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東京慈恵会医科大学の入試の過去問対策・出題傾向まとめ【数学編】

東京慈恵会医科大学の入試の過去問対策・出題傾向まとめ【数学編】

 

京都医塾数学科です。このページでは「東京慈恵会医科大学の数学」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“東京慈恵会医科大学”の受験を考えている方
・“東京慈恵会医科大学の数学がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。

概要

【形式・制限時間・配点】2021年度 
形式:空所補充&記述
制限時間:90分
配点:100点(筆記試験全体の配点は400点です。)
東京慈恵会医科大学の数学は「90分・空所補充&記述形式」というスタイルが続いています。

出題の傾向と特徴(5年分)

直近5年分の出題の傾向と特徴をまとめます。

【第1問に関して】

第1問は空所補充形式になっています。2019年度までは、小問2問の小問集合形式でしたが、2020年度より、大問形式の出題となっています。出題形式が変わっても、近年はずっと「確率」からの出題が続いています。(小問集合形式の際は、「確率」とその他の分野から、合わせて2問出題されていました。)第2問以降に比べると、第1問の難易度はそう高くはありません。各年度の問題を見ると、第1問は必ず得点すべき問題になっています。「確率」を苦手とする受験生は多いと思いますが、問題演習を多くこなし、第1問を得点源にできるようになっておきましょう。

【第2問~第4問に関して】

第2問~第4問は記述形式になっています。第1問と比べると、難易度が高い問題が並んでおり、大学入試数学の標準以上のレベルが求められます。証明問題も例年出題されており、考察力・記述論証力が問われる内容になっています。「微積分法(数学Ⅲ)」からは毎年出題されており、ここ5年では、「極限」との融合問題になっていることも多いです。また、「数列の極限」「複素数平面」「整数」からの出題も多くなっています。まずは、大学入試数学の基本的な解法を使いこなせるように、問題演習に取り組みましょう。そのうえで、発展的な問題を通して、自身の持つ知識・解法をどう使うのかという応用力を養っていきましょう。

【制限時間に対する問題量】

試験時間90分に対して、空所補充形式1問、記述式3問と、決して多くの時間が与えられているわけではありません。第2問以降に時間を残すためにも、空所補充形式の問題は素早く正確に解ききれるようになっておきましょう。また、第2問以降では、「微積分法(数学Ⅲ)」からの出題で顕著であるように、計算力も問われます。普段の学習から、計算力の向上に努めるようにしておきましょう。

2021年度の分析

ここまでは近年の傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、2021年度の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。

【第1問】(易)

以下の操作を 5 回繰り返し、白玉、赤玉を左から順に 1 列に並べることを考える問題です。
「1 個のさいころを投げて、4 以下の目が出たときは白玉を 1 個おき、他の目が出たときには赤玉を 1 個、次に白玉を 1 個おく」

(ア)並べられた玉の数が 7 個で、左から 3 個目の玉が赤玉である確率を求める問題です。

4 以下の目が出ることを事象 A、他の目が出ることを事象 B とします。
さいころの目の出方の場合分けは以下の 2 パターンです。
(ⅰ) 1,2 回目に事象 A、3 回目に事象 B、4,5 回目で事象 A と事象 B が 1 回ずつ起きる。
(ⅱ) 1,2 回目に事象 B、3,4,5 回目に事象 A が起きる。

(イ)左から 5 個目の玉が赤玉である確率を求める問題です。

さいころの目の出方の場合分けは以下の 3 パターンです。
(ⅰ) 1~4 回目に事象 A、5 回目に事象 B が起きる。
(ⅱ) 1~3 回目に事象 A が 2 回、事象 B が 1 回起き、4 回目に事象 B が起きる。
(ⅲ) 1~3 回目に事象 B が起きる。

2021年度の目標値
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【第2問】(標準)

(1) 曲線 \(C\):\(y=e^{x^2}\) (\(x≧0\)) と \(y\) 軸および \(y=e\)、\(y=e^{a^2}\) (\(a>1\)) で囲まれた部分を、\(y\) 軸の周りに 1 回転させてできる立体の体積を求める問題です。

\(y\) 軸周りの回転体の体積なので、 \(\displaystyle \pi\int_e^{e^{a^2}} x^2 dy\) で計算します。曲線 \(C\) が \(x^2=\log y\) と表せるので、\(\log y\) を積分することになります。\(\displaystyle \int \log y dy\) は部分積分で求めましょう。結果を覚えている受験生も多いと思います。

