京都医塾数学科です。
このページでは「杏林大学医学部の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“杏林大学医学部”の受験を考えている方
・“杏林大学医学部の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】2021年度(最新の問題より)
形式:マーク
制限時間:60分
配点:100点(筆記試験全体の配点は350点)
杏林大学医学部の数学は「60分・マーク式」という形式が続いています。
大問数については、2020年度までは10年以上4問が続いていましたが、2021年度は3問に減少しており、この傾向が続くのか、元に戻るのかは定かではありません。
出題の傾向と特徴(5年分)
形式に加え、2017年度以降の5年分についての傾向をまとめます。
【頻出の出題単元】
大問数が4だった時代は、数Ⅲからは微分・積分(面積・体積)、数Aから場合の数・確率または整数(場合の数・確率が5年中3年、整数が1年)、数Bからベクトルまたは数列(ベクトルが3年、数列が2年)で各1問ずつ、もう1問は数Ⅱ・数Ⅲから幅広く出題されるというパターンがほとんどでした。2018年度のみ、数Aからの出題がありませんでした。
2021年度は、大問数が減少した影響か、微積分は問題中の計算で少し登場する程度で、比重としては大幅に軽くなりました。
「微分・積分」については、導関数を計算する→増減表を書く→グラフの概形を図示する→面積・体積を求めるべき領域を正しく把握する→定積分を立式する→積分計算を実行する、というこの単元の問題の典型的な手順を正確に処理することが大切です。また、「 \( \frac{1}{6} \) 公式」や、「\( \frac{1}{12}\) 公式」等の定積分に関する公式が適用できる問題が複数回出題されているので、効率的に計算するためにこれらの公式を身につけておくべきでしょう。
「ベクトル」については、出題された問題は全て空間上の図形に関するものです。丁寧に図示を行って状況把握に努める、「始点を定めて3つのベクトルで表す」といった基本方針を身につける、「共面条件」や「平面に下した垂線」などの典型的な計算処理を正確に処理する力をつける、などの対策をしておきましょう。
【制限時間に対する問題量】
制限時間60分に対して大問数4は、マークする時間や見直しの時間を差し引くと1問当たり10分強しか割けないという計算になるため、かなり厳しい設定になっています。(共通テストのⅡBと同じと思っていただければ、イメージしやすいと思います。)微積分を中心に、計算量も一定量あるため、解ける問題から手をつける、場合によっては各大問の後半は「捨て問題」を作るなどの割り切りが必要になってくるでしょう。
2021年度は、大問数が3に減少したため、時間に対する圧迫は多少緩和されたと言えます。
【その他の出題形式等の特徴】
① マーク式で定番の「数値を埋める」という形式だけではなく、数式やグラフの概形、図形の名称や定理の名称など、「選択肢から正しいものを選ぶ」という問題も出題されています。問題によっては消去法で絞る、当てはめてみて辻褄が合うか様子を見るなどすると、効率的に解き進められる可能性があります。
② ベクトルに限らず、空間図形や座標空間を題材にした問題が出題されています。(2021年度を除き、4箇年全てで空間図形に関連する問題が出題されています。)ベクトルについて述べた事の繰り返しになりますが、とにかく丁寧に図示することを心がけましょう。また、必要な平面だけを切り取って図示する事で、平面図形の処理に帰着させることも大切です。
2021年度(最新の過去問)の分析
ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問 確率】(易)
確率の問題でありがちな、「問題設定の文章を読むのが大変」などと言う事もなく、単純な「袋から球を引く」問題です。(b)で、整数問題で頻出の「絞り込んで、その後調べ尽くす」という解法が必要な箇所はありますが、手を動かすのに困ることは無いでしょう。
最後の「条件付確率」は、計6通りの場合分けを丁寧に処理する必要があるので、いかに効率的に処理して第2問以降に時間を残せるかが勝負になります。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…短時間で完答したい。
他教科を得点源にしたい受験生… (c)の後半は多少時間がかかるので、その前までは確実に取り切る。
【第2問 図形と方程式:円・微積分(数Ⅱ)】(標準)
座標平面上で3点を通る円、3点を結ぶ三角形の面積、その内接円の半径など、前半は教科書レベルの知識で十分対応可能な問題が並びます。後半の「円と放物線が共有点を3点持つ」と言う条件を適切に活用できるかがカギとなるでしょう。最後の「2つの放物線で囲まれた面積」では、「 \( \frac{1}{6} \) 公式」 を使えるかで計算量が大きく変わってきます。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答したい。
他教科を得点源にしたい受験生…「内接円の半径」までは確実に得点したい。
【第3問 対数関数・数列】(やや難)
全体的に、実は見た目ほど難しくはなく、(おそらく意図的な)「見掛け倒し」の問題になっています。対数関数や数列についての教科書レベルの基本知識を正確に運用するだけで、ほぼ全ての問題はあっさり解けてしまいます。例えば、(a)では凸性や極値の有無を答えさせる問題がありますが、対数関数のグラフの概形を考えれば微分計算する必要すらありません。また、問題数は多いものの、独立した問題になっている箇所もあり、途中で詰まってしまっても諦めずに後半の問題に手を出していくことも重要です。
≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…第1問・第2問を手早く片付けて、なるべくここに時間を費やす。(a)の最後(三角形の面積の最大)、(b)の最後(台形の面積とその極限)はやや難だが、それ以外は確実に得点したい。
他教科を得点源にしたい受験生…(a)・(b)共に中盤までは取り切りたい。
【総評】
大問の数が減少したことにより、それ以前の年度よりは解きやすい試験になったと言えます。とは言え、第3問のボリュームはかなり多く、いかに効率的に解き進められるかがポイントになってきます。
まとめ
2021年度から大問数が続くかは不明ですが、いずれにしても60分のマーク式という形式を考えると、素早く正確に計算する力が必要です。
また、最短経路で解き進められるように、闇雲に計算の手を動かすだけでなく、その補助として図形やグラフを手早く図示する事を意識して学習すると良いでしょう。
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