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医学部受験生のための時事ニュース解説(1)「ふじみ野市訪問診療医師殺害事件」(2022年1月)

医学部受験生のための時事ニュース解説(1)「ふじみ野市訪問診療医師殺害事件」(2022年1月)

関連する医療用語

・地域医療  ・地域包括ケア  ・在宅医療  ・応召義務
・モンスターペイシェント

事件の概要

 2022年(令和4年)1月27日、埼玉県ふじみ野市の住宅で、男(66歳)が弔問に訪れた医師らを人質に立てこもり、前日死亡した92歳の母親の蘇生を求めたが、断られて散弾銃を発砲、医師は胸を撃たれて死亡した。理学療法士にも重傷を負わせた。

観点

在宅医療に命を懸けた医師の死

 被害者となった医師は、地域医療の要として、地域で訪問看護を必要とする300人ほどの人を担当し、地域医療に貢献してきた。昼夜問わず患者さんの元に駆け付け、地域からの信頼も厚い先生だったようだ。
 このような形で尊い命が失われることはあってはならないし、理不尽な凶行に憤りを禁じ得ない。懸命に地域医療を担ってきた医師を失った損失は計り知れず、患者やその家族の心情を察するに余りある。

医療従事者の安全の確保が急務

 高齢化が進行し、地域包括ケアの推進が謳われる中、従来にもまして在宅医療の重要性は高まっている。一方で在宅医療の現場は密室になることが多く、トラブルになるリスクを抱えている。病院とは異なり、少人数で訪問するため対処が難しく、すぐに応援を呼ぶこともできない。医療従事者と患者の1対1ではなく、チームで対応できるような仕組みが必要だ。さらに社会全体で、医療従事者の安全を守っていく方策を考える必要がある。

トラブルを未然に防ぐ体制づくり

 容疑者は治療方針や病院対応に不満があると院内で大声を出して怒るなど、たびたび問題を起こしていた。このように医療機関で過度なクレームや理不尽な要求をしてくる、かつ暴言や暴力に任せて感情をぶつけてくる患者やその家族のことを「モンスターペイシェント」と呼ぶ。医療従事者の多くが医療現場での暴言、暴力、ハラスメントを経験しているという。相手の話に傾聴し、共感できる部分は共感しながらも毅然とした対応で接することが肝要だ。
 また介護する家族を孤立させない支援とともに、トラブルを事前に察知し、解決に動く仕組みも求められる。そのためには対策を医療や介護の現場だけに任せるのではなく、社会や地域全体の問題として捉え、行政や福祉といった幅広い分野とのより緊密な連携が必要だ。現状、患者や利用者側の相談窓口は設けられているが、医療従事者側の相談体制の構築も必要だろう。

まとめ

 今回の事件で医療現場の過酷な現状があらわになった。しかし高齢化の進行に伴い、在宅医療の需要はますます高まっている。地域医療を志す医学部受験生の皆さんは、このような現実の中で、⑴医師として⑵医療界としてそれぞれどのように対応していくべきか、意見をまとめておきたい。