(2) 曲線 \(C\) と曲線 \(C\) 上の点 (\(a\), \(e^{a^2}\)) (\(a>1\)) における接線 \(l\) 、\(x=1\) で囲まれた図形の面積を \(S_1\) 、直線 \(l\) と \(x\) 軸、\(y\) 軸で囲まれた面積を \(S_2\) としたときに、\(\displaystyle \lim_{a \to \infty} \frac{S_1}{S_2}\) を求める問題です。

まずは、接線 \(l\) の方程式を求めましょう。\(S_2\) は三角形の面積になるので、\(l\) と \(x\) 軸、\(y\) 軸との交点の座標から求められます。\(S_1\) を求めるために、\(\displaystyle \int_1^a e^{x^2} dx\) を計算する必要がありますが、\(e^{x^2}\) は積分できません。そこで、不等式で評価することになります。\(x≧1\) のときに \(e^{x^2}≦xe^{x^2}\) であることと \(xe^{x^2}\) が積分できることに気付ければ、不等式評価が可能になります。最終的には \(a \to \infty\) において、はさみうちの原理を用いましょう。

≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…(1)まで。

【第3問】(やや難)

\(a, b\) は互いに素である自然数の定数で、\(a≧2\) とする。(\(0<x≦\pi\)) のとき、
\(\cases{\cos x≦\cos 2ax\\ \sin 2ax≦0}\) を満たす \(x\) の値の範囲は、互いに共通部分をもたない \(n\) 個の閉区間の和集合であり、それら \(n\) 個の閉区間の長さの値を小さい方から順に \(x_1,\dots ,x_n\) とする。\(k=1,\dots ,n\) に対し \(\theta_k=2b(2a+1)x_k\) とおき、\(xy\) 平面において、一般角 \(\theta_k\) の動径と単位円との交点を \(Z_k\) とする。

(1) \(n=a\) であり、\(\displaystyle \theta_k=2k\pi \frac{b}{a}\) と表されることを証明する問題です。

(1)は、三角関数の不等式を解く問題です。ただし、\(0<2ax≦2a\pi \) の範囲すべてを考えるのは難しいので、\(2(m-1) \pi <2ax≦2m \pi \) \((1≦m≦a)\) の範囲で考えていきましょう。この範囲で不等式を考えると、\(2m \pi -x≦2ax≦2m \pi \) になるので、これを解けば、\(x_m\) の値が求まります。これらのことから、証明ができるようになっています。

(2) \(k=1,\dots ,a\) に対し、\(kb\) を \(a\) で割ったときの商を \(q_k\)、余りを \(r_k\) とします。\(1≦i≦j≦a\) を満たす任意の自然数 \(i, j\) に対し、\(r_i \neq r_j\) であることと、点 \(Z_1, \dots ,Z_a\) は単位円を \(a\) 等分する \(a\) 個の分点であることを証明する問題です。

前半の証明は、「整数」の分野でよく扱われる題材です。東京慈恵会医科大学を目指す受験生であれば、一度は経験しておきたい証明です。方針としては、\(ib, jb\) が、\(\cases{ib=aq_i+r_i\\jb=aq_j+r_j}\) と表されるので、\(r_i=r_j\) と仮定して背理法を用いましょう。\((i-j)b=a(q_i-q_j)\) が成り立ち、\(a, b\)が互いに素なので、\(j-i\) が \(a\) の倍数になりますが、これは、\(1≦j-i≦a-1\)に矛盾します。
後半は、(1)と(2)の前半で証明した結果から、証明できます。(1)より、\(\displaystyle \theta_k=2\pi \frac{kb}{a}\) と表されるので、\(\displaystyle \frac{kb}{a}\) に注目します。\(\displaystyle \frac{kb}{a}\) は、 \(kb\) を \(a\) で割った余り \(r\) を考えていることになるので、(2)の前半より、\(r_1,r_2, \dots ,r_a\) は、\(0,1, \dots ,a-1\) のいずれかであり、それぞれ異なった値をとります。よって \(\theta_k\) は、\(\displaystyle \frac{2l \pi\ }{a}\) \((l=0,1, \dots ,a-1)\) の値をそれぞれ一度ずつとることになるので、点 \(Z_1, \dots ,Z_a\) は単位円を \(a\) 等分する \(a\) 個の分点であることが証明できます。

≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…(1)まで。
他教科を得点源にしたい受験生…解けなくても良い。

【第4問】(標準)

