京都医塾生物科です。
このページでは「大阪医科薬科大学の生物」についての過去問を分析します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“大阪医科薬科大学”の受験を考えている方
・“大阪医科薬科大学の生物がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2021年度(最新の問題より)
形式:記述式
時間:理科2科目で120分
大問数:4
配点:理科2科目で200点
出題の傾向と特徴(3年分)
2019年度以降の3年分について、分野別の傾向をまとめます。
【1 細胞】
■分子レベルから理解すること
他の医学部入試と同様に、「細胞レベルの現象が分子レベルの現象を基にしてどのようにして起こっているのか」を理解しておく必要があります。
■他分野との関わりで理解すること
また、細胞は生物個体の基本単位ですから、この分野は生物学のほとんどの分野と深いつながりがあります。特に代謝、遺伝子発現、発生、恒常性などの分野と関連した問題は頻出です。
【2 代謝】
■丸暗記では正答出来ない
代謝分野は、そこで登場する物質が細胞や生物個体にとって「どのような意味を持っているのか」という観点から理解しておきましょう。代謝の用語と反応を丸暗記するだけでは得点にはつながりません。
■教科書レベルの実験も頻出
2021年にはツンベルグ管の実験が出題され、実験操作の意味が問われています。高校の生物の授業で実験を全くさせてもらえなかった人もいるでしょうが、生物学では実験も座学もどちらも非常に重要です。ペーパークロマトグラフィーの実験なども医学部入試で頻出なので、資料集やYoutube等を見て実験器具や実験操作についてよく理解しておきましょう。
【3 遺伝子発現】
■発現調節の問題を沢山解いておくこと
2019年には「植物細胞がホルモンに応答して遺伝子の転写を調節する現象」が出題されています。
遺伝子の複製、転写、翻訳などの基本事項をしっかり理解することは絶対必要ですが、どのような細胞や状況で特定の遺伝子が転写される/されないのか、という選択的遺伝子発現や発現調節の仕組みも頻出です。
【4 生殖・発生・メンデル遺伝】
■動物の発生は頻出
ウニはヒトと同じく肛門が先にでき口が後にできる新口動物で、カエルは脊椎動物です。どちらもヒトと祖先が近いので、これらの動物の発生を学ぶことは入学後に医学の理解を深める役にも立ちます。また、誘導現象は発生に普遍的にみられる原理ですので、特にしっかり理解しておきましょう。
■植物の生殖・発生も手を抜けない
「医療系の学部だけからなる大学だから、植物の生殖や発生はあまり出題されないだろう」と予想をしているなら、認識が甘いです。教科書レベルの知識でさえ理解できていない受験生が多い「被子植物の配偶子形成」は点差が付きます。この単元は、進化・分類分野で学ぶ「植物の生活環の進化」から先に勉強すると理解しやすくなります。また、「花器官の形成に関わるABCモデル」も頻出です。
■メンデル遺伝
ややこしい遺伝現象はあまり出題されていませんが、メンデル遺伝を減数分裂に基づいて理解しておくことは絶対的に必要です。
【5動物と植物の恒常性と反応】
■人体に関しては「医学部らしい」問題も出題される
医学部入試なので、「人体の働き」は出題頻度がやや高いです。特に大阪医科薬科大学では、高校生物の教科書には載っていないような内臓の働きが出ることがあります。例えば少し前には、「肺がどのような仕組みで吸気や呼気をしているのか」という問題がヒント付きで出されています。普段から自分の体を観察して、人体の各部分の形や働きに関心を持っておくのも良いでしょう。
■免疫は、他の大学ほど詳細な知識は不要
他の私立医学部の中には、免疫に関する非常に詳細な知識を要求する問題を出す大学もありますが(帝京大学や近畿大学など)、大阪医科薬科大学では、そこまで詳細な知識は要りません。もちろん、教科書レベル・典型・頻出の問題はたくさん解いておきましょう。
