こんにちは、京都医塾化学科の児玉です。
今回は化学の基本法則について紹介しながら、法則が発見された順番、法則の中身などに触れていきます。無機化学や有機化学、理論化学など、典型問題への対策は万全の状態でも、この部分は案外盲点となりやすい箇所ですので、この記事を通して学習しましょう!
化学の基本法則とは?
まず、化学の基本法則とは以下の6つの法則のことです。(発見、提唱された順)
・質量保存の法則
・定比例の法則
・原子説
・倍数比例の法則
・気体反応の法則
・分子説
これらの法則を、発見された順に一つずつ見ていきましょう。
1.質量保存の法則
1774年に、フランスの科学者ラボアジェが発見した法則です。
ラボアジェは、様々な化学変化について、反応前の物質の質量と反応後の物質の質量を調べた結果、
「化学反応の前後において、物質の総質量は変化しない」という法則を発見しました。これを質量保存の法則といいます。
法則名がそのまま法則の中身にもなっているので、覚えやすく、皆さんの記憶にもしっかりと残っているかと思います。
2.定比例の法則
1799年に、フランスの科学者プルーストが発見した法則です。
プルーストは、多くの化合物について、その成分元素の質量割合を調べることで、
「ある化合物を構成する成分元素の質量比は、その製法によらず、常に一定である」という法則を発見しました。これを定比例の法則といいます。
製法によらず、というと分かりにくいかもしれませんが、例えば二酸化炭素で考えた場合、完全燃焼で発生する二酸化炭素を調べても、呼吸によって発生する二酸化炭素を調べても、どちらの場合でも炭素と酸素の質量比は(炭素が12g、酸素が32gというようになり)同じ3:8になる、ということです。
さて、ここまでに説明した①②の2つの法則は、実験結果に基づいた法則という、実験則(経験則)とよばれるものです。実験結果からこのような関係が成り立っている、ということは分かっていましたが、何故その法則が成り立つのかという説明はまだ出来ていませんでした。
これらをうまく説明するため、発表されたのが「原子説」です。
3.原子説
1803年に、イギリスの科学者ドルトンが発表した法則です。
1803年に、イギリスの科学者ドルトンが発表した法則です。
以上の4つのルールが原子説とよばれるものです。
今となってはこの原子説は一部誤りであることが分かっていますが、念のため確認しておきましょう。
4.倍数比例の法則
1803年に、同じくドルトンが予想した法則です。
ドルトンは、自身が発表した原子説が成り立つのであれば、
「2種の元素A、Bからなる異なる化合物について、一定質量のAと化合するBの質量の間には、それらの化合物において簡単な整数比が成り立つ」ことを予想し、実際に実験することで確かめました。これを倍数比例の法則といい、原子説が成り立つことを示す裏付けとしました。
例えば、炭素と酸素からなる異なる化合物、一酸化炭素と二酸化炭素について考えてみると、一酸化炭素と二酸化炭素のそれぞれの炭素と酸素の質量比は、それぞれ3:4と3:8になっています。ということは、一定質量の炭素と化合する酸素の質量比は4:8=1:2となる、ということです。
これらに関して、
「定比例の法則と倍数比例の法則の2つが似ていて、どっちがどっちか分からなくなる」という声をよく聞くので、覚え方や抑えておくべきポイントを紹介します!
定比例の法則
ある化合物を構成する成分元素の質量比は、その製法によらず、常に一定である
倍数比例の法則
2種の元素A、Bからなる異なる化合物について、一定質量のAと化合するBの質量の間には、それらの化合物において簡単な整数比が成り立つ
法則名とその法則の中身ですが、赤字になっている部分を対応させて覚えていると分かりやすいかもしれません。
これらの法則の大きな違いは
定比例の法則はある一つの化合物の質量比に触れているのに対して、倍数比例の法則は2種類の元素からなる2つ以上の化合物について触れています。このように、何個の物質・化合物に対して成り立つ法則か、で判断してもいいでしょう。
では、この後に発見された気体反応の法則と原子説については後編で説明していきます。