1 辺の長さが 1 の正方形 \( \textrm{A}_{1}\textrm{B}_{1}\textrm{C}_{1}\textrm{D}_{1} \) があり、四角形 \( \textrm{A}_{n+1}\textrm{B}_{n+1}\textrm{C}_{n+1}\textrm{D}_{n+1} \) \((n=1,2,3, \dots )\) を次のように帰納的につくります。
 四角形 \( \textrm{A}_{n}\textrm{B}_{n}\textrm{C}_{n}\textrm{D}_{n} \) がつくられたとき、
 ・各辺 \( \textrm{A}_{n}\textrm{B}_{n}\),\( \textrm{B}_{n}\textrm{C}_{n}\), \( \textrm{C}_{n}\textrm{D}_{n}\), \( \textrm{D}_{n}\textrm{A}_{n}\) を \(t:1-t\) に内分する点を、順に \( \textrm{H}_{n},\textrm{I}_{n},\textrm{J}_{n},\textrm{K}_{n} \) とします。ただし、実数 \(t\) は \(0<t<1\) をみたす定数です。
 ・\( \textrm{A}_{n}\textrm{J}_{n}\) と \( \textrm{B}_{n}\textrm{K}_{n}\) の交点 \( \textrm{A}_{n+1}\)、\( \textrm{B}_{n}\textrm{K}_{n}\) と \( \textrm{C}_{n}\textrm{H}_{n}\) の交点 \( \textrm{B}_{n+1}\)、\( \textrm{C}_{n}\textrm{H}_{n}\) と \( \textrm{D}_{n}\textrm{I}_{n}\) の交点 \( \textrm{C}_{n+1}\)、\( \textrm{D}_{n}\textrm{I}_{n}\) と \( \textrm{A}_{n}\textrm{J}_{n}\) の交点 \( \textrm{D}_{n+1}\) を頂点として、四角形 \( \textrm{A}_{n+1}\textrm{B}_{n+1}\textrm{C}_{n+1}\textrm{D}_{n+1} \) をつくります。
\(\triangle\textrm{A}_{n}\textrm{A}_{n+1}\textrm{K}_{n}\) の面積を \(a_n\) とするとき、無限級数 \(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n\) の和が \(\displaystyle \frac{1}{8}\) となるような定数 \(t\) の値を求める問題です。

入試問題ではよくある、図形の面積の和を無限等比級数から考える問題です。まずは、正方形 \( \textrm{A}_{n}\textrm{B}_{n}\textrm{C}_{n}\textrm{D}_{n} \) と正方形 \( \textrm{A}_{n+1}\textrm{B}_{n+1}\textrm{C}_{n+1}\textrm{D}_{n+1} \) の相似比を求めましょう。これは、\(\triangle\textrm{A}_{n}\textrm{A}_{n+1}\textrm{K}_{n}\) と \(\triangle\textrm{B}_{n}\textrm{A}_{n}\textrm{K}_{n}\) が相似であることなどを利用すれば求められます。そこから、正方形 \( \textrm{A}_{n}\textrm{B}_{n}\textrm{C}_{n}\textrm{D}_{n} \) と正方形 \( \textrm{A}_{n+1}\textrm{B}_{n+1}\textrm{C}_{n+1}\textrm{D}_{n+1} \) の面積比が分かり、それが \(a_n\) と \(a_{n+1}\) の比と等しいので、無限等比級数 \(\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n\) の初項と公比が求められます。ちなみに、初項は \(\displaystyle \frac{(1-t)^3}{2(t^2-2t+2)}\)、公比は \(\displaystyle \frac{t^2}{t^2-2t+2}\) です。初項 \(a\)、公比\(r\) の無限級数は、\(-1<r<1\) のとき収束し、その和は \(\displaystyle \frac{a}{1-r}\) になります。以上のことから、定数 \(t\) の値が求められます。

≪2021年度の目標値≫
数学を得点源にしたい受験生…完答。
他教科を得点源にしたい受験生…完答。

【総評】

内容・難易度ともに例年通りの出題でした。合格するためには、第1問は落とせません。第4問は、計算がやや煩雑になりますが、受験生であれば一度は経験したことのある標準的な問題です。丁寧に計算していきましょう。第2問、第3問の難易度がやや高くなっています。解くべき問題を見極めましょう。

まとめ

私立医学部の中でも、数学の難易度は上位にくる大学です。高校数学の基本的な解法を使いこなせるのは言うまでもなく、発展的な問題演習に取り組み、数学的な思考力・論証力を養っていきましょう。

投稿者:杉多 孝文

  • 役職
    数学科講師
  • 講師歴・勤務歴
    5年
  • 出身大学
    京都大学医学部
  • 特技・資格
    柔道初段
  • 趣味
    スポーツ観戦、読書
  • 出身地
    兵庫県
  • お勧めの本
    神様のカルテ

受験生への一言
「分かるとできるは全然違う。できるようになるまでやる。」それが大事です。