京都医塾英語科です。
このページでは「滋賀医科大学医学部の英語」についての過去問分析コメントを紹介します。
・“医学部受験に興味がある”という方
・“滋賀医科大学”の受験を考えている方
・“滋賀医科大学の英語がどのような問題か知りたい”という方
におススメの記事となりますので、興味のある方はご一読ください。
※令和3年度から英語は入試問題の傾向が少し変わりました。今回は変更後の過去問の分析をしています。
目次
概要
【形式・制限時間・配点】
2021年度の試験方式
形式: 記述式
制限時間:英90分(記述式)
配点: 200点
【参考情報】
二次試験他科目の配点:数学200点、理科200点
大学ボーダー偏差値(目安):65.0
共通テストボーダー得点率:78%(468点/600点)
※共通テストの英語は「リスニング:リーディング=1:4」で100点換算
面接関連:二次の配点比率の50%。グループ面接で、評価が最低値の場合は総合点に関係なく不合格となる。
【二次試験英語の得点率目安】
・英語を得点源にしている受験生の得点率…78~82%
・合格者の平均得点率(予想)…60~65%
・合格最低得点域(予想)…52~55%
出題の傾向と特徴
【出題形式】
※ここ数年で大問に大きな変移は見られませんが、設問は変わることがあります。
記述式に関しては大問が3つ出題され、その内訳は
大問1:設問は15問が全て英語で出題され、択一問題が平均3-4問、21年より復活した短文下線訳を含めた記述式が11-12問課される。配点92点。
大問2: 設問は14問が全て英語で出題され、択一問題が平均6-7問、21年より復活した短文下線訳を含めた記述式が7-8問課される。配点68点。
大問3:日本語で170-200字程度(英単語だと100字程度)の和文英作が出題される。配点40点。
の計30問が問われます。
【頻出の出題単元】
文法の観点から言えば、英作文を含めた総合的な英語力が試されるため単元を絞った学習はしないほうがいいでしょうが、関係詞や分詞、接続詞が絡んだり、慣用句を使用する問題が頻繁に出現する印象です。大問1・2の語彙・慣用表現は難易度が標準的なものが多いので、日常的に語彙力の強化を徹底すれば読解に詰まることはないでしょう。医学的な専門用語はそこまで見られず、注釈もあるので参照しながら読んでいきましょう。
ただし、英作文は非常に注意が必要です。詳細はこの後の分析で述べますが、大問1・2とは難易度の桁が違います。共通テストでの国語・社会の配点が高いことで有名な(実際文系からの理転受験者・再受験者も比較的多い)滋賀医科大学ですが、その影響からか元々の和文自体が英語にストレートに置き換えにくいものになっています。目安としては6000-8000字程度の語彙力がないとすらすら解けないでしょう。まずは、文法の徹底と単語力の強化が至上命題となるでしょう。
因みに自由英作文はここ数年は出ていませんが、かつては出題がありました。時間に余裕のない受験生の方は絶対の必要性はありませんが、総合力をつけるという意味も含めて、対策しておくとよいかもしれません。
【制限時間に対する問題量】
令和2年度以前と比べて減ったとはいえ、大問1が750語程度、大問2が700語程度と相当な分量です。初見では圧倒される受験生もいるかもしれません。しかし、大問1・2は語彙や設問自体の難易度が国公立医学部英語の中でも比較的易しく、文章内容の理解や問題ごとの該当範囲の特定は苦戦するほどではありません。その分、問題数が多いので、ゆっくりと解いている暇はありません。英作文を除けば、単純計算で29問を60-70分程度で解かなければならず、1問につき2~2.5分程度です。もちろん記述問題も含めているので実際は2分で収まるものが少ないのが実情です。普段から速読を意識し、効率的に文章を読み解く練習をしておかないと苦戦必至といえます。英作文も難易度が高いので最低でも20分は時間を割き、推敲しましょう。元の和文を簡単な日本語に置き換えるだけで5分はかかってしまいますので、早い段階から(少なくとも夏以降から)は英作文の対策を始める必要があります。
2021年度(最新の過去問)の分析
ここまでは大まかな傾向を見てきましたが、ここではさらに踏み込んで、最新の入試問題を具体的に分析したいと思います。
※以下、過去問をお手元にご覧になるのが理想的ですが、過去問がなくても問題なくお読み頂けます。
【第1問】(難易度:標準~やや難)
第1問は、食を通してスラムの栄養問題の改善に取り組んでいる女性の自伝的な回想文です。文字数は多いですが焦らず、設題からアプローチしましょう。設問には下線問題が多く、該当範囲が下線部から大きく離れることが少ないのですぐに解答に必要な英文は見つかるでしょう。しかし、本文の直訳ではまず点数は入りません。特に21年度より復活し設問15の英文和訳は下線部の英文自体は短く、平易に思えますが、構文を把握し、指示語を特定したうえで文意に合わせて、日本語の記述内容を工夫する必要があります。つまり、themを「それら」などと訳しても意味がないのです。さらに、使役動詞のletが出てきますが、文法書などに乗っている「Oにdoさせてやる」とった訳出をしても日本語的に相応しくない文章になり、減点が予想されます。「筆者はこの文を通して何を伝えたいんだろうか」と広く文意をとらえる視点がないと高得点は期待できません。