【6 生態系】
■教科書レベルの出題が多い
「医療系の大学なので、生態学を専門に研究している先生がいない」というのが理由でしょうが、この分野は教科書レベル・典型・頻出の問題を解いておくことで「ほぼ完答」できるでしょう。逆に言えば、合格したければ「ほぼ完答」しないといけない難易度です。
【7 進化と分類】
■教科書レベルの出題が多い
この分野の出題も生態学の分野と同様に教科書レベルが多いですが、人類進化や血縁度、ハーディ・ワインベルグの法則、分子進化は出題頻度も難易度もやや高くなる傾向にあり、合否の分かれ目になりそうな出題も多いので、重点的に勉強しておきましょう。
■実は生物学の「統一理論」
進化の分野で出てくる「(ダーウィン)適応度」という用語は、入試での出題頻度はどの大学でも高くはないですが、実は生物学の全分野を貫く非常に重要な概念を表しています。「(ダーウィン)適応度」は「ある遺伝子型の親が、生殖能力のある子どもを何個体生んだか」を表しており、生物個体が「生き残って子を産むために様々な活動をしている」ことがよく理解できます。
初見の問題でも、「登場した生物個体や細胞は“生き残って子どもを産むこと”を目指しているハズだ」という発想で考えてみれば、自ずと正解は見えてくることが多いです。そして、そのような初見の実験考察問題で合否の差がついているのです。
ですので、「(ダーウィン)適応度」は「直接的な出題頻度は低いけれども、全分野の得点力を根本的に上昇させてくれる“コスパの良い概念”」だと言えるでしょう。そして、私たちの日常的な感覚からしても理解の難しい概念ではないでしょう。「重箱の隅をつつくような細かな知識をたくさん覚えるだけの勉強法」よりも“コスパが良い概念”なので、「生物個体は、生き残って子を産むために様々な活動をしている」という観点から生物の全範囲を勉強してみてください。
【制限時間に対する問題量】
難解な考察問題があまり出題されないこともあって、生物の受験勉強をある程こなしてきた受験生にとっては時間的な余裕はあるでしょう。余った時間で、記述問題の答案を見直すとよいでしょう。
【まとめ】
■教科書の内容を“深く”理解すること
受験生にとっては初見の題材が出題されることが多いですが、「教科書レベルの知識と考え方」を活用すれば容易な問題がほとんどなので、「教科書レベルの知識と考え方」を骨身に染みて理解していることが合格するための第1条件です。
ですので、「表面的な丸暗記によって<典型問題に対する条件反射のスピード>を磨くような勉強法」だけで満足していては、初見の題材に動揺してしまい、問題になっている生命現象の本質や意味を見抜けず、正答出来ない可能性が高くなります。
■生物の「気持ち」になって考えること
前述の「(ダーウィン)適応度」でも書きましたが、「生命現象の本質や意味」を理解するためには、その生物個体や細胞の「気持ち」になってみるとよいです。生物個体や細胞に感情移入するためには、「大抵の生物は“生き残って子を残したい”と考えている」と見なしても構わないでしょう。この姿勢は、合格後の医学の勉強でも役に立つはずです。
■グラフ・記述・計算は必出
出題形式としては、「グラフや数表の読解」と「記述問題」は毎年必ず出題されており、「計算問題」もほぼ毎年出題されています。しかし、いずれも私立医学部入試の難易度としては平易なものが多いので、「グラフ・数表読解、記述、計算」が苦手な人は標準レベルの問題をたくさん解いて、「生物学の考え方」を十分に身に付けておきましょう。
■「書く力」を伸ばすこと
「文章を書くこと」は「話すこと」に比べて格段に難しいものです。あなたが小学校から高校までに受けてきた教育課程によっては、学校が抱えている様々な制約もあって、あなたの「書く力」は十分には伸びていないのではないでしょうか。「入試生物での書く力」を伸ばすためには、誰か入試生物の記述問題を採点できる人に見てもらうことが効率的でしょう。
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