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医学部予備校国語科講師が教える「座右の銘」の選び方

医学部予備校国語科講師が教える「座右の銘」の選び方

「座右の銘は?」という質問からはかられる力

基本的な教養

 面接というフォーマルな場では、ことわざ、四字熟語など、ある程度一般的な教養にのっとったことばを座右の銘に選ぶべき。突飛なことばを選ばない。

表現/説明力

 そのことばを選んだ理由を、論理的に、分かりやすく丁寧に説明できること。

自己分析力

 「そのことばを選んだ理由」は、「なんとなく」ではありえない。自分のこれまでの軌跡や、これからの目標を自分の言葉でしっかりと語れるか。

というか、「座右の銘」ってなに?

身近に記しておいて、戒めとすることばや文(新選国語辞典第7版)

 全く本人が関心を持たない分野や、一般的に見て、戒めとするには「重み」や「権威」が認められないことば(近年のマンガの中のワンフレーズなど)は、座右の銘とはなりにくいでしょう。やはり、本人が今まで深く携わってきた分野のことばや、一般に意味が通じる格言などが適切です。

受験生に人気の座右の銘

 生徒がまず挙げる座右の銘として、私がこれまでみてきた中で、最も多かったのは次のことばであろうと思われます。

一期一会

 まず、読み方は分かるでしょうか。「いちご いちえ」と読みます。

 意味は、「一生に一度だけであること」であり、「(患者さんとの)出会いを大切にする」精神をあらわすことばとして、医学部面接においては適切なものです。

 ただし、「ありきたりである」という印象は免れません。仮に、それでも「一期一会」を座右の銘とするなら、「一期一会」ということばがその人を象徴する、あるいはその人の人となりや将来の理想・目標に影響するものであると証明しなければなりません。

 「一期一会」は「茶道の心得として強調される」ことばです。少々極端な例ですが、「一期一会」を座右の銘に掲げる人が、「茶道部出身」、さらに言えば「茶道部で尊敬する先生からこのことばを教えてもらった」というヒストリーを持つなら、一気に説得性を増します。

「一期一会」がハマっている人物のケース

〇ヒストリー(その人のこれまで)
・茶道部出身である。
・尊敬している茶道部の先生からこの言葉を授かった。
・コミュニケーションに自信がある。
→コミュニケーションをうまく取りながら、周囲の人と何かを成し遂げた経験がある。
・人見知りしない。
→初めて出会う人ともうまく協働できた経験がある。

〇ビジョン
・外来の患者であっても、全力で医療を行う。
→一度しか診ない可能性の高い患者さんであっても、全力で向き合う。
・病気よりも「人」をみる医療をこころがける。
→患者さんとしっかりコミュニケーションを取り、病気を治すだけなく病気に至るまでの背景を考察する。

 このようなヒストリー・ビジョンのある受験生は、「一期一会」を座右の銘候補に加えてもよいでしょう。逆に言えば、説得力あるヒストリー・ビジョンを示せない限り、「一期一会」を座右の銘とするのは、ありきたりな言葉であるからこそ、安易な印象を持たれてしまうと考えられます。

まとめ

 「『座右の銘』で検索したらネット検索の上位に出てきた、だから『一期一会』を座右の銘にしました」
 このような態度はよくありません。また、手順から間違っています。

 闇雲に座右の銘を探すのではなく、

①自分を分析し、将来のビジョンを持つこと

②過去の自分や、それに続く将来の自分にとってふさわしいことばを選ぶこと

以上の順序で、座右の銘は選んでください。

 まずは、自分自身のヒストリーを見つめ、説得力ある将来のビジョンを描くことが大切です。その地盤から、当然あるべき「座右の銘」が見つかるはずなのです。

 面接の回答を、他者から見て一貫した(かつ医師としての適性をアピールできる)内容にするのは、自分一人では難しい面があります。

 京都医塾では、国語の授業の中で、生徒さん一人一人と綿密に話し合い、その特性や志望をしっかりと表現できる面接回答を考え、じっくりと練習していきます。ぜひ、一度ご体験ください。

次回予告

 今回はシリーズ「座右の銘」第一回です!次回は、「医学部予備校国語科講師が選ぶ座右の銘候補」になります。お楽しみに。

投稿者:石田 景悟

  • 役職
    国語社会科主任/国語科講師
  • 講師歴・勤務歴
    12年
  • 出身大学
    京都大学文学部
  • 特技・資格
    ボルダリング最高グレード2段
  • 趣味
    登山・クライミング・ロードバイク
  • 出身地
    京都府
  • お勧めの本
    外道クライマー

受験生への一言
面接試験で、自分の思ってもいないようなことを語っても語るに落ちるのみで、破綻しますし、面接官の胸にも届きません。日頃から自分が何になりたいか、どうしたいか、医師になりたいならそれはどうしてかということを自分に問いかけ、内省する必要があるでしょう。授業ではそのように考える手助けもできれば良いなと考えております。