京都医塾物理科です。
まだまだ残暑が厳しい中、体調に気を付けながら、年度当初に立てた計画通りに学習が進められているでしょうか。「バッチリ!」という人もいれば、「なかなかうまくいかない…」と焦っている人もいることでしょう。
今月は、そのような皆さんそれぞれに向けて、
・夏休みが終わり、受験に焦りを感じ始めた人へ…
・9月の勉強のポイント・学習アドバイス
をお届けします!
夏休みが終わり、受験に焦りを感じ始めた人へ…
- 受験まで時間がない
この時期からは特に、学校や塾で「受験まであと〇〇日!受験に必要な科目数で割ると、あとこれだけしかないぞ!」と発破をかけられ始められる頃だと思います。「分かっているけど、そう言われると余計に焦ってしまう…」とうんざりしている人も多いのではないでしょうか。気持ちはとてもよく分かります。焦りのせいで勉強に手がつかなくなってしまえば、元も子もありません。
一呼吸おきましょう。今までにやってきた教材を取り出してください。ノートに書いてきた自分の文字を見つめ、ここまでの努力に思いを馳せてください。少なくない勉強を積み重ねてきたはずです。一日まるごとかけて、復習も兼ねてやってきたことを振り返るのもよいでしょう。確かに自分は前に進んでいるという実感を得たら、次の一歩を踏み出してください。
- 模試が悪かった
「模試もぱっとしない…こんなんじゃあ本番で合格点なんて取れるわけない…ああ、どうしたらいいんだ…」
皆さんのなかにも、このような気持ちになっているという人もいるのではないでしょうか。まず、お伝えしておきたいこととしては、こうなってしまうこと自体は珍しくありません。むしろ、普通の反応です。現時点で満足な成績が出ているのであれば、まさに「今」試験をすれば合格してしまいます。合格レベルには、その試験日当日に到達できればよいのです。明日いきなり、本番と同レベルの問題が解けるようになる必要はありません。そこまでの道のりは、一歩一歩踏みしめてください。夏の勉強の成果が結実するのは、秋も深まってからです。
- 何をすべきか分からない
ここまでの内容を順に読んでいただけたら、お分かりになると思います。つまり、皆さんが今からすべき勉強は、これまでやってきた勉強の続きにあります。見失ってしまったのであれば、今までにやってきた教材を取り出してください。そして、それからやることは…前述の通りです。
9月の勉強のポイント・学習アドバイス
ここまで順調に勉強が進んでいる人は、力学、熱力学、波動まで基礎固めが終わっていることと思います。それが一段落したこの9月からは、いよいよ電磁気の基礎固めに取り掛かりましょう。電磁気はどうしても範囲が広く、学習が長丁場となるため、腰を据えて取り組まなければなりません。
電磁気は、電気分野と磁気分野の2つに大別され、まずは電気分野から学習が始まります。皆さんは電気分野の最初を学習したあたりで、このように思ったことはないでしょうか。
「クーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』はまあ分かるんだけど、それ以降がなんかよく分からないんだよなあ。電場とか電位とか言葉も抽象的で難しいし、公式もF=qEはいいとして、V=kq/rとかE=kq/r^2とか2乗がついたりつかなかったりでややこしく、覚えられないんだよなあ…」
確かに、電気分野の最初に学習するクーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』は、万有引力の法則「F=GMm/r^2」ともよく似ており、理解しやすく覚えやすい式です。しかし、電気分野のそれ以降については、理論的なつながりについていざ問われると、きちんと説明できないという人も多いのではないかと思います。さらに、教科書には公式もやたらと登場するため、その全てを丸暗記で何とかしようとすると、それぞれが少しずつ似ているために、混同してしまっている様子もよく見受けられます。
この状況を克服するためには、やはり定義からの理解です。電気分野の最重要キーワードは、電場です。皆さんは、電場の定義を自分の言葉で答えられるでしょうか?もし、答えられないということであれば、電気分野の入り口から躓いていることになります。「何度教科書や参考書を見ても、公式が覚えられない…」と投げやりになる前に、まずは電場の定義から確認しましょう。
電場とは、定性的には「電荷に力を与える空間の性質」であり、定量的には「(その位置に電荷を置いたとき)単位電荷(1C)あたりが受ける力」として定義されます。すると、定義より、単位電荷が受ける力がEであるため、一般の電荷qが受ける力は、そのq倍のqEとなります。これを理解できていれば、「F=qE」というのは、当たり前の関係式と思えるのではないでしょうか。また、電場の単位[N/C]も、定義から自明と言えます。
次に、電場という考え方を用いると、距離rだけ離れた点電荷q_1とq_2が及ぼしあう力は、例えばq_2が受ける力に着目すると、これはq_1がq_2の位置につくる電場から受ける力であると解釈できます。すると、この電場は、定義通り「単位電荷あたりが受ける力」として考えればよいので、クーロンの法則『F=k|q_1×q_2|/r^2』において、q_2=1とすれば、q_1が距離rだけ離れた位置につくる電場(の大きさ)となります。よって、点電荷がつくる電場(の大きさ)の公式「E=kq/r^2」(q_1=qとした)が導出されたことになります。この導出の流れを理解できていれば、電場の定義とクーロンの法則さえ押さえておけばよいことが分かります(派生公式である「E=kq/r^2」を積極的に覚える必要はありません)。
このように、物理の定理や公式は、可能な限り定義や重要な性質から理解すべきです。こういった手順をスキップした勉強に走ってしまうと、「何となく○○は苦手だ。だから、とりあえず公式と結果を覚えよう」となってしまい、すぐに学力の伸びが頭打ちになります(「〇〇」は任意の分野が入ります)。物理において、本当に押さえるべき重要な知識は、他教科に比べると圧倒的に少量です。しかし、その分だけ深い理解が求められることも忘れてはなりません。電気分野において、電場以外にいくつかの重要キーワードを列挙すると「電位、電気力線、電流、起電力、電気抵抗、電気容量」などがあります。これらそれぞれについて、何度も定義に立ち返りながら、定性的にも定量的にも確実な理解を積み重ねていきましょう。その一つ一つが、必ずや延いては問題を解く際の着想の手がかりとなってきます。