≪2021年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…72~76点(92点中)
他教科を得点源にしたい受験生…57~60点(92点中)
【第2問】(難易度:標準)
第1問と比較すると読みやすく、択一が多いこともあり、難易度は下がります。しかし、その分失点してしまうと他の受験生と点数差が開きかねないので、英語が得意な方はここで稼がないといけません。文章内容としては、渡り鳥の睡眠姿勢を研究することでその生存戦略を考察している自然科学の研究論文です。生物選択の方には読み解きやすい文章ですね。解き方の大枠は第1問と変わらず、速読意識で内容を効率よく把握していきましょう。もちろんすべての文章を読む必要はありませんので、設問に関連する文章を取捨選択するよう心がけましょう。また、滋賀医科大学に限ったことではありませんが、多義的な単語が問題になることがあります。単語を覚える際には英単語と日本語を直訳で覚えるのでなく、その単語が持つ文章中での役割を意識しましょう。例えば、likelyは「~しそうだ」と覚えるのではなく、「可能性が高いこと」に言及していると理解する、という感じです。そうすれば、場面に応じて訳を工夫する癖を自然に身に着けることができます。
≪2021年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…53~56点(68点中)
他教科を得点源にしたい受験生…42~44点(68点中)
【第3問】(難易度:難)
滋賀医科大学最後の砦である和文英訳は、筆者はよく京都大学の理系の過去問風な英作文だと形容しますが、英語の知識だけでなく日本語の解釈能力も必要となる難問です。引用されている和文はオーストリア人心理学者の著作からのものですが、リード文にもあるように「アウシュヴィッツ収容所からの生還」という背景がある前提で和文を解釈し、自分が考えたことも含めて英作しなければいけません。和文の日本語に固執しすぎず、まずは簡単な日本語へと置き換えるところから始めましょう。筆者の視点からは気を付けてほしい箇所が6つありますが、その中でも2つほど取り上げてみます。一つ目は、「手垢が付き」の部分です。出題者側は「手垢」なんて言葉を受験者に直訳させる気はありません。ここでは「自由という言葉」に手垢が付いているという文脈なので、例えば「アウシュヴィッツ収容所からの自由にずっとあこがれ続けていた」という解釈ができますね。ここまでできないとまず初手から減点されてしまいます。次に「現実を目の当たりにしたとき」の解釈です。これを「face reality」なんて書こうものなら採点者は喜んで減点してくるでしょう。この文章で筆者に訪れた「現実」とはリード文にもある「アウシュヴィッツ収容所から生還できた」という事実なのですから。また、この文脈からは「とき」をasを使用して表現することも不適切に思えます。whenかonceあたりが妥当でしょう。同じような日本語の語句でも場面に応じて使い分けなければならないものがたくさんありますから英作文を書く際には注意しましょう。普段から暗記するときなどに意識しておくとよいですね。
≪2021年度の目標値≫
英語を得点源にしたい受験生…30~33点(40点中)
他教科を得点源にしたい受験生…24~26点(40点中)
【総評】
滋賀医科大学医学部を合格するために英語で意識したいことは、大問1・2でいかに得点するか、です。大問3は配点がそこまで大きくありませんから、点数差が開きにくいといえるでしょうが、大問1・2は英語が得意な受験者からすれば8割程度は取れる難易度です。近年、数学が易化していましたが、令和3年には再び超難化しました。このまま難化が続く場合には、英語の得点率が合否を決める可能性も大いにあります。理科の完成度が高いほど優位になる滋賀医科大学では浪人生が有利になる傾向がありますが、現役生でも英語の得点率を高めることによってその差を埋めることができます。文法を抜けなく習得し、語彙力を強化することは必須ですが、分析にも書いた解く際に意識すべきことを普段から如何に実践しているかで得点のしやすさは大きく変わるでしょう。他の大学で練習教材としておすすめなのは京都大学の英作文です。解法を確実なものにするために活用してください。
まとめ
というわけで、今回は滋賀医科大学医学部の英語についてまとめてみました。皆さんの参考になれば幸いです!
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