京都医塾物理科です。
夏休みも中盤戦、充実した毎日を過ごせていますでしょうか。まだまだ暑い日が続くため、熱中症には気を付けて、引き続き十分な体調管理を行ってください。
さて、今月は、
・電磁気を克服するヒント
・8月の勉強のポイント・学習アドバイス
として、多くの浪人生が苦手とする電磁気の分野についての解説をお届けします!
電磁気を克服するヒント
7月の学習アドバイスでは、「7月いっぱいは、『力学、熱力学、波動』の基礎固めに注力する」ことの重要性をお伝えしてきました。それが一段落したこの8月からは、いよいよ電磁気の基礎固めに取り掛かりましょう。電磁気はどうしても範囲が広く、学習が長丁場となるため、腰を据えて取り組まなければなりません。
電磁気は、電気分野と磁気分野の2つに大別され、まずは電気分野から学習が始まります。皆さんは電気分野の最初を学習したあたりで、このように思ったことはないでしょうか。
「クーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』はまあ分かるんだけど、それ以降がなんかよく分からないんだよなあ。電場とか電位とか言葉も抽象的で難しいし、公式もF=qEはいいとして、V=kq/rとかE=kq/r^2とか2乗がついたりつかなかったりでややこしく、覚えられないんだよなあ…」
確かに、電気分野の最初に学習するクーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』は、万有引力の法則「F=GMm/r^2」ともよく似ており、理解しやすく覚えやすい式です。しかし、電気分野のそれ以降については、理論的なつながりについていざ問われると、きちんと説明できないという人も多いのではないかと思います。さらに、教科書には公式もやたらと登場するため、その全てを丸暗記で何とかしようとすると、それぞれが少しずつ似ているために、混同してしまっている様子もよく見受けられます。
この状況を克服するためには、やはり定義からの理解です。電気分野の最重要キーワードは、電場です。皆さんは、電場の定義を自分の言葉で答えられるでしょうか?もし、答えられないということであれば、電気分野の入り口から躓いていることになります。「何度教科書や参考書を見ても、公式が覚えられない…」と投げやりになる前に、まずは電場の定義から確認しましょう。
電場とは、定性的には「電荷に力を与える空間の性質」であり、定量的には「(その位置に電荷を置いたとき)単位電荷(1C)あたりが受ける力」として定義されます。すると、定義より、単位電荷が受ける力がEであるため、一般の電荷qが受ける力は、そのq倍のqEとなります。これを理解できていれば、「F=qE」というのは、当たり前の関係式と思えるのではないでしょうか。また、電場の単位[N/C]も、定義から自明と言えます。
次に、電場という考え方を用いると、距離rだけ離れた点電荷q_1とq_2が及ぼしあう力は、例えばq_2が受ける力に着目すると、これはq_1がq_2の位置につくる電場から受ける力であると解釈できます。すると、この電場は、定義通り「単位電荷あたりが受ける力」として考えればよいので、クーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』において、q_2=1とすれば、q_1が距離rだけ離れた位置につくる電場(の大きさ)となります。よって、点電荷がつくる電場(の大きさ)の公式「E=kq/r^2」(q_1=qとした)が導出されたことになります。この導出の流れを理解できていれば、電場の定義とクーロンの法則さえ押さえておけばよいことが分かります(派生公式である「E=kq/r^2」を積極的に覚える必要はありません)。
8月の勉強のポイント・学習アドバイス
このように、物理の定理や公式は、可能な限り定義や重要な性質から理解すべきです。こういった手順をスキップした勉強に走ってしまうと、「何となく○○は苦手だ。だから、とりあえず公式と結果を覚えよう」となってしまい、すぐに学力の伸びが頭打ちになります(「〇〇」は任意の分野が入ります)。物理において、本当に押さえるべき重要な知識は、他教科に比べると圧倒的に少量です。しかし、その分だけ深い理解が求められることも忘れてはなりません。電気分野において、電場以外にいくつかの重要キーワードを列挙すると「電位、電気力線、電流、起電力、電気抵抗、電気容量」などがあります。これらそれぞれについて、今一度定義から復習をやり直し、定性的にも定量的にも確実な理解を積み重ねていきましょう。その一つ一つが、必ずや延いては問題を解く際の着想の手がかりとなってきます。