2023/02/04 日本経済新聞
630-6.社会的企業 雇用や産業の創出も期待<地域を考える>/2023/01/30 京都新聞
630-1.社会は生成AIの進化にどう向き合うか/2023/02/04 日本経済新聞
本文
生成AI(人工知能)と呼ばれる新技術が注目を集めている。人の指示に応じて文章や画像、プログラムコードなどを自動で生み出す技術で、社会全般に大きな影響が及ぶだろう。新技術とどう付き合うか、社会の知恵が問われる。
生成AIのなかでも脚光を浴びるのが、米オープンAIが2022年11月に公開した「チャットGPT」だ。対話形式で質問すると、自然な文章で答えが返ってくる。実際に試してみると、AIのコミュニケーション能力が人間にかなり近づいたと実感できる。
利用者の数は世界で1億人を超えたとされ、ロイター通信は「史上最も高速で成長している消費者向けアプリケーション」と報じた。米マイクロソフトがオープンAIに数十億ドル規模の巨額の追加出資をすることも決まった。
キーワード
- チャットGPT
- フェイクニュース
解説
最近巷で話題の「生成AI」。従来、データ分析のような「認識」、「識別」といった分野で活躍の場を広げたAIですが、昨今文章や画像の「生成」に注目が向けられています。
なかでも、「チャットGPT」は一般の消費者でも使えるようになっており、大きな話題になりました。私も少し遊んでみました。例えば「抱腹絶倒のおもしろい話をして」と言うと、答えがすぐに返ってきます。おもしろいのでやってみてください笑
AIの作成した巧妙な(しかし形式的にはまともなのだが意味的な部分で絶妙に支離滅裂な)文章をいくつか読んですぐに思ったこと。「フェイクニュース」との親和性です。何か知りたい用語についてAIに説明を求めると、うまーく体裁を整えつつ、各所に気づかれない程度の嘘を混ぜ込んだ回答を返してきます。もちろんAIに悪気はないのですが、その嘘具合が絶妙なのです。文章ならある程度気付きやすいですが、画像なら、気付きようがないかも・・・たとえば、災害時にさまざまな情報がネット、SNSなどのメディア上で流れるなか、ほんとうの情報はなんなのか、見分けがつかなくなるのでは。
今私が行っているような文章作成が、キーワードさえ読み込ませればワンタッチでできるような未来が近づいているわけですが、情報の信頼性の確保など、気をつけなければいけない点が多々あるでしょう(このまとめ方もチャットGPTっぽい)。
630-6.社会的企業 雇用や産業の創出も期待<地域を考える>/2023/01/30 京都新聞
本文
子育ての支援や過疎地域の活性化、環境の保護をはじめ、社会の課題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」(社会的企業)が急速な広がりを見せている。
営利の追求やボランティアとも異なり、ビジネスとしての収益性を確保しながら、継続的な活動を目指すのが大きな特徴である。
事業の立ち上げを支援する日本政策金融公庫によると、2022年度上半期(4~9月)にソーシャルビジネスへの融資を4200人近くが利用し、融資額は361億円に上った。いずれも前年同期に比べ7割超の大幅増だ。
急激な人口減や新型コロナウイルス流行などを通し、自らの身の回りの地域や働き方、地球環境はじめSDGs(持続可能な開発目標)を見つめ直す契機になっているのではないか。
社会を支えていく新しい形の経済活動として、いっそう環境の整備を進める必要があるだろう。
キーワード
- NPO
- ソーシャルビジネス
解説
「ソーシャルビジネス」とは、記事にある通り、広く社会的課題の解決に取り組む企業のことを指します。もう少し詳しく調べてみると、三つの要素が必要とされています。
①社会性・・・現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。
②事業性・・・①のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。
③革新性・・・新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新たな社会的価値を創出すること。
一方、似た言葉として、「NPO」があります。こちらは社会に広く浸透している印象があります。「Non-Profit Organization」、つまり「営利目的でなく、社会的課題を解決する組織」の意味ですね。誤解されがちですが、「営利目的でない」ということは、「お金がいらない」ということを意味しません。組織維持のために必要な費用は、人件費を含めて確保します。会費を集めたり、寄付を募ったり、自治体から補助金・助成金を受けたりといった形ですね。ボランティア的に無償で活動が行われる場合もあります。「ソーシャルビジネス」は「事業性」が要素にありますから、事業活動の中で継続するための資金繰りができない場合、NPOは必ずしもソーシャルビジネスの要件を満たさないかもしれません。
2022年度より開始された「公共」という科目。私も教科書を購入して読んでみました。ソーシャルビジネスについても、「倫理」や「政経」で学ぶような経済の原理の紹介のあと、資本主義経済の弱点を克服するものとして説明されていました。単語を網羅的に覚えていくだけでなく、現代の諸問題とどう関わるのか、を考えつつ学習してほしいという意図がうかがえました。
終わりに
いかがだったでしょうか。
京都医塾では、全国の社説集から精選した記事を収載した「社説集」を毎週生徒に配布しております。
付け焼刃ではできない小論文・面接対策。コツコツ知識を積み上げていくことが大事ですよ。