京都医塾物理科です。
夏休みも中盤戦、充実した毎日を過ごせていますでしょうか。まだまだ暑い日が続くため、熱中症には気を付けて、引き続き十分な体調管理を行ってください。
さて、今月は、
・波動を克服するヒント
・8月の勉強のポイント・学習アドバイス
として、多くの現役生が苦手とする波動の分野についての解説をお届けします!
波動を克服するヒント
波動は、熱力学の次にコンパクトな分野です。しかし、「何となく波は苦手だ」という声も、しばしば聞かれます。おそらく、このような人の多くは、「波はよく分からないけど、とりあえず公式と結果を覚えよう」とはするけれど、問題の難易度が高くなると糸口すらつかめずにうまくいかないという経験を繰り返しているのではないかと思います。そのような人は、是非以下の記事を読んでみて下さい。ここから少しでも波動を克服するきっかけとなるヒントをつかんでいただき、まとまった時間が取りやすいこの夏休みをそのための時間に充てましょう。
波動で学習する最初の公式は、波の基本式とも呼ばれる「v=fλ=λ/T」です。波動の問題を解く上で、手足のように使いこなしていく公式ですが、皆さんはこの公式がどうして成り立つのか説明できますか?もし、説明できないというのであれば、それは波動分野の入り口から躓いてしまっていることを意味します。理解の端緒は、常に定義の確認からです。まずは、定義から振り返っておきましょう。
・波が伝わる速さv[m/s]:単位時間に波が進む距離
・振動数f[Hz]=[1/s]:単位時間あたりに媒質が振動する回数
・波長λ[m]:波1個分の長さ
・周期T[s]:媒質が1回の振動するのにかかる時間
次に、重要な性質を1つ確認しておきます。
・媒質が1回振動すると、波は1個発生する。
以上を元に、波の基本式を導いていきましょう。まず、「v=fλ」です。いま、「単位時間(1秒間)」だけ波を発生させたとしましょう。すると、
「媒質が1回振動すると、波は1個発生する」ことと、振動数の定義より、
「振動数f[Hz]の波は、単位時間に媒質がf回振動するので、波がf個発生する」ことが分かります。
次に、波長の定義より、これらの波は1個あたりλ[m]の長さとなります。
したがって、単位時間に発生するf個の波は、全体でf×λ[m]の長さとなります。
よって、速さの定義(「単位時間に進む距離」)より、単位時間にf×λ[m]伝わることになるため、これが即ちv[m/s]となります。
いかがでしょうか。非常にシンプルな導出ではないかと思います。もちろん中には、「文字式だけでは抽象的で、すぐには馴染まない」という人もいるかもしれません。そのような人は(そして、そうでない人も)、問題を解く際に登場する数値を用いて、毎回この定義からその意味を確認してみましょう。例えば、「ええっと、振動数が4Hzだから、1秒間で波が4個発生するよな。そして、波長が3mだから、波は1個あたり3mなので、全体の長さは4×3=12mだな。だから、1秒間で波が12m伝わるので、速さは12m/sだな」といった具合です。このように、数値であれば具体的にイメージしやすいので、徐々に馴染んでいくものと思われます。こういった経験を積み重ねることで、今までよく分からない公式を組み合わせるだけだったものが、納得感を通した理解につながっていくため、一歩ずつ自分の力で問題を読み解けるようになっていきます。
1つ分かれば、次も気になるものだと思いますので、「v=λ/T」も導いておきましょう。こちらは、「1周期」だけ波を発生させた場合を考えます。すると、
「媒質が1回振動すると、波は1個発生する」ことと、周期の定義より、
「1周期で、波は1波長進む」ことが分かります。
よって、速さの定義より、時間T[s]で距離λ[m]伝わることになるため、v=λ/T[m/s]となります。
こちらも、やはり非常にシンプルな導出です。問題に登場する数値についても、同様に式の意味から確認して、具体的なイメージを確かなものにしていきましょう。
8月の勉強のポイント・学習アドバイス
このように、物理の定理や公式は、可能な限り定義や重要な性質から理解すべきです。こういった手順をスキップした勉強に走ってしまうと、「何となく波は苦手だ。だから、とりあえず公式と結果を覚えよう」となってしまい、すぐに学力の伸びが頭打ちになります。
なお、多くの受験生が波動を苦手としている原因は、これ以外にも推察されます。というのも、高校物理の教育の現場では、波に関する様々な現象について、その発生の仕組みからの説明が薄いまま、発生した現象そのものが持つ特徴に絞って話が進められることが少なくありません。この場合もやはり、「よく分からないけど、とりあえず公式と結果を覚えよう」と理解を諦める人が多いように感じます。しかし、こうなってしまうと、実験にほんの少し工夫がなされたり、公式そのものの導出に関わるテーマが問題で取り上げられたとき、途端に点数を大きく崩してしまいます。最たる例はドップラー効果で、公式は使えるものの、その導出ができないという人は、経験的にかなりの多数派であると感じます。この状況を克服するためには、現象自体の発生の仕組みに目を向けるしかありません。教科書やノート、場合によっては参考書も併用しながら、発生の仕組み、およびそこからの定理や公式の導出を、可能な限り理解するように努めましょう。
京都医塾では現役生も随時募集しています。また、遠方の方にはオンライン授業も行っています。
下記リンクからお気軽にお問い合わせください。