京都医塾化学科の安逹です。
医学部受験を目指す浪人生のみなさんに化学の学習を1年間通じて、また1日の中でどのように進めていくのが良いかをアドバイスとして記していこうと思います。医学部の問題は難易度が高く、分量も多いので「何から手をつけたらよいか分からない」という方も多いと思います。そんな人のために以下の項目に分けて、化学の勉強法を説明していこうと思います。
・医学部に合格するために必要な力
・初めに手をつけたらいいこと
・学習計画の立て方
・つまずきやすいポイント
これらを一つずつ見ていきましょう。
目次
医学部に合格するために必要な力
まず大前提として基本的な知識の定着は必須です。理論化学であれば各現象や法則の定義や原理、無機化学・有機化学であれば各物質の性質や製法がこれにあたります。
また、医学部の2次試験や共通テストでは分野をまたいだ問題も出題されるので、それぞれの知識を分野間でリンクさせて理解する必要があります。例えば電気陰性度は理論化学で学びますが、これは無機化学の各元素の性質に結びついてきます。
さらに、問題文から情報を読み解く力も必要になってくるでしょう。これに関しては日々の問題演習を通じて身に付けていく必要があります。こうした演習を数多く積んでいくことは制限時間内に問題を解き切るためにも必要な訓練です。
初めに手をつけたらいいこと
では、こうした力を身に付けるには初めに何から手をつければよいのでしょうか。結論から言えば、まずやるべきことは「教科書レベルの定義・用語の定着」です。テキストや参考書を使って先ほど述べた基本的な知識を理解し、必要な時にその知識を引き出せるようになる必要があります。注意してほしいのは、いきなり本番レベルの問題を解くのは逆効果である、ということです。基本が固まる前に難しい問題に挑んでも、学習効果は高まりません。まずは地味ですが、基本をしっかりと固めることが必要です。
学習計画の立て方
基本が大事であることは前項でお話しましたので、ここからは1年間を通じての学習計画と1日の中で化学をどのように学習していくかを説明していきます。
1年間の計画
4月~6月:理論化学の基本知識の定着
7月:無機化学の基本知識の定着
8月:有機化学の基本知識の定着
9月~10月:応用的な問題の演習+各分野の基本知識の見直し
11月~1月:過去問を使っての演習+各分野の基本知識の見直し
1月~3月:本番+試験問題の解き直し+各分野の基本知識の見直し
上記のようなペースで進めていけば無理なく化学の全分野を身に付けつつ、演習も積んでいけます。注意してほしいのは、演習がメインになる9月以降も基本知識の見直しは怠らないようにすることです。せっかく1年の前半で身に付けた知識が本番の頃には忘れ去られていては悲しいですよね?問題を解くことと、基本を確認することは必ずセットで行うようにしましょう。
1日の中での化学の勉強
まずは基本の定着を図る8月までは基本的な知識を参考書・テキストを見ながらまとめるのに1時間。その基本的な知識で解ける基本問題を問題集等を使って解くのに1時間の計2時間が目安になります。そして演習がメインになる9月以降は問題演習に1時間~1時間半。問題で触れた分野の知識の見直しを30分~1時間が目安になります。
つまずきやすいポイント
上記の計画に沿って学習をしていく中で、理解が難しかったり、定着に時間がかかったりする分野もきっと出てくると思います。ここではそんなつまずきやすいポイントと、それに対する対処法を書いていきます。
つまずきポイント1:反応速度・化学平衡
理論化学の中で苦手意識を持っている受験生が多い分野です。この分野に対抗するためには登場する式の意味を時間をかけて理解することが重要です。
例えば、反応速度式であれば、「反応速度(v)は反応物の濃度([A]、[B]など)の何乗かに比例する(比例定数=反応速度定数k)」と式の意味を日本語で説明できるようにしましょう。これを繰り返すことで、登場する数多くの式が徐々に使いこなせるようになります。
つまずきポイント2:物質の製法
接触法、オストワルト法を始め、無機化学には数多くの物質の製法が登場します。身につけるのに苦労した記憶のある方も少なくないでしょう。これに対しては、学習する際に1回あたりの時間よりも回数にこだわると定着を早めることができます。
例えば、一つの製法を学習するのに1時間かけるのであれば1時間かけてじっくり覚えようとするのではなく、20分で内容を流し見することを3回繰り返した方が効率が良いです。
つまずきポイント3:高分子化合物
こちらも苦手としている方が多いのではないでしょうか。高校化学の最後に登場することもあって学習の手が回っていない方も少なくないでしょう。もちろん早期に手を付けるのも一つの手段ですが、この分野をマスターするためには、まず脂肪族、芳香族の知識を確実に身に付けましょう。実は、高分子化合物についてはそこまでに学習している脂肪族や芳香族で登場する物質や反応が多いのです。もちろん新たに覚えなければならないことは少なくないのですが、それは主に単量体(モノマー)についてです。それらを重合して高分子にする際に出てくる反応や官能基については既習の知識で理解できますので、焦らず有機化学の基本知識を定着させるようにしましょう。
最後に
いかがだったでしょうか。
ここまで化学の学習アドバイスを書いてきましたが、いずれにせよ強調しておきたいのは「基本が大事」ということです。途中で書いたつまずきポイントへの対処も基本が身についてこその対処法になっています。一朝一夕に実力が伸びることはありませんが、このアドバイスを参考に、みなさんが臨む結果を得てくれれば幸いです。