京都医塾物理科です。
秋も深まり、めっきりと冷え込む日が多くなってきました。しとしとと長雨も降っており、なかなか気持ちが上に向かない日もあると思います。体調もメンタルも崩しやすい時期ですが、しっかりと栄養と暖をとり、引き続き勉強に励んでいきましょう。
今月は、
・過去問にはいつから手を付け始めるべきか
・11月の勉強のポイント・学習アドバイス
をお届けします!
過去問にはいつから手を付け始めるべきか
先月も同じテーマで記事を書きました。要約すると、
- 過去問題集を入手次第、直ちに「最新年度(昨年度)」のものを解くこと。
→その理由は、①その大学の傾向をつかむ、②残り時間で自分に必要な勉強計画を立てるの2つに集約されます。
- 以上が一段落したら、過去問演習を中断し、これまでの勉強の続きを行っていくこと。
となります。既に実行されている方は、多くの気づきが得られた上で、普段の勉強にも一層身が入っていることと思われます。まだの方は、これからの勉強の方向性を大きく定める機会になりますので、是非すぐに実行してみてください。
以上が、私の意見となります。とは言え、皆さんそれぞれに、様々な事情があることも承知しています。このテーマについては、現時点での学力、科目の得手・不得手、志望校の偏差値(相対的な難易度)、志望校の問題レベル(絶対的な難易度)、国公立or私立、出願可能な地域など、ざっと考えるだけでも様々な要素が絡み合ってきます。そのため、究極的には個々人に依るとしか言いようがありません。本当に信頼できる先生に、相談されるのが一番かとは思います。
それを断った上で、以下ではよくある質問について、私の考えをQ&A形式で回答していきます。
Q. 何年度分解けばいいですか?
A. まずは最新年度をすぐに解きましょう。分析に時間がかけられるなら、その1つ前の年度も解きましょう。それ以降については、入試が近づいてからで十分です。入試本番までには、最低3年度分は解きましょう。5年分は解いている状態が理想的です。余程ほかにすることがない限り(時間が有り余っているということがない限り)、10年分も解く必要はありません。
Q. どういう使い方がオススメですか?
A. 前述の通り、過去問を解く理由は、「①その大学の傾向をつかむ、②残り時間で自分に必要な勉強計画を立てる」の2つに集約されます。これが正しく達成できるよう、可能な限り、本番と条件を同じにして解きましょう(集中できる環境で時間を計って解く、まとまった時間を取り1日で全教科解くなど)。
Q. 志望校以外の過去問は解く必要がありますか?
A. 「必要」はありません。
もちろん、傾向の似た大学や、問題レベルがやや上の大学の問題を解くことに、それなりの意味はあるでしょう。基礎固めが一段落した総仕上げの段階であり、志望校の過去問演習も5年分程度は行った状況ならば、手を出してもよいかとは思います(ただし、そのようなレベルに到達した状況で入試を迎えられる生徒は100人に1人もいないでしょう)。どの大学を解けばよいのかを自分で判断することは難しいと思いますので、周りの信頼できる先生に聞いてみて下さい。
Q. 過去問題集の誤った使い方について教えてください。
A. 過去問題集は、こなすことが目的ではありません。飽くまでも、分析のためのツールです。
11月の勉強のポイント・学習アドバイス
前回のアドバイスで、高校で学習する原子物理全体は、「前期量子論」と「核物理学」の2つに大きく分けられることをお伝えし、前者の「前期量子論」を貫くキーワードとして、「粒子と波の二重性」を覚えていただきました。今回は、後者の「核物理学」における重要なキーワードとして、「質量とエネルギーの等価性」を覚えていただきます。
アインシュタインは、特殊相対性理論という現代物理学につながる重要な理論を提唱しました。その中で、物体が持つエネルギーEは、物体の質量をm、物体の速さをv、真空中の光速をcとして
E=mc^2/√1-(v/c)^2
となることを導きました。この式から、たとえ物体が静止している(v=0)としても、物体はE=mc^2のエネルギーを持つことが分かります(これが、静止エネルギーです)。そして、cが普遍的な物理定数であることから、物体の質量mと静止エネルギーEが比例関係になっています。つまり、物体はただ質量を持つだけで、その質量に応じた静止エネルギーを持つことが明らかとなったため、これ以後の力学において、質量はエネルギーの形態の1つであると考えられるようになりました。これを、「質量とエネルギーの等価性」と呼びます。このエネルギーは膨大であり、1kgの質量は、9×10^16Jという途方もないエネルギーに相当します。
このことは、机上の空論ではありません。多くの核反応では莫大なエネルギー(核エネルギー)が放出されますが、このとき実際に、核反応に関わる原子核や核子全体の質量の和は減少しています。つまり、質量の減少分に相当する静止エネルギーが、別のエネルギーへと変換されて放出されているということです。これを式にすれば、質量の減少分をΔmとして、放出されたエネルギーQはQ=Δmc^2となります。
このように、「核物理学」では、核エネルギーをはじめとする多くのエネルギー計算が求められます。様々な切り口からの問題があることは確かですが、すべての基本はこの「質量とエネルギーの等価性」にあります。現象の理解に躓いたときは、いつでもこの点に立ち返るようにしてみてください。