京都医塾生物科の廣瀬です。
今回も前回に引き続き、「ヒトへの進化」の際に登場する身体上の特徴について見ていきます。
前回は、原猿類と呼ばれる、霊長類の中でも原始的だとされるグループについて見てきました。
ところで、原猿類と我々ヒトとは、系統的にはどのような関係性なのでしょうか。
原猿類とヒトとの関係
こちらは、京都市動物園に掲示されている霊長類の系統関係です。
一番左の塊が前回お見せした原猿類。一番右にヒトが配置されています。
原猿類が真猿類と呼ばれる右側の塊と大きく異なる点として、夜行性の種が多く含まれている、というものがあります。
哺乳類が登場した中生代は、恐竜など大型の爬虫類が多く存在していました。これらからの捕食を避けるために、当時の哺乳類はほとんどが夜行性であったと推定されています。中生代の終わりに多くの爬虫類が絶滅すると、その後適応放散した哺乳類からは昼行性に適応した種が登場したものと考えられています。
樹上生活に適応した霊長類の祖先生物がもともと昼行性だったか夜行性だったか、については、大きく議論が分かれており、まだ結論が出ていませんが、少なくとも真猿類では常に生活の場が樹上になったことで大型の肉食動物に捕食される危険性が減少し、昼行性の種が多くを占めるようになっていったものと思われます。
これにより、目の大きさに違いが生じます。
こちらは、前回もお見せしたショウガラゴ。夜行性です。顔の半分以上が目で占められています。夜行性の動物では、暗い中で少しでも光を多く取り込むために、この構造が必要なのですね。
こちらはオランウータン。昼行性です。目よりも鼻から下が占める割合の方がずっと大きくなっていることが分かるかと思います。
類人猿
真猿類の仲間の中でも、特にヒトに近縁なグループを「類人猿」と呼ぶことがありますが、これは「ヒト上科」に属する種を指します。ヒトから遠い方から順にテナガザル、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、そしてヒトです。これらの種名は大学入試問題でも問われることがありますね。
新生代に地上の乾燥化が進み森林が減少して草原が増加していく中で、樹上だけではなく地上にも降りて生活するようになって、類人猿は発達してきたと考えられています。ヒト以外の類人猿は、必要に応じて後脚だけで立ち上がることは出来ますが、常に二足歩行をすることはありません。これがヒトとの骨格の違いに大きく差をもたらしている要因です
更に他のサルと大きく異なる点が、「尾がない」ということです。実際に見てみましょう。
背の曲がり具合などを見ると、「ヒトとは違う」感じが分かりやすいですね。
ここからヒトへの変化は現生種では観察することができず、化石の情報を頼ることになりますが、実際に動いている生き物を見て変化の過程を想像することもまた楽しいものです。
おまけ
樹上生活感が伝わるオランウータンの移動風景。
まとめ
今回は実物の写真を通して、「ヒトへの進化」における身体的特徴を見てきました。
教科書や参考書などを読むだけではなく、実際に直接目にすることのできる生き物を通して学習を進めることで、興味を持って学ぶことができるようになると、学ぶことそのものが楽しくなり、結果的に学習効果が上がります。ぜひ、生物に興味をもってみて下